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香りつれづれ ~思い出~

はじめに

 特に嗅覚が鋭いわけでもないし、勉強したわけでもない。ただ、ミーハー的に素敵な香水が好きで、「素敵」のなかには、香りはもちろん、香水や調香師にまつわるストーリー、ボトルのデザイン、ネーミングやその香りを愛した著名人との物語まで含まれる。
 知識も感受性も乏しいながら、私の香水遍歴を一度、まとめたくてぽつぽつと思いつくまま記しておこうと思った。

懐かしい香り

 はじめて手にしたフレグランスは、ハワイ旅行で見つけたオーデコロンだった。中学生だった私は、初めての異国の雰囲気に圧倒された。詳しいことは覚えていないが、ハワイの空の下で、コロンのさわやかな花の香りに心を奪われて親にねだって買ってもらった。多分、プルメリアやピカケやハイビスカスなどのハワイの花々の香りだったのだと思う。バシャバシャ使ってもきつく香らず、年齢相応の軽やかさだった。
 その後は、特にフレグランスに興味は持たなかった。大学生になって、母や姉が、若い人向けだからと、使いかけの香水をくれたが、オードトワレとオードパルファンの区別もつかず、「いい匂いだね」と何度か使ってしまいこむという状態だった。

プレジャーズインテンス ~花束を胸に抱いて~

 香りへの意識が大きく変わったのは、エスティーローダーのプレジャーズインテンスというオードパルファンに出会ってからだ。グリーンリリーとピオニーのみずみずしさに包まれ、吸い寄せられるような香りのとりこになった。これをきっかけに、香水っていいなと思うようになった。男女問わず評判もよかった。雨の日もブルーな出来事も、素敵な香りが一瞬にして景色を変えてくれる。それからは色々な香りを知りたくなり、お小遣いを貯めては香水を買っていた。

シャネル№19 ~個性的であること~

 特に好きだったのは、シャネル№19だ。シャネルの誕生日から名づけられ、№5に並ぶ個性的な香りとして生み出されたという香水の物語にも心惹かれた。つけた瞬間は、ガルバナムのきりりとしたグリーンノートがきつく感じるが、追うようにアイリス、イランイラン、ローズなどの花々が優美に香るという個性的な香水だ。青々とした香りが時間を経てパウダリーに変わることにも感動した。香水に、なんとなくいい香りであること以上のなにかを求める面白さを知った。ただ、この香りは、女性に褒められることはあったが、男性にはあまり評判はよくなかった。それがまさにシャネルの目指した個性的な女性のありかたを体現していると、当時の私は解釈していた。

そしておばあさんになっても・・・

 ファッションと同じで、好きな香りと似合う香りは違うのだろうか。
 先に書いたように香水に凝っていた時期があったが、この5年ほどは香水から遠ざかっていた。急激にライフスタイルが変わり、歳を重ね、老親の看取りや家族の病気など人生の大きなイベントが次々起きた。私も私を取り巻く環境も変わった。そして、いまは少し落ち着いた時期を迎えている。1年続くか、2年続くかわからないが、ちょっとしたゆとりができた時、しっくりと寄り添ってくれる香りを探したくなった。
 エスティーローダーのプレジャーズインテンスは、歳を重ねて人生を積んだ今の私の香りではないだろうが、懐かしい香りを確かめたいと探したところ、廃盤になっていた。私だけではなく、時代も変わり続けているのだった。
 シャネル№19は、かつては少し背伸びして纏っていた印象だったが、今はさらりと馴染むように感じた。調香も少しずつ変わっているのだろうとも思うけれど。そして、以前よりさらに好きになった。
 新たに出会った香りのなかで、特に好きになったのは、ザ・ディファレントカンパニーのサントインシエンソとエラケイのメモワール・ド・ダイセンインだ。やっぱり、好きな香りの傾向ってあるんだなあと思う。新たな出会いについては、また別の機会に。
 

 




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