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麻雀86:Mトーナメント観戦記#5

▫️2ndA卓
滝沢vs亜樹vs和久津晶vs藤島健二郎

Aリーガーの意地【和久津晶、藤島健二郎】

盛り上がるMトーナメントが予選2ndステージに突入。初戦となるA卓は全員が連盟選手による印象的な対局となった。
お互いが手の内をよく知る選手どうしでの戦いはMリーガーに逆風が吹く展開となった。
1戦目が和久津、2戦目は藤島が高打点のアガリを決めて大きくリードする形となり、そのまま逃げ切る結果となった。

点棒を持ってからの振る舞いが見事だったのは和久津。配牌の時点で、アガリが見込める早い手のみ手組む作戦を徹底して、追いかける側がウンザリするかわし手で局を進める、磐石の進行を見せた。
もう一方の藤島は、道中で余裕のリードを築いたものの、亜樹に痛恨の7700放銃でヒヤリとする場面もあったが、次局にライバル滝沢に倍ツモ条件を突きつける1000-2000をアガリ、ゲームセット。
いずれもさすが連盟のA1リーガー!といえる見事なうち回し。自団体のリーグ戦では下位リーグに甘んじている滝沢と亜樹からすれば、格の違いを見せつけられる悔しい結果となった。

▫️2ndB卓
白鳥vs茅森vs本田vs小林

同じ通常運転でも【本田朋広、小林剛】

B卓は全員がMリーガーでの対局。
来季の前哨戦ともなりうる一戦となったが、普段着の麻雀を打った本田と小林が勝ち上がる結果となった。もっとも、同じ普段着の麻雀と言っても、二人のスタイルは大きく異なっていた。

トップ通過となった本田は、「試合運びが下手くそ」と自嘲気味に語るものの、本人が思うよりもバランス良く打てていたように見えた。
昨シーズンは苦しい牌姿からのやや強引に思える鳴きが多く見られたが、この試合ではそれがグッと減る一方、納得のいく形まで我慢してからの門前リーチで攻め込むスタイルが目立った。
前者はスピード、後者は打点、に焦点を当てた戦略と言える。ギリギリまで押す強気が持ち味の本田ではあるが、スピードだけではオリに回らされたり、リスクに見合わない放銃となる場合が多くなり、持ち味が減退していた。
この日の戦いをシーズン一杯続けられれば、一昨年に逃したMVPも夢ではない。

戦前に「2-2で通過します」と宣言して、有言実行となった小林。
小林の持ち味である、仕掛けを駆使したスピード麻雀が上手くハマった格好となった。

「素点と着順を意識して打ちました」と試合後のインビューで語った小林。スピードがクローズアップされがちな小林だが、根底に素点と着順への意識があるからこそ、安定した成績が残している。

トップがえらいMリーグルールでは、どの選手もどの位置からでもトップを狙ってくるため、セーフティリードはないと言っていい。ましてや、スピード特化の麻雀ではなおさらリードが取りづらい。無理にトップを狙って、リスクを抱え込んでしまう選択ではなく、素点を大事に着順を落とさない堅実な選択が小林の本質であろう。

A1フラグに嵌まった白鳥

A卓では、和久津と藤島(ともに連盟のA1リーガー)が勝ち上がり、このままA1リーガー全員が勝ち抜くか、といったフラグが立った直後。
同じくA1リーガーである白鳥にとっては、強烈なプレッシャーだったことだろう。
もっとも、この日は白鳥にとってノーチャンスと言っていいくらい恵まれない展開。決してプレッシャーに負けたわけではない。

スカッとしない茅森

ギリギリまで小林を追い詰めた茅森であったが、あと一歩届かず敗退となった。
昨シーズンからあと一歩が届かない展開が多い茅森。強力な新メンバーを迎えての来季は、茅森にとっても結果を残せない場合には契約満了の憂き目もあるだけに、正念場のシーズンとなる。
奇抜で天才的な手組みから繰り出す高打点。茅森の持ち味を存分に発揮した、スカッとする麻雀を再び見せてほしい。

▫️2ndC卓
勝又vs松本vs渋川vs真田槐

SNSで話題になった乱闘

この対局でもっとも盛り上がったシーンといえば、勝又のインタビュー中に乱闘気味に松本が飛び込んできた場面であろう。
SNS上では、「Mリーグ初乱闘」として大いに盛り上がった。
乱闘シーンをご覧になりたい方は、是非ともアベマプレミアムに加入してほしい。このシーンだけでも、加入の価値があると思うし、Mリーグ観戦が何倍も楽しくなること間違いなし。と、Abemaから何のサポートも受けていないが、宣伝しておく。

さて、乱闘のきっかけとなったのは、親番の真田と勝又の二軒リーチに挟まれた松本。初戦トップだった松本はまったく無理押しする局面ではなかったが、手詰まりの末にドラの③を選択し、真田に放銃。裏ドラが乗らず3900放銃で済んだが、真田や渋川にチャンスを与える可能性もあっただけにヒヤリとした。
この場面を振り返った勝又が、松本の放銃をいじり倒して、松本がキレたというもの。

想定外の放銃に松本を一瞥する勝又

余裕綽々の勝又

この日の勝又は、読みのピントが抜群で、ポイントの余裕もあって、多彩な選択を間違えずに判断した試合巧者らしい危なげない試合運び。
追いかける立場の選手からすれば、ポイントを持たせてはいけない打ち手と言える。一方で、勝俣と共に勝ち上がりポジションにいた松本は、点棒を減らさずガンガンかわしていく勝又を頼もしく見ていたことだろう。
この日の勝又を見ていると、トーナメントルールで負ける姿が想像できない。円熟みを増したベテラン選手がタイトル奪取に向けて、死角はない。

▫️2ndD卓
伊達vs瑞原vs杉浦勘介vs河野高志

A1リーガーの意地【杉浦勘介】

初戦にラスを引いた杉浦が、2戦目にトップをとって勝ち上がりを決めた。
2戦目。杉浦は東パツの親番で大量加点で勝ち上がりポジションに。しかし、道中で伊達からの強烈な追い上げに遭い、南3時点では逆転されてしまう。
その南3でここが勝負所と踏んだ杉浦は、苦しい手牌からがむしゃらに仕掛けていく。初戦トップだった瑞原が上家におり、局を回したい瑞原から甘い牌が打たれる(いわゆる、瑞原サービスセンター)ことも織り込んでの無理仕掛けとも思われる。杉浦の執念が実り、この局アガリをとる。続くオーラスも、全局の勢いそのままに早アガリにいきやすい役牌が鳴けて、勝ち切った。

勝負所を見定めて一気に勝負を決する強さは、日頃から実力者ひしめく連盟のA1リーグでしのぎを削っているからこそだろう。

昭和の麻雀プロ【河野高志】

ベテラン河野高志が2ndステージで散った。
敗退が決まった退場シーンでは悔しげな表情を見せた河野。しかし、インタビューではいつもの河野に戻って、「今日は俺の日じゃなかった」と、次に向かって前を向く姿が見られた。

このベテランプロの姿こそ、麻雀プロのあるべき姿勢だと思う。
対局中の打牌には一打一打自信を持った判断をした上で、結果は時の運。勝って偶然、負けて当然。反省は一人になってからすること。自分らしい麻雀を見せるのが自分の仕事。

多くを語らずとも、長きにわたって勝負の世界に身を置き生き抜いてきたからこそ滲み出る男の魅力が感じられた。
昭和の麻雀プロとバカにしてはいけない。現在まで現役を生きるこの時代の打ち手は皆、勝負師としてのオーラを纏っているように見える。

▫️2ndE卓
岡田vsたろうvs日向vs仲川翔

岡田が強い

初戦トップは日向。他の3選手がトップを狙う中、東パツにたろうが6000オールでライバルに差をつける大量加点。

してやったりのたろう

たろうほどの実力者にこの大量リードは勝ち確定かと思われた。
しかし、このまま終わらないのが、Mトーナメント。

次局、岡田からの先制リーチを受けて、3面チャンでテンパっていたたろうがアタリ牌を一発で掴み12000放銃。
このアガリで勢いがついた岡田はトップ目まで一気に駆け上がり、勝ち上がりを決めた。

昨季のレギュラーシーズン。サクラナイツを牽引した岡田。そうした経験と結果からくる自信が岡田の麻雀を進化させたことは疑いないだろう。
このMトーナメントの舞台でも、好結果を残した場合には、さらなる進化も考えられることだろう。元々、実力者揃いで結束が一際強いサクラナイツにあって、ムードメーカー的存在の岡田が常にポイントを持ち帰ってくるようになれば、レギュラー敗退の可能性は皆無と言っていいほどの常勝チームになるのでは。

▫️2ndF卓
瀬戸熊vs内川vs猿川vs優

この敗戦を引きずるな【猿川真寿】

オーラスの勝負リーチをツモアガった直後の猿川の表情。

このリーチに至るまでに幾つかドラマがあった。
まず開局早々に優が無双状態で一時6万点越えのダントツに。
南1親番の猿川がリーチ。このリーチに点棒の優位を背景に逃げ切りを狙う優が飛び込むと、僥倖の裏3で18000直撃。猿川に勝ち上がりのチャンス到来。

直撃かつ裏3


このアガリを機にギアが一気に上がった猿川は、アガリに向けて見事な押しっぷりを見せるが、優を交わしきるところには至らない。

そこで迎えたオーラス。猿川に条件クリアが見込めるテンパイが入った。逆転にはもう一飜が必要。猿川の判断は一発か裏ドラを狙った即リーチ。
しかし、麻雀の神様は残酷だった。リーチ後にタンヤオ移行が見える⑥をツモ、その直後にアタリ牌の九ツモ、ということは、即リーでなく手替わりヤミテンであれば一発ツモで逆転していたわけだ。

インタビューを受ける猿川の表情には、落胆の色がわかりやすく見えていた。
敗退という同じ結果であれば、優が独走したままの方が猿川にとっては気に止むこともなかったはずだ。
しかし、こんな悔しい結果は何度も経験してきたはず。むしろ、あわやモンキーマジック、MVPの優に肉薄した事実こそを重くみて、この悔しさをバネに来季への闘志を一際燃やしてほしい。猿川にとっての本番である来季のMリーグ開幕までもう少し、未遂に終わったモンキーマジックを何度も何度も見せてほしい。

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