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チーズはどこへ消えた!?

人生は自由に何の邪魔もなく歩めるような、まっすぐで
楽な廊下ではありません

通る者にとっては自分で道を見つけなければならない迷路です

道に迷い、訳が分からなくなり、ときには袋小路に突き当たります。
しかし、信念を持って行動すれば、やがて道は開けます
思っていた道ではなかったかもしれませんが、
やがて良かったと分かるでしょう



今回は、スペンサー・ジョンソン氏の著書「チーズはどこへ消えた?」
という本の内容を紹介します。

物語の中では、チーズを求めて2人の小人と2匹のネズミが
迷路の中で試行錯誤します。
「チーズ」とは、私たちが人生で求めるものの象徴で、
具体的に言うとお金や仕事、健康、精神的な安定などです。
「迷路」とは、チーズを追い求める場所の象徴で、
具体的には職場や家、生活圏などです。

登場する2人と2匹には個性があり、単純な物の見方をするネズミと、
利口な人間の行動に対して、どう思うかを読む人に問いかけています。





むかし、ある遠い国に二匹のネズミと二人の小人が住んでいました。
彼らはいつも迷路でチーズを探し回っています。
二匹のネズミは「スニッフ」「スカリー」という名前で、
二人の小人は「ヘム」「ホー」という名前です。

スニッフとスカリーはネズミなので単純な頭脳しか持っていませんが、
優れた本能があり、ガリガリかじれる固いチーズを探しています。
小人のヘムとホーは色々な考えがいっぱい詰まった頭脳で、
見つけられれば幸せになり、成功を味わうことができるという
真のチーズを見つけようとしていました。

迷路はいくつもの通路と部屋からなる迷宮で、どこかに美味しい
チーズがあるのですが、暗がりや袋小路もあるので、
道に迷ってしまうこともあります。



スニッフはよく利く鼻でチーズのある場所をかぎつけようとし、
スカリーはひたすら突き進みます。
二匹は道に迷いながら、行ったり来たりして少しずつ進んでいきます。
一方、小人のヘムとホーは、過去の経験から得た教訓と
優秀な頭脳に頼る方法でチーズを探しています。

そして、二匹と二人は自分たちのやり方で、苦労の末に
チーズステーションCに辿り着きました。
そこにあったのは「これだけあればずっと大丈夫だ」と
思えるほど大量のチーズでした。

それからは毎日、ネズミも小人もチーズステーションCに
向かうことが日課になりましたが、しばらくすると、
小人の行動が変化します。
小人たちは幸せになり、上手くいったことを喜び、
チーズステーションCの近くに引っ越してきたのです。


その時の二人はこのように考えていました。

チーズを手に入れれば幸せになれる


「僕らはそれだけのことをしたんだ」
実際、長いこと勤勉に働いたし、これを見つけるのは
本当に大変だった」

山のようなチーズを指さし、ヘムは言います。

二人は毎晩、チーズをおなかいっぱい食べては家路につき、
その顔はいつでも自信満々です。
こうした日々は、かなり長く続きました・・・・

やがて二人は慢心するようになってしまいます。
安心しきっていたので、知らないうちに何かが進行していることには
気づくことができませんでした。

一方、ネズミのスニッフとスカリーの日課に変化はありません。
毎朝、チーズステーションCに着くと、周囲の匂いを嗅ぎ、
引っかき、走り回って、何か前日と変わったことがないか
調べたあとで、腰を下ろしてチーズをかじります。



・・・そんなある朝、チーズステーションCのチーズが
空っぽになっていたのです。

この状況にも、二匹のネズミは驚きませんでした。
置いてあるチーズがだんだんと少なくなっていることに
気づいていたので、いずれなくなるだろうという
覚悟をしていたからです。

二匹は迷路を見渡し、スニッフが鼻を上げて匂いを嗅ぎました。
うなずいてみせると、スカリーが走り出したので、
スニッフも急いで後を追います。
二匹は新しいチーズを探しに出かけたのです、彼らにとっては
問題も答えもはっきりしていました。
「チーズステーションCの状況が変わったのだから、
自分たちも変わることにした」というだけのことです。

同じ日、ヘムとホーはのんびりとチーズステーションCに
やってきて驚きます。
「何てことだ!チーズがないじゃないか」
「チーズはどこへ消えた?」
ヘムが叫びます。

やがて、腰に手を当てると、顔を紅潮させ、声を張り上げて叫びました。
「こんなことがあっていいわけはない!」



ホーも信じられないという様子で、ただ頭を振るだけでした。
チーズがあるものだと思い込んでいたので、こんな事になるとは
思ってもいませんから、ショックで凍り付いています。
ヘムが何かをわめいていますが、ホーは事態をどうにかしようという
気にはなれず、全てに目を閉ざしたい心境でした。

二人にとってチーズは重要だったので、これからどうすればいいのか
長い時間をかけて考えました。
しかし考えついたのは、チーズステーションCをよく調べて、
本当にチーズが無くなってしまったのかを確かめることだけでした。

その夜、ヘムとホーは空腹のまま意気消沈して家に帰るのですが、
その前にホーが壁にこう書きます。

自分のチーズが大事であればあるほど
それにしがみつきたがる



翌日、二人は家を出て再びチーズステーションCに向かいます。
もしかしたら、今日またチーズがあるかもしれないと
少しだけ期待していましたが、やはりありませんでした。

ヘムは繰り返し事態を分析しています・・・
「どうしてこんな目に合うんだ」
「実際は何が起こっているんだろうか」
ホーが周囲を見回して言います。
「それはそうと、スニッフとスカリーはどこに行ったんだろう?
あいつら、僕たちの知らないことを知ってるんじゃないだろうか?」

ヘムがあざ笑います。
「何を知っているというんだ?
あいつらはただの単純なネズミじゃないか。
状況に反応しているだけだ。

僕たちはネズミなんかより利口なんだから、
この事態を解明できるはずだ」

「確かに僕たちのほうが利口だよ」とホーが言います。
「でも、今のところあまり利口なことをやっていない。
事態は変化しているんだよ、ヘム。
我々も変わって、違ったやり方をしなければ
ならないんじゃないか?」

「どうして変わらなければいけないんだ?
僕たちは小人だぞ、特別なんだ。
こんなことがあっていい訳はない、

少なくとも何か得することがなくちゃならない」

「どうして」

「僕らにはチーズに対する権利がある。
この事態は僕たちのせいじゃないから、こうなった事で
何かをもらうべきなんだ」

ホーは、新しいチーズを見つけた方がいいんじゃないかと
提案しますが、ヘムは「だめだ、何としても真相を
究明するんだ」
と言い張っています。



ヘムとホーがどうすればいいか相談している間に、
スニッフとスカリーは着々と新しいチーズを探す作業を
行っていました。
しばらく何も見つけられなかった二匹でしたが、
やがてこれまで行ったことがなかったエリアに入って、
見たこともないほど大量のチーズがあるチーズステーションNを
発見し、二匹は歓声を上げました。

ヘムとホーはいつまでもチーズステーションCに留まり、
事態を検討しています。
ホーはときどきネズミたちのことを考えます。
彼らのところにはチーズがあるのだろうか・・・?
彼らも厳しい事態になって、あてもなく迷路を走り回って
いるかもしれない。でもいつか事態は好転し、
新しいチーズを食べているかもしれない。

・・・・

・・・・・・・・

「出掛けよう!」ふいにホーが叫びました。

「だめだ」ヘムはすぐさま答えます。
「ここがいい、ここの事ならよく分かっている。
他のところは危険だ」

そう言われると、ホーもしくじるのではないかという
不安が蘇り、新しいチーズを見つける希望もしぼんで
しまいました。
二人は毎日チーズステーションCに行き、チーズを見つけ
られないまま不安と失望を抱えて家に帰ることを
繰り返しました。

ホーは、勤勉に働いても成果が上がるとは限らないことに
だんだん気づいてきましたが、ヘムは「腰を下ろして事態を
見守っていれば、いずれチーズは戻ってくるはずだ」
と言っています。

ホーもそう思いたかったのですが、いつまで経ってもチーズは
いっこうに現れず、事態が好転するのをただ待っているのが
嫌になってきました。
チーズがない状態が長引けばそれだけ事態が悪化すると気づき、
自分たちがどんどん不利になっていくのを悟ったからです。



ホーは遂に出発の支度を始めます。
その様子を見てヘムが言いました。「本当にまた迷路に出掛ける
つもりなのか?なぜチーズが戻ってくるのを待たないんだ?」

「戻ってこないからだよ、そうは思いたくなかったけれど、
もうあの古いチーズが戻ってくることはないと分かったんだ。
あれはもう過去のものだから、新しいチーズを見つけるべきなんだ」

「だけど、もしチーズが無かったらどうするんだ?
あったとしても見つけられないかもしれないじゃないか?」

ホーは言った。「ねえ、ヘム。物事は変わることがあるし、
決して同じ事にはならないんだ。人生は進んでいくものだから、
僕らも進まなくてはいけないんだよ」
やせ衰えた相棒を見遣り、道理を説こうとしましたが、
ヘムの不安は怒りに変わり、話を聞いてもらえませんでした。

出掛ける用意ができると、ホーは少し元気が出てきました。
ようやく自分を笑う余裕が出てきて、今まで悩んでいた
ことに見切りをつけ、先に進むことができます。

「さあ、いよいよ迷路へ出発だ!」

・・・・、ヘムは何も答えません。

ホーは尖った小石を拾うと、ヘムにも考えてほしくて、
壁に今思っていることを書きました。

変わらなければ破滅することになる


しかし、ヘムは相変わらずこちらを見ようともしませんでした




再び迷路を出発し、新たなチーズを探すことを決めたホーでしたが、
足を踏み出したときに「あそこは居心地がよかったなあ」と、
チーズステーションCで過ごした日々を思い出します。

「自分は一人で迷路を出発し、チーズを探す決断をしたが、
本当に大丈夫なんだろうか?」

今の不安な気持ちを目の前の壁に書いてみました。

もし恐怖がなかったら何をするだろう?



このままだったら事態がますます悪化するという恐怖に襲われたら、
嫌でも行動を起こしますが、恐怖のあまり何もできなくなる
こともあると思います。

それから数日間、ホーはあちこちでチーズのかけらしか
見つけることができません。
そして、何度も道に迷い、本当に新しいチーズが
見つかるのだろうかと疑問に思います。
いろいろなことを考えていると、チーズステーションCの
チーズが一夜にして消えてしまったわけではないことに
気づきました。
何が起きているのかを注意して見ていれば、変化を予想し、
それに適応する準備ができたかもしれないのです。

ホーはこの気づきを壁に書きました。

常にチーズの匂いをかいでみること
そうすれば古くなったのに気がつく




・・・・・・それから何日が経過したでしょうか

徒労に終わることばかりで、ホーはだんだんヘムのところに
帰りたくなってきました。
恐怖を乗り越えて迷路を出発したホーでしたが、
実際はたびたび恐怖を感じていました。
何を恐れているのか、はっきりしていた訳ではありませんが、
衰弱した今は一人で進むのが怖かったのです。

ホーは自分への戒めのために、壁に文字を書きました。

新しい方向に進めば、新しいチーズが見つかる


それから、彼は苦笑しました。
恐怖のせいで悪いほうに考えるのだと思ったのです。

そこで、恐怖を乗り越えるべく、新しい方向に進んでいく事にしました。

まだ新しいチーズが見つかって
いなくても、そのチーズを楽しんでいる
自分を想像すればそれが実現する


ホーは失ったものではなく、手に入れるもののことを
考え続けました。

そして、今まで行ったこともないほど遠くの迷路へ来た時に、
ヘムと一緒でないことが寂しくなったので、引き返して
ヘムが一緒に出かける気になったかどうか確かめることにしました。




チーズステーションCに戻ると、ヘムは居ました。
新しいチーズのかけらを差し出しましたが、
ヘムは受け取ってくれません。
「新しいチーズは好きじゃないような気がする、慣れてないから」
「僕はあのチーズが欲しいんだ」
と、ヘムは言います。

ホーはガッカリして肩を落とすと、また出かけることにしました。
しかし、今はチーズが無いままチーズステーションCに
留まっていた時のような心細さはありません。

新しい方向に進んだことが分かっただけで元気が出てきました。
元気を取り戻したホーは、こう悟っていました。

チーズが無いままでいるより
迷路に出て探した方が安全だ



「人が恐れている事態は、実際は想像するほど
悪くないのではないか」とホーは思います。
自分の心の中に作り上げている恐怖心のほうが、
現実よりずっとひどいのかもしれません。

常に変化が起きることの方が自然だと分かったホーは、
立ち止まって壁に文字を書きました。

従来通りの考え方をしていては
新しいチーズは見つからない




人は考えを変えると、行動が変わります。

変化は害を与えるものだと考えて、それに抗う人もいますが、
新しいチーズを見つけられれば変化を受け入れられるように
なると考えることもできます。

全ては、どう考えるかで決まるのかもしれません。

新しいチーズを見つけることができ
それを楽しむことが出来ると
分かれば人は進路を変える




ホーはもっと早く変化に対応し、もっと前にチーズステーションCを
出ていれば、今頃は色んなことがもっと好転していただろうと思います。
彼は再び新しい方向へ進んでいき、あちこちで小さなチーズの
かけらを見つけ、気力と自信を取り戻し、いっそう力強く
速いスピードで迷路を進んでいきました。

そして彼の旅は、ふいに喜ばしい結末を迎えます。

これまで通ったことのない通路を進んでいき、角を曲がった
ところでチーズステーションNと、見たこともないほどの
大量のチーズが積まれていたのです。

そしてそこには懐かしい姿の確認もできました。
二匹のネズミ、スニッフとスカリーです。
スニッフは歓迎してホーにうなずいてみせ、
スカリーは手を振ってくれています。
ネズミたちのでっぷりしたおなかが、かなり前からここに
いたのであろうことを物語っていました。

ホーは急いで挨拶を返すと、自分の好きなチーズ全てに
かじりつきました。
新しいチーズを楽しみながら、これまでのことを
思い返してみます。
そうすると、最大の障害は自分自身の中にあり、
自分が変わらなければ事態は好転しないということに
気づきました。




ホーはふと、ヘムは大丈夫だろうかと考えます。
そして、もう一度チーズステーションCに戻ろうかと・・・・
思いましたが止めました。
すでに一度、彼を変えようとしましたが、
変わってはくれなかったからです。

居心地のよかった思い出から抜け出し、恐怖を乗り越えて
自分で道を見出す努力が必要です。
誰も彼に変わってそうすることはできないし、本人が変わることの
利点に気づき、行動するしかありません。

ホーは過去の失敗から、毎日チーズステーションNを点検し、
自分のチーズの状態を確認しています。
予期せぬ変化に驚くことがないように、しばしば迷路に出ていき、
新しいエリアを探索することも忘れません。
自分にどんな選択肢があるのかを知っておいた方が
居心地のいい自分の居場所に閉じこもっているよりも
安全だと分かっているからです。

そんなあるとき、外の迷路で何かが動く音が聞こえてきます。
音が大きくなり、誰かが近づいてきたのが分かりました。

・・・もしかして、ヘムがやって来たのだろうか?

ホーは祈るような気持ちで、音のする方を見つめ続けています。












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