ロサンゼルス生活53日目-54日目

ロサンゼルスは朝曇っていることが多い。しかし朝曇っていても昼過ぎに晴れてくるパターンが多い。朝曇っていてもサンスクリーンやサングラスは忘れてはならない。これはロサンゼルスが我々に仕掛けてくる罠である。

今は自宅にいることが多い。外に出て活動している時間よりも家でなんやかんやとやっている時間が長い。必然的に運動量が減る。炭水化物が大好きな私。これまでの私は食事の度に大量の炭水化物を摂取してきた。しかし今の生活から考えるとこれは多いのではないかと考えるようになった。なんだか体が怠いのだ。今は炭水化物は一日おきにしている。こうすることによって随分と怠さが消えた。その時の生活に合わせて食生活を考える。大事なことである。

映画。『ロッキー』を観た。言わずと知れた名作である。同年代でこの映画を知らない日本の人っているのかな。とても分かりやすいお話。そしてとても面白い。分かりやすくて面白い。これって最強ではないかと思う。

才能は持ちながらも、これまで大した実績のないロートルボクサーのロッキー。ボクシングだけでは生活はままならず借金取りのようなことをやっている。自宅はフィラデルフィアのスラム。好意を寄せているエイドリアンとの関係もなかなか進展しない。そんなある日、最大の転機が訪れる。対戦相手がケガで試合ができなくなったために、別の相手を急遽探している世界チャンピオン。チャンピオンは対戦相手にロッキーを指名する。無名のボクサーにチャンスを与えようと。(この辺り日本だと現実感が薄れるが、アメリカだとオッケーな感じがある。アメリカンドリームの体現というか。)

試合に向けて猛特訓を積むロッキー。試合の前日。すでに恋人となったエイドリアンに弱音を吐く。「絶対に勝てない」と。しかしロッキーはこうも言う。「世界チャンピオン相手に最後まで立っていられたら、オレはただのゴロツキじゃないってことを証明できる」とも。そう、ロッキーという男は、このチャンスを絶対にものにしてアメリカンドリームを手にしてやる、などといった野心猛々しい男ではない。あくまでも自分の尊厳を取り戻すためにリングに上がって精一杯戦う。そういう男。(この辺りの心理描写や性格描写がラストシーン前の約100分ほどでなされている。)

無名の男との試合のため、準備を怠っていたチャンピオン。対して短い期間ながら鬼のようなトレーニングを積んできたロッキー。試合は大接戦になる。激しい打ち合いの中で15ラウンドの試合が終わる。そして感動のエンディングである。リングの上でエイドリアンの名前を何度も叫ぶロッキー。

この「エイドリアン!」というセリフの中には様々な意味が込められている。たとえば「エイドリアン、観ていてくれたかい、オレ、ちゃんと最後まで立っていたぜ。オレ、もうゴロツキじゃないだろう?」や、あるいは「エイドリアン、オレ、最高の気分なんだ、今すぐに君に会いたくて仕方がないんだよ!」とかである。人の名前を叫ぶだけで、その意味を観ている人に理解させる。最高のセリフではないだろうか。

同じようにロッキーの名前を叫びながらリングに上がってくるエイドリアン。途中、判定の結果が出て、チャンピオンの勝利が確定するが、そんなことは二人には最早関係ない。最高の準備をして最高の試合をした、そして最後まで立っていた。このことが何よりも重要なことなのである。

そして私が一番好きなセリフは最後の最後。近付いてきたエイドリアンにロッキーがこう言う。「あれ、帽子は?」。とても素敵な帽子を被っていたエイドリアンは人込みに揉まれている間に帽子を落としてしまったらしい。凄まじいトレーニングを経て、すごい試合をした、その直後。自分のことではなく相手のことを気遣うロッキー。「あれ、あの素敵な君の帽子はどこへいったんだい?」と。ここにロッキーという人物が顕れているように思う。優しいというか、お茶目というか、英雄になり切れないというか。その言葉には応えずに「アイラブユー!」とロッキーの胸に飛び込むエイドリアン。最高のエンディングである。

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