新しく重松清の才能によって心打たれた話
エスケープしてみたい
このバスに乗って未来へ♫
Creepy Nutsの二度寝が流れる令和の時代に
重松清『ビタミンF』は
昭和生まれのおじさんたちによる平成の御伽噺
もはやタイムトラベルだ。
何年も前に買った文庫本で、その時は
重松清、直木賞、最泣の帯にひかれて買ったのだろうけど
いまいちハマらず、放置されていた玉手箱
38歳の今、最高のタイミングで開けたんじゃないかな俺。うん。是非37〜40代のパパたちに読んで欲しい昔話だ。
時代は流れても、価値観がアップデートされても
変わらない家族の形や、悩みや、痛みがあるのだと教えてもらえるんじゃなかろうか。
自分だけじゃないんだよ。
30代後半の壁にぶつかっている人は他にもいるんだよ。って言われた気がして、
励まされた形になるんじゃなかろうか。
『母帰る』のなかで、濱野さん(姉の元旦那)が言ってた言葉は非常に刺さった。
家庭は帰る場所だと思ってない?
ちがうよ?出ていく場所なんだよ?
みんな大なり小なり出て行きたいって気持ちを抱えてる。
君もそうだったでしょ?
だから、東京に行ったんでしょ?
っていう感じの。
あれ、むちゃくちゃ真理だった。
俺は。親が大嫌いで、家を出たくてしょうがない思春期をずっと過ごしてきて。
だからこそ絶対に帰りたくなる家を作ろうと思って、今の仕事を始めて、今の家庭を始めて。でも、どうしたっていつか終わりはくるから、出ていく人たちを止めることは出来なくて、自分自身すら出て行きたくて仕方なくなって。
そんな矛盾を抱えて生きていたのに、最適解を出したのは御伽の世界の不倫して離婚した元マスオさんとは、いやはや。
重松清は、子どもの心を描く奇才じいさん(超いい意味で)と思っていたのだけれど、
等身大のおじさんを描くこともできるんですね。
読みやすすぎる短編のなかに登場人物たちが、生きてるんだよなぁ。
こんなこと偉そうすぎて、申し訳ないのだけれど、言っておきたい。
すげえよ、清。
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