あきない
「焼き鳥屋の奥さん、貴女は店で接客をこなすかたわら、空き時間に焼いた洋菓子をレジ前で売っていますね。
なのにフィナンシェは作らない。なぜです?貴女ほどの腕前なら素晴らしい金塊が焼けるはずなのに。
フィナンシェヤクザとの交渉にも応じなかったという。
まさかお嫌いですか」
「ふふ、そこにかかっている手拭い、なんて書いてあるかしら」
「春夏冬二升五合(あきないますますはんじょう)?」
アーモンド1枚ずつ剥がして差し上げようかしらと鈍さをなじる吐息。
私がフィナンシェを焼くのなら、こだわりの発酵バターを惜しみなく使いたい。
でも、いまバターは高いでしょう。
道楽ではなく儲けに影響しますの。
おわかり?フロランタン偵さん。
同じ世界観
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