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母の名は。 第1回・キタアカリ

品種厨はかく語りき


セカジャガに引き続き、新連載を始める。

芋研ゼミマガジンは、じゃがいものことを好きに書いていいと思っているので、

品種について語ろうと思う。

ネットや本で得たうろ覚え知識に、個人的萌えポイントを容赦なく混ぜていくことをご容赦願いたい。

私はなるべく多くの品種を食べてみたいと思って、芋集めに邁進している。

それは未知の食に対する好奇心であるし、コンプリート欲(キリがないのはわかっているので実績解除欲か)も少なからずある。

こと農作物に関しては

「誰と誰の間の子が誰」みたいな、血統が好きだ。

親の良いところを引き継いでいれば親子だねえと嬉しくなるし

親の弱点を克服しようとしていれば頑張ったなあと感動する。

新品種は既存の2品種の掛け合わせの中から選抜され、

厳しい試験を何度も受けて、残ったものだけが品種登録されていく。

関係者の品種改良の努力には頭が下がるばかりである。

それと、じゃがいもが面白いのは

1つの品種がお父さんにもお母さんにもなれるところだ。

いや、父母逆転するのはリンゴもそうだし(同じ掛け合わせが別の品種になるのでこちらも面白い)、

調べてないだけできっと他の農作物もそうだろうし、

男爵やメークインのように雄性がなくてお父さんにはなれない品種もいるので、

ここではざっくりいこう。

「とうや」という品種は「きたかむい」の父だが「らんらんチップ」の母である。

「さやか」という品種は「はるか」の父だが「さらゆき」の母である。

こういうところに、名前も合わせて私はにこにこしてしまう。

とうやくんなのにお母さんて……!

さやかちゃんなのにお父さんて……!

はい、ちょっと知名度の低い品種を羅列して読者を振り落としそうになっているので、

第1回目くらいは、まだ聞いたことがある人が比較的多そうな

「キタアカリ」

について取り上げる。


キタアカリの見分け方


キタアカリ、聞いたことがありますか?

売り場ではひらがな表記の「きたあかり」も見かけるが、

農林水産省の登録としてはカタカナである。

キタアカリは

皆さんがご存知のじゃがいも

男爵いも

の子である。

ちなみに、この場合の男爵はお母さん。

男爵なのにお母さんて……!と私は一人盛り上がりましたね。男装女子じゃん!(落ち着いて)

お父さんはドイツの品種「ツニカ」という。

洋服でいうチュニック的な意味ね。お父さんなのにチュニック着てるなんて(着ていない)

キタアカリはサツマイモのような香りがあり、味も良く、ビタミンCが多い(男爵の1.5倍)ことが特徴として挙げられる。

男爵に比べると少し煮崩れしやすいので、煮込むときは注意が必要だ。

キタアカリの見た目はお母さん譲りで、男爵とほぼほぼそっくりである。

ただ、男爵とキタアカリを見分けられる必勝法がある。

食べなくても、切って断面を見なくても

初心者でもわかる見分け方だ。

いつか何かの役に立つかもしれないので、今日はこれだけ覚えて帰ろう。

じゃがいもの目と呼ばれる、くぼみに注目していただきたい。

放置しておくと芽がにょきにょきと生えてくる穴のような部分である。

ちなみにこのマガジンでは

くぼんでいる状態を「目」

にょきっと生えてしまったら「芽」

と使い分けている。

参照:https://www.calbee.co.jp/diary/archives/805

その目の部分に

赤みがさしていたら

キタアカリ

である。

そんな大事な部分が赤く染まっちゃうなんて、あかりんのえっち!

と思いながら、まじまじと見てみよう。

スーパーで買える程に流通している品種で、目の周りが赤いのはキタアカリくらいなので、

他の品種との区別にも使える。

追記:「はるか」も目が赤いので、一概に全部キタアカリだと判断するのは危険。


センチュウは怖い


キタアカリが生まれた経緯について触れていこう。

キタアカリは

日本で初めて育成された「ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種」である。

初回なので説明したいことがいっぱいあるせいで

煩雑になってしまって申し訳ないが、

「ジャガイモシストセンチュウ」は

じゃがいもにとってめちゃめちゃ怖い害虫である。

もうジャガイモシストセンチュウだけで記事を一本書けてしまうくらい、怖い。

ジャガイモシストセンチュウに寄生されると、

栄養を奪われて枯れるだけでなく、

センチュウの卵が土の中で何十年も生き残って、その畑がずっとだめになる。

根絶は困難である。

恐ろしぃぃ、恐ろしぃぃ。

じゃがいもの品種改良は病害との闘いの歴史でもあり、

このジャガイモシストセンチュウに抵抗性を持つかどうかは、今後もかなり重要な要素となってくる。

ちなみに、いまめちゃめちゃ栽培されている男爵とメークインは抵抗性を持たない。

恐ろしぃぃ、恐ろしぃぃ。

日本でジャガイモシストセンチュウの発生が初めて確認されたのは1972年のことだった。

ペルーから輸入された作物や肥料に混入して、侵入したと推定されている。

被害が広がれば広がるほど使えない畑が増えてしまい、農業が成り立たなくなってしまう。

農薬などで根絶できない以上、

ジャガイモシストセンチュウに抵抗性のある品種を栽培するしかない。

外国から抵抗性のある品種を呼んできて掛け合わせ、日本でも強い品種を作るのじゃー!

こうした経緯で育成され、15年後の1987年に登録されたのが

キタアカリ

であった。

その名は「北の大地をセンチュウから守る、明るい希望となりますように」という願いに由来する。

父さん(ツニカ)がくれた~センチュウ抵抗性~♪

母さん(男爵)がくれた~あのホクホク~♪ / 芋をのせて

今年は実家の家庭菜園でもキタアカリを栽培した。


一部の芋研ゼミ生の中では、親しみを込めて「あかりん」と呼ばれている。

アラサーにして今後ますますの活躍が期待されるキタアカリに、野菜売り場で出会ったときにはよろしく。


かもまんがと300字SS


……と今まで長々と書いたことを

まとめた漫画とSSがあるので、最後に紹介しよう。

ここまで真面目に読んでくれた人なら、基本情報をギュッとしてんなということが伝わると思う。

かもさんまんが


かもさんは、芋研ゼミ生であり(気が付いたら私に勝手に入会させられていた)

漫画を描く人なので、これからも芋漫画に期待したい。

ネタならいつだって提供する。

300字SS

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このSSは、私のじゃがいも擬人化小説処女作となった。

芋の特性や来歴、小ネタをギュッと紹介するスタイルは、その後も踏襲されていく。

ちなみにじゃがいも擬人化小説は、現在BOOTHでダウンロード販売を行っているので、興味のある方はのぞいてみてください。

BOOTH⇒『The Hidden Treasure われは妹思ふゆえに芋あり』


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