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西の使い

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西の親書を携えた使者はさんじゅう丸だった。

王国を代表したとうやが丁重に迎え、遠路をねぎらう。

「では、とうや様は西国にいらしたことがあるのですね」

持病が芳しくなかった時分、転地療養で西の館に滞在した。

春と秋に二度収穫される温暖な気候に驚きながら、彼の地の文化を学んだ。

当時、館を取り仕切っていたのは、なめらかな淡黄肌を持つ才女デジマ。

芋の道を語らうふたりの心が通うのは自然であった。

目の前の精悍な若者はとうやの孫に当たる。

「祖母は貴方を引き止めましたか?いや、付いて行きたがったのでしょうか」

「いいえデジマ様は」

別れの朝、はなむけは優しくも凛とし、抱擁は短かった。

その土の匂いをとうやはまだ覚えている。

関連要素

ジャガイモ擬人化小説はいろいろと書いて同人誌にもしております。

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