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スナック忘れな草~2023安田記念後編・平成の米騒動~

■    道場破り登場

2023年6月3日(土)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-

バン!とブレーカーが落ちる音がして、スナック忘れな草の店内は真っ暗になった。ギョニ子がきゃあと悲鳴を上げ、タコ社長は眞露の水割りが入っていたグラスを倒してしまった。

「停電かしら?」

麗子ママがそう言ったとき、ぼおっとローソクの火がともった。火のついたローソクを持っていたのはくろたんだった。

「お邪魔していましたよ」

くろたんはそう言うとタコ社長の右隣に座った。左角から2番目の席だ。

「ブレーカーを落としたのはくろたんだったのですね」

マスターがそう言うと、くろたんはうなずいた。

「真剣勝負に集中するためですよ。私のシュネルマイスターとマスターの・・・いや、スナック忘れな草のみなさんが推すソングライン。どちらが優勝するかで勝負をしましょう」

「面白い提案ですね」

マスターは言った。

「でもただやるだけでは面白くない。負けた方は罰ゲームを受けてもらいましょう」

「いいですね」

くろたんはすぐに同意した。

「では、シュネルマイスターが勝ったら、この店の名前をスナック忘れな草から、カフェパラオに変えてもらいましょう」

「カフェパラオ?だっさ!」

声をあげたのはギョニ子だった。

「いいでしょう。パラオといえばマングローブ蟹やマングローブ貝が有名です。もしソングラインが勝ったら、くろたんのハンドルネームをゲッツマングローブに変えてもらいます」

「望むところです。なんだったらおねえキャラになりきってやるさ!ふぉっふぉっふぉっ!」

「しょーもないのよ、罰ゲームの内容が!」

ギョニ子はそう言ってカウンターをこぶしで叩いた。

「今日子ちゃん、いいじゃないの。罰ゲームは確かにしょうもないけど、これは真剣勝負よ」

麗子ママがたしなめた。

「でもね、くろたんさん。ちょっとローソク1本だと店内が暗すぎるから、あと5本ローソクをつけるわね。ローソク6本なら『ウマのそら』長澤まさみ編の数と一緒だわ」

「さすがですね、ママさん。マスターと一緒にしておくのはもったいないくらいだ」

そう言ってくろたんは麗子ママを頭から足元までじっくりと眺めまわした。

■    架空の馬券

「さあ、ではさっそくはじめましょう。先攻後攻はじゃんけんで決めます」

マスターはそう言って「最初はグー」と促した。マスターがグー、くろたんがチョキでマスターの勝ち。

「うわっ!くろたんのチョキって親指と人差し指のやつじゃん!昭和だわー」

ギョニ子がそう言うと真一郎も続いた。

「ホントだなぁ。うちの病院の患者さん、あのチョキを使うのはだいたいが70代以上の患者だもんな」

うおっほんとくろたんが咳払いをしたので、マスターが話し始めた。

「では先攻のわたしたちからはまず麗子ママにやってもらいましょう」

それを受けて麗子ママが話しだす。

「『競馬法100周年記念』のサイトにある『馬券発売100年の歴史』。その中にいくつか過去のレースの馬券画像があるのだけれど、一枚だけ実際にはない架空の馬券があるの」


馬券発売100年の歴史

「買い目は1番、10番、18番」のボックス馬券。この3頭で決まったGⅠレースを、1986年以降で調べてみたら、ひとつだけヒットしたものがあったわ」

2022/5/8 NHKマイルC
1着:8-18 ダノンスコーピオン
2着:1-01 マテンロウオリオン
3着:5-10 カワキタレブリー

「1着は『8枠18番』。ソングラインのゲートよ」

麗子ママがそう締めると、店内から拍手が起こった。相手はくろたん一人。こうやって心理的に追い詰めていく作戦なのだろう。

「なるほど面白いですね。ただ、ダノンスコーピオンとマテンロウオリオン、2頭とも安田記念に出ています。そこには触れないで『8枠18番』だけをソングラインに当てはめている。寄せに行ってますね?もしかしたらその豊満なバストも寄せているのかな?」

そう言ってくろたんは不敵な笑みを浮かべた。

■    百舌鳥アスコット

「次はくろたんのターンです」

マスターの言葉にくろたんがうなずいた。

「最近力を入れているのが出馬表解析です。種牡馬、馬主、厩舎、前走ゲート、前走馬体重の同じ馬が同居した枠から狙い馬をあぶりだすわけです」

6/4(日)東京5R (芝1600)
7ー08 父スワーヴリチャード
7ー09 父スワーヴリチャード

「7枠にスワーヴリチャード産駒の同居。素直にシュネルマイスターがいる7枠がまず浮上します」

「それだけではないでしょうね?」

マスターの質問にくろたんはうなずいた。

「もちろんです。スワーヴリチャードの出走した安田記念をみてください」

スワーヴリチャード 安田記念

2018.6/3 安田記念 (芝1600)
1着 5ー10 百舌アスコット (C.ルメール) 矢作 キャピタル
2着 2ー04 アエロリット (戸崎) 菊沢 (サンデーR)
3着 1ー01 スワーヴリチャード

「戸崎、サンデーはそちらのソングラインにつながりますが、1着騎手はルメール。ルメール騎乗のシュネルマイスターが最有力でしょうね」

くろたんがそう締めると、店内にはぶーぶーという声が響いた。

「ブーイングすなっ!」

くろたんは周囲をにらみつけながら言った。

■    ゴトーと誤答

「では次は私たちの番ですね。しんちゃんお願いします」

マスターがうながすと真一郎はうなずいて話し始めた。

「例の『50』について考察しなおしました。昨年と今年の安田記念につけられた副題。安田伊左衛門生誕『150周年』と『競馬法100周年記念』。その差は『50』。そして、競馬法100周年記念キャンペーンの『総計 30,327名様』。実際は『30,277名様』なのでこれも差が『50』。ゴトー(50)という誤答、つまり後藤浩輝騎手のことじゃないでしょうか?」

2002 安田記念
8−18 アドマイヤコジーン
(同年東京新聞杯1着)

8-17 ウインカーネリアン
(2023 東京新聞杯1着
8-18)ソングライン

「ごらんのように、アドマイヤコジーンのゲートと戦歴が8枠には揃っています」

真一郎が自信たっぷりにそう締めると、くろたんが言った。

「ほほう。面白い考えではありますが、むしろウインカーネリアンのほうということはないですか?三浦皇成騎手が通算1,000勝目を初GⅠ制覇で飾る・・・」

「それはないっちゅーの。ムギュ」

「ムギュウでパイオツの谷間強調・・・ってそれはパイレーツ!!三浦皇成の奥さんは、ほしのあきですからーーーー!残念!」

そう突っ込んでくろたんはギターを弾く真似をした。

「うわっ!ギター侍まだやってるw」

ギョニ子が両腕をさする寒いのポーズをした。

■    馬券の歴史クイズ

「次はくろたーーーん」

マスターがそう言うとくろたんが突っ込んだ。

「くろたんのターンを略すな!」

「よくわかりましたね」

「3秒ほど考えましたよ!さて、次は馬券の歴史クイズです。『競馬法100周年記念』に全10問からなるクイズがあります。その第6問は1998年のクラシック三冠の三強を当てるもの」

第6問の答え

キングヘイロー
スペシャルウィーク
セイウンスカイ

「1998年の3冠レースは、すべてのレースをこの3頭で1番人気、2番人気、3番人気を形成」

1998年の安田記念
1着 1ー02 タイキシャトル アメリカ産 3/23生

安田記念
シュネルマイスター ドイツ産 3/23生

「その年の安田記念馬タイキシャトルと、〇外であること、そして強烈なのは誕生日も一緒という点。そして、『1番人気、2番人気、3番人気』というワードが、シュネルマイスターの今年の着順を示唆しているように感じます」

シュネルマイスター
2021 安田記念 3着
2022 安田記念 2着
2023 安田記念 1着?

「やりますね、くろたん」

マスターはそう言ったが表情に変化はなかった。スナック忘れな草側にもまだまだ持ち駒はある。

■    唯一の選択肢「1」

「『競馬法100周年記念』のクイズネタならこちらにもあります。今日子ちゃん、お願いします」

「はい、マスター」

ギョニ子はそう言うと説明をはじめた。

「全10問の解答を選択肢ごとに調べてみたの」

全10問の解答
2-2-4-3-1-4-3-3-3-2

選択肢1 第5問
選択肢2 第1.2.10問
選択肢3 第4.7.8.9問
選択肢4 第3.6問

「選択肢2、3、4が複数回正解になっているのに対し、選択肢『1』だけ正解は第『5』問のみ。これが怪しいと思うの。安田記念は東京競馬場GⅠ5連戦の第『5』戦。合致するわ」

5問の答え
普通馬番式二連勝複式勝馬投票券


競馬法100周年記念サイト 馬券クイズ第1弾

「そして、その第5問の解答が『普通馬番式二連勝複式勝馬投票券』。『二連勝』がキーワードなら、該当馬は5頭」

<安田記念 前走1着馬>

2-03 ジャックドール
5-09 シャンパンカラー
7-13 レッドモンレーヴ
7-14 シュネルマイスター
8-18 ソングライン

「昨年の覇者ソングラインは、安田記念を『二連勝』できる権利も持っているわ。よって第5問が示唆するのはソングラインよ」

パンパンパンというゆっくりとした拍手の音が店内に響いた。拍手したのはくろたんだった。

「敵ながらあっぱれと言っておきましょう」

「なにそのくっさいドラマの演出みたいな拍手!陰から出てきて、聞いてましたよってやつじゃない!」

ギョニ子はそう言ってくろたんをにらみつけた。

■    歓喜の馬 ウェルカムS

「くろたーーーん」

マスターの声にくろたんが説明を始めた。もう慣れたのか、くろたんのターンでくろたーんには突っ込みを入れない。

「動画『歓喜の歌』安田記念編ですが、最後に流れるレースはなぜか2021年、コントレイルの勝ったジャパンカップです。同日、ジャパンカップのひとつ前である東京11Rにウェルカムステークスが組まれていました」

2021/11/28 
東京11R ウェルカムステークス
1着 7ー13 ジャックドール 藤岡佑
2着 7ー14 ハーツイストワール C.ルメール

7-14)シュネルマイスター(ルメール

「このレースからもシュネルマイスターが浮上します。ハーツイストワールは2着じゃん!とか、むしろジャックドールじゃね?なんて突っ込みは却下します!」

「むむ。こちらが突っ込む前にそれを言うとは・・・」

マスターはそう言って苦笑した。

■    夏CMのトランプ

「では次は我々の番ですね。社長さん、例のやつをガツンと言ってやってください」

マスターに促されて、タコ社長はコホンとひとつ咳払いをしてから話し始めた。

「えーーっと、つい最近アップされた動画。夏競馬のやつね。GⅠ馬が4頭登場するのよ」

ハートのエース (オルフェーヴル)
スペードのキング(ゴールドシップ)
ダイヤの7   (ラッキーライラック)
クラブの8   (ワグネリアン)


HERO IS COMING.『HEROを当てろ!』篇 夏競馬 30秒


HERO IS COMING.『HEROを当てろ!』篇 夏競馬 30秒


HERO IS COMING.『HEROを当てろ!』篇 夏競馬 30秒

「動画の最後にはラッキーライラックとワグネリアンのデビュー戦も流れるんだけど、そんなのはどうでもいい。4頭の中に共通点をもっているのが2頭いる。ラッキーライラックとゴルシさ」

2020/11/5 エリザベス女王杯
8-18)ラッキーライラック
(ルメール・連覇・前年騎手Cスミヨン)

2014/6/29 宝塚記念
8)-11 ゴールドシップ
(横山典弘・連覇・前年騎手内田博幸)

「共通点は一目瞭然。『同一GⅠを8枠かつ前年とは異なる騎手で連覇』さ。昨年池添謙一で勝っている『8枠18番』ソングラインで鉄のパンツというわけよ」

「ほう。面白いですね。でも、オルフェーヴルとワグネリアンには目をつぶるわけですか?」

くろたんの問いかけにタコ社長が答えた。

「つながりがないわけじゃない。オルフェーヴルはソングラインと同じサンデー。ワグネリアンのダービーは『8枠17番』。その『8枠17番』には末尾『リアン』が一致のウインカーネリアンだ」

オルフェーヴル(サンデー
8-17 ワグネリアン(ダービー)

8-17 ウインカーネ(リアン
8-18 ソングライン(サンデー

■    ルメール連勝年の安田記念

「くろたーーーん」

マスターが言い終わらないうちに、くろたんは口を開いていた。

「この前も話した、ダービーと目黒記念を同一騎手が連勝した年の安田記念です」

2017.5/28
日本ダービー
1着 (6ー12) レイデオロ (C.ルメール) キャロットF

目黒記念
1着 (6ー12) フェイムゲーム (C.ルメール) サンデーR

2017.6/4 安田記念
1着 7ー14 サトノアラジン 川田 (池江)
2着 8ー16 ロゴタイプ 田辺 田中剛(前年1着)

2017.6/3 鳴尾記念
1着 8ー09 ステイインシアトル 武豊 (池江)
2着 7ー08 スマートレイアー M.デムーロ 大久保

「昨日の鳴尾記念は2017年と同じ、池江泰寿厩舎のボッケリーニが1着。今年も同じことをやるという予告でしょう。安田記念は『7枠14番』のサトノアラジン。しかも前年の1着馬を2着に従えています」

「14番シュネルマイスターが昨年の覇者ソングラインに先着する、そういうことですね?」

マスターがそう尋ねるとくろたんはニヤリと笑ってうなずいた。

■    鳥羽・伏見の戦い

「くろたんの掲示板で、競馬法100周年記念のロゴについてなおちゃんから書き込みがありましたね。鳥の羽のようなものが使われているから、鳥羽ステークスのことじゃないかと」


マスターが説明を始めた。

「これにヒントを得ましてね。鳥羽と言えば『鳥羽・伏見の戦い』。長らく施行されていない伏見ステークスの結果を見て驚きましたよ」

最後の伏見ステークス

2012/1/22
京都10R 伏見S 16頭
1着:(8)-16【メモリアルイヤー】(逆1
2着:(7-14)アグネスウィッシュ

8)-18 ソングライン(逆1

「今年はセンテニアルパーク京都競馬場グランドOPがあり、まさにメモリアルイヤー。勝つのはソングラインでしょう。ご丁寧に2着は『7枠14番』だと教えてくれていますよ」

マスターはそう言うと、くろたんの番を告げた。

■    デビューのゲートへ

「くろたーーーん」

「6月壁紙カレンダーを見ましたでしょうか?タイトルが『デビューのゲートへ』。これを見て、ダービーではデビュー戦のゲートに入った馬が怪しいのではと書き込みましたね」

3ー05 ソールオリエンス デビュー戦 5ゲート
6ー12 タスティエーラ デビュー戦 12ゲート

「結果はデビュー戦ゲートに入った馬のワンツー。安田記念でもやるかもしれません」

6/3(土)アハルテケS
7-13 エイシンギアアップ 10着
(デビュー戦 【13】番12着)
7-14 ディアセオリー 6着
(デビュー戦【14】番1着)

「昨日の東京メイン、アハルテケSは該当馬の同居だった7枠が不発。これは今日の安田記念で7枠が出るというサインでしょう。なぜなら、ダービーの週にも土曜東京メインが不発で、同ゲートのソールオリエンスが2着しています」

5/27 東京11R 欅ステークス
3ー05 フォーヴィスム 7着
(デビュー戦 3ー05

5/28 東京11R 日本ダービー
3ー05)ソールオリエンス 2着
(デビュー戦『5番』1着)

■    馬車パレード

「さあ、次は我々ですね。麗子ママ、お願いします」

「シンプルだけどなかなか強烈よ。先週のダービー、優勝騎手らによる馬車パレードがあったわよね?」

馬車(パレード
Dレーン(オーストラリア

ソングライン 母ルミナス(パレード
馬名意味:(オーストラリア))に伝わる道の名

「おお!ブラボー!」

そう声をあげたのはタコ社長だった。くろたんは何も言わない。じっと手元のスマホを見ている。メモ帳に書いたネタでも見ているのだろう。

■    藤井聡太七冠

「くろたーーーん」

「藤井聡太が七冠達成しましたね。史上最年少での名人位獲得から、『スピード名人』のシュネルマイスター。ま、これはあちこちで語られています。タイムリーかつ見つけやすいネタですからね。しかしここからがくろたんイリュージョン。藤井と言えば藤井勘一郎騎手がいましたね。残念ながら現在療養中ですが・・・」

藤井勘一郎 唯一の重賞勝利

2020.3/20 フラワーカップ
1着 8ー13 アブレイズ 藤井 池江 前田
2着 8ー14 レッドルレーヴ L.ヒュー 藤沢 東京HR

安田記念
7ー(13) レッドモンレーヴ 横山和 蛯名(藤沢) (東京RH)
7ー(14) シュネルマイスター C.ルメール 手塚 サンデーR

「枠は8枠と7枠で違いがありますが、フラワーCの8枠要素が満載の7枠です。シュネルマイスターで間違いないでしょう。ちょっと簡単すぎるので、謎の乗り替わりについても触れましょう」

■    中村将之への乗り替わり

「阪神1Rの障害戦です」

くろたんが説明を続けた。

騎手変更 4番 難波 剛健(60.0kg)から 中村 将之(60.0kg)に変更

難波と言えば難波ステークスを思い浮かべます」

2023/3/11 
阪神10R 難波
1着:2-02 マテンロウスカイ(横山典弘
2着:(7)-10 パラレルヴィジョン
3着:(7)-09 シンボ

7)-13 レッドモンレーヴ
7)-14 シュネルマイスター
7)-15(マテンロウ)オリオン(横山典弘

「難波ステークスは、まんま安田記念の7枠を示唆しています」

「そのネタいただきましょう。藤井聡太七冠に絡めるとこんな読みができます。シュネルマイスターが浮上するネタです」

マスターはそう言ってニヤリと笑った。ソングラインを推すチームの一員でありながら、シュネルマイスターにつながるネタをあげるとは大胆不敵だ。

「藤井聡太の七冠の足跡をみてみましょう」

<藤井聡太七冠 獲得歴> 

一冠目 棋聖戦(渡辺)明
ニ冠目 王位戦 木村一基
三冠目 叡王戦 豊島(将之
四冠目 竜王戦 豊島(将之
五冠目 王将戦(渡辺)明
六冠目 棋王戦(渡辺)明
七冠目 名人戦(渡辺)明

※防衛ではなく獲得時の相手

「中村『将之』騎手への乗り替わりは、豊島『将之』を示唆していると思われます。そして、中村将之騎手が入ったゲートは4枠4番

阪神1R
4−04 レディステディゴー(中村将之

「4枠4番で『4』、つまり七冠中『四冠』を奪った相手、渡辺明を示唆していると考えます。そうなると気になるのが、渡辺薫彦厩舎ですね」

阪神4R
7−14 ルシール(渡辺)薫彦

7−14)シュネルマイスター
※スピードの名人
名人)位は(渡辺)から獲得

「サインを出しますよと言わんばかりに、今日はこのひとレースのみ。同じ『7枠14番』のシュネルマイスターでしょうね」

マスターがそう言うと、くろたんは黙ってうなずいた。

■    沖縄返還

「さあ、次は今日子ちゃん、お願いします」

「しんちゃんがあげてくれたキーナンバー『50』。これってもうひとつ意味があると思うの。CMのシリーズで出てくるタコライス。発祥は沖縄県ね。沖縄で『50』と言えば、昨年が沖縄返還50周年だったわ」

1972 沖縄返還
2022 沖縄返還50周年

「この『50』だと思うのよ。馬券にも『返還』がつきものだしね。沖縄が返還された1972年に生まれた騎手で、安田記念を制したのは2名。アグネスデジタルの四位洋文騎手と、アサクサデンエンの藤田伸二騎手よ」

<1972年生まれ 安田記念勝利騎手>
2003 アグネスデジタル(四位洋文)
2005 アサクサデンエン(藤田伸二)

「オークスからの『ウマのそら』3名バージョンで、安田記念だけが優勝馬の回想がなかったの。それってダービーのときに回想されたウオッカが、安田記念の連覇馬でもあるからじゃないかしら?回想馬を出さないことでウオッカを強調。つまりソングラインの連覇ね」

「アサクサデンエンはどうなるのでしょうか?」

くろたんの質問にギョニ子が答えた。

「アサクサデンエンはくろたんの7枠にあげるわ。アサクサデンエンは京王杯スプリングCと安田記念を連勝した最後の馬。シュネルマイスターの同枠レッドモンレーヴが、前走京王杯スプリングC1着馬ね」

ギョニ子の説明を受けてマスターが言った。

■    平成の米騒動

「くろたーーーん」

「・・・ま、今日はこのくらいにしておきますか・・・そちらもネタは残ってないんじゃないですか?」

くろたんの言葉に真一郎が反論した。

「あるよ!とっておきのやつが」

「ほほう。ではうかがいましょう」

「安田記念の特別版レーシングプログラムに、ダービーの馬券が出てきます。1992年のものです」


安田記念 特別版レーシングプログラム


安田記念 特別版レーシングプログラム

「皐月賞と二冠を達成したミホノブルボンからの流し馬券。だけど、2着馬のライスシャワーがないんです!そう、米がないんですよ!」

「それがどうしたというのですか?」

くろたんの質問に真一郎が答えた。

「ミホノブルボンのダービー1992年の安田記念馬はヤマニンゼファー。翌1993年に安田記念を連覇しますが、その1993年は『米がなかった年』なんです!」

「・・・平成の米騒動か!?」

くろたんの質問に真一郎は笑顔でうなずいた。

1993年米騒動(1993ねんこめそうどう)とは、1993年(平成5年)の日本における記録的な冷夏による米不足現象の総称。
「大正の米騒動」と呼ばれる1918年米騒動に対して、平成の米騒動(へいせいのこめそうどう)とも呼ばれる。

1993年米騒動

「そういうことです。ライスシャワーがないハズレ馬券は、米騒動があった1993年、つまりヤマニンゼファーの連覇を示唆しているわけです。ゼファーは『そよ風』。先週の目黒記念『1枠1番』ゼッフィーロ。この馬もまた『そよ風』。正1番から逆1番へのパッシングでしょう」

「・・・ふふふ。マスター、この店は面白いね。ま、勝負はやってみないとわからない。シュネルマイスターが勝っても、ソングラインが勝っても恨みっこなしということで」

そう言ってくろたんは席を立ち、ブレーカーを上げた。店内に明かりがともった。ローソクの明かりで慣れていたためか、みんな少し眩しそうな顔をした。

「また、宝塚記念のときにでも来るよ」

くろたんはそう言って店を出ていった。後ろ姿にマスターが声を掛ける。

「宝塚記念と言わずいつでもどうぞ!」

店内に張りつめていた緊張感がほぐれ、みんな安堵の表情をみせた。

「ヤマニンゼファーが最大のキーホースなら・・・」

マスターが言った。

「1992年が18番、1993年が14番での連覇。ソングラインとシュネルマイスター。ワンツーだったら最高なんだけどな」

マスターがそう締めるとみんながうんうんとうなずいた。

スナック忘れな草
安田記念 勝負馬券
単勝:18番ソングライン
枠連:7-8

2023安田記念後編~平成の米騒動~
―完―


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