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スナック忘れな草~2023ダービー・眠れぬ夜~

■ 眠れぬ夜

2023年5月26日(土)午前0時
-東京都某区 真一郎のアパート-

真一郎はパソコンでYouTube動画を開き、西城秀樹の『眠れぬ夜』を聴いていた。もともとはオフコースが1975年にリリースした曲だが、1980年に西城秀樹がカバーしている。オフコースのしっとりした『眠れぬ夜』ではなく、西城秀樹の激しい『眠れぬ夜』を聴きたい気分だったのだ。

西城秀樹 眠れぬ夜
https://youtu.be/xMXMA6PUFbY

真一郎はついさっき、JRAの媒体からダービーの優勝ゼッケンが書かれているものを発見した。99.9%間違いないであろう。フェイクだとしたら冗談がきつすぎる。

『眠れぬ夜』を聴いているのは興奮して眠れないからという理由もあるが、『眠れぬ夜』というタイトルが、おそらく勝つであろう馬を示唆する過去のある馬につながるからでもあった。

眠れぬ夜・・・

スリープレスナイト・・・

■ オペラシチー(目黒記念)

2023年5月27日(土)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-

「さあ、いよいよダービーですね」

マスターがいつになく大きな声で言い、スナック忘れな草の店内にピリッとした空気が満ちた。昨日の予想は葵ステークス、欅ステークスともに不的中となりリズムは悪かった。しかし来週からは2歳新馬戦がスタートするのだから、ダービーはある意味競馬界の大晦日と言える。終わり良ければ総て良しとするためには、なんとしてもダービーを当てたいところだ。

「さて、すぐにダービーに取り掛かりたいところですが、ダービーの予想が終わったあとは余力がない可能性があります。そこで、先に他の気になるレースを片付けてしまいたいのですがどうでしょう?」

マスターの提案に、ギョニ子が大きくうなずいた。

「マスター、ナイス提案だわ。実は目黒記念で気になる馬がいるの」

ギョニ子の力強い声にみんなが顔を向けて注目した。

「1番のゼッフィーロよ」

「おいおい、前売りじゃあけっこう人気になってるけど重賞初挑戦だぞ?大丈夫なのか?」

タコ社長が疑問を呈した。ギョニ子はスマホ画面をタコ社長に見せて言った。

「まずは騎手の川田将雅。これを見て」

土曜東京メイン 欅S
8-16 バトルクライ(川田将雅・逆1)1着

ダービー
8-18 サトノグランツ(川田将雅・逆1)?着

目黒記念
1-01 ゼッフィーロ(川田将雅・正1)?着

「土日メインと目黒記念の3頭が正逆1番。確かにバトルクライ1着は割引かもしれないけど、目黒記念の1番はいいと思うの」

「1番に根拠がありそうですね」

マスターが問いかけた。

「そうなのよ。ダービーの予想で『ももクロ』と『あらいぐまラスカル』を担当したんだけど、『ももクロ』から浮上する馬がいるの」

「へえ。それは面白そうだね」

真一郎が興味を示した。

「明日のダービーデーが終了日の『ももクロ』。試練の五番勝負のトリが『セトリ予想』だったのよ」

「セトリっつうのはなんなんだい?」

タコ社長がギョニ子に尋ねた。

「コンサートの曲順を『セットリスト』。略して通称『セトリ』というわけ」

「今のわけえやつぁ、なんでも略しちゃうからなあ。例えばセックスフレ・・」

「下ネタはあとにして!!」

ギョニ子に最後まで言わせてもらえず、タコ社長はふくれっ面をした。

「で、対象となった5月16日の『代々木無限大記念日ももいろクローバーZ 15th Anniversary』なんだけど、JRAFUNの公式ツイッターが正解動画をツイートしているの」

2023.5.16代々木無限大記念日
ももいろクローバーZ 15th Anniversary

DAY1 SETLIST
1.行くぜっ!怪盗少女
2.ダンシングタンク
3.ピンキージョーンズ


https://twitter.com/JRAFUN_Official/status/1659121653421576195

「『行くぜっ!怪盗少女』ってことはファントムシーフ?確か馬名の意味は怪盗だったよね?」

真一郎が目を丸くして言うとギョニ子がうなずいた。

「そうなのよ。ダービーの注目馬が先にバレちゃったわね。ところがね、ネットで『ももくろ 15th セトリ』を検索すると、1曲目は別のものを載せているところもあるの」

2023.5.16代々木無限大記念日
ももいろクローバーZ 15th Anniversary

DAY1 SETLIST
1.overture ~ももいろクローバーZ参上!!~
2.行くぜっ!怪盗少女
3.ダンシングタンク
3.ピンキージョーンズ

KING RECORDS より
https://news.kingrecords.co.jp/2023/05/15391/

「1曲目をメンバー紹介の定番『overture』としていて、2曲目が『行くぜっ!怪盗少女』。この『overture』に注目して調べてみたら、『オーバーチュア』と『オーバーチュアー』という馬がいて、JRAで勝利歴ありは文字数の多い『オーバーチュアー』だったの」

オーバーチュアー JRA最後の勝利
2005/5/1 新潟8R
1-01 オーバーチュアー 1着

同日新潟メイン 谷川岳S
5-09 フジサイレンス(五十嵐雄祐)

同日東京メイン スイートピーS
7-14 ライラプス 1着

同日京都メイン 天皇賞(春)
5-10 スズカマンボ 1着

「ももクロの『15周年』にふさわしく、『オーバーチュアー』が走った新潟のメインが、名前に『15』のある五十嵐雄祐騎手。東京メインはファントムシーフと同じ『7枠14番』が1着。そして京都メインが春天でスズカマンボ」

スズカといえばラスカルスズカ。『あらいぐまラスカル』にもつながりそうだね」

真一郎の言葉にギョニ子がうなずいた。

「そうなのよ。競走馬でラスカルと言えば誰もがまずラスカルスズカを思い浮かべると思うの。『オーバーチュアー』が最後に勝利した日の春天がスズカマンボ。同馬主のラスカルスズカを強調しているように思うわ。ラスカルスズカにはダービーの解説のときに登場してもらうとして、スズカマンボの菊花賞を見て」

2004/10/24 第65回 菊花賞
1着:8-18 デルタブルース
2着:3-05 ホオキバウェーブ
3着:1-01 オペラシチー

6着:2-04 スズカマンボ

「『1枠1番オペラシチー3着。ダービーの1番も『オペラ』が馬名にある『ベラジオオペラ』。そして、このオペラシチーだけど、この菊花賞の翌年に目黒記念を制してるの」

2005/5/21 第119回 目黒記念
1-01 オペラシチー 1着

「おなじ『1枠1番』での優勝か!それで明日の目黒記念も1番が怪しいとにらんだわけだ!」

タコ社長の言葉にギョニ子がうなずいた。

「そういうことなの。しかもこの考察のもとになった『overture』。意味を調べたら『序曲』のことで、ウィキペディアには『オペラや劇付随音楽、古典組曲などの最初に演奏される音楽である』とあるわ」

ウィキペディア:序曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/序曲

「隠れトップナンバーの『overture』はオペラのことだから、ベラジオオペラオペラシチーの1番というわけね」

麗子ママの発言にギョニ子はうなずいた。

「そういうことなの。ダービーのサトノグランツかもしれないけど、もし不発だったら目黒記念は1番のゼッフィーロを買ってみたいわ」

「それでは目黒記念はゼッフィーロ本命でいきましょう。他に気になるレースがある人はいますか?」

マスターの問いかけに真一郎が口を開いた。

■ GOEMONが教える安土城ステークス

「京都10Rの安土城ステークスはどうでしょう。中村芝翫、橋之助親子がプレゼンターを務めます」

「へえ。プレゼンターって普通はメインレースに登場だけどそうじゃないのね。なんで安土城ステークスなんだろ?」

ギョニ子の質問に真一郎が答えた。

「そこが肝だと思っています。中村芝翫と安土城をつなぐもの。それは映画『GOEMON』ではないかと・・・」

「ありましたね、映画『GOEMON』。当時まだ中村橋之助だった中村芝翫は、織田信長役でしたでしょうか?」

マスターがそう言うと真一郎がうなずいた。

「そうなんです。織田信長といえば安土城ですから、ここはシンプルに『GOEMON』、つまり石川右衛門の5枠を狙ってみたいと思います。ダービーの5枠に石川がいるのもプラスでしょう」

ダービー
5-09 グリューネグリーン(石川裕紀人)

「なるほど5枠はおもしれえなぁ。相手はどの枠になるんだい?」

タコ社長の言葉に真一郎が続けた。

「中村芝翫は八代目。相手はシンプルに8枠でいいのではないでしょうか?」

「いいですね、枠連5-8の1点勝負。我々の予想で前回当たったのが京王杯スプリングカップの枠連1点予想でしたね。ズバリと当ててダービーに勢いをつけましょう!」

マスターの言葉にみんながうなずき、京都10Rの安土城ステークスは枠連5-8の1点勝負となった。

■ GⅠヘッドライン・福永祐一

「さあ、ではいよいよダービーの予想にうつりましょう。みなさん考えて来てくれたと思いますが、まずは私から始めますね」

マスターが言った。今日は各自が割り当てられたサインアイテムの考察を披露し、それから本命馬と馬券を決めていく流れになっている。マスターはパソコン画面をみんなに見せた。

2023 ダービー
「英雄を超えろ、屈強な勇者が時代を築く。

「靴磨きの政やんに協力してもらい、過去のヘッドラインを調べてもらいました。昨年のフェブラリーステークスと酷似しています」

2022 フェブラリーS カフェファラオ(連覇・福永祐一)
「威信を砂に刻め、屈強な勇者が時代を築く。

おおという声が店内に響いた。後半の「屈強な勇者が時代を築く」が完全に一致している。

「複数の単語が一致する例は多々ありますが、今回のように読点のあとの後半が完全に一致しているのは、かなりのレアケースだそうです」

「カフェファラオの連覇の年ってことは、連覇がキーになるのかい?」

タコ社長がマスターに問いかけた。

「その線はありそうですね。騎手の連覇なら武豊のファントムシーフ、友道康夫調教師ならシャザーンかサトノグランツになります」

2022 ダービー
7-13 ドウデュース
(武豊・友道康夫・キーファーズ)

5-10 シャザーン  (友道康夫
7-14 ファントムシーフ(武豊
8-18 サトノグランツ(友道康夫

※キーファーズ出走なし

「マスターはこの3頭ならどの馬を推したいのかしら?」

ギョニ子の質問にマスターが答えた。

「ファントムシーフですね。明日の『みんなのKEIBA』に福永祐一調教師がゲスト出演します。昨年、福永祐一はGⅠを2勝していますが、その2勝がファントムシーフを示唆しているように感じます」

2022 福永祐一 GⅠ勝利
フェブラリーS カフェファラオ(連覇
皐月賞     7-14 ジオグリフ

7-14)ファントムシーフ(武豊→勝てば連覇

「なるほど!カフェファラオとジオグリフで『14番で連覇』。ありそうですね!」

真一郎がそう言うと、マスターはうなずいて言った。

「しかも福永祐一は、直近のダービー連覇騎手です。史上3人目の快挙でした」

<ダービー 騎手の連覇>

1998 スペシャルウィーク(武豊)
1999 アドマイヤベガ  (武豊)

2007 ウオッカ   (四位洋文)
2008 ディープスカイ(四位洋文)

2020 コントレイル (福永祐一
2021 シャフリヤール(福永祐一

「ファントムシーフが勝てば、武豊騎手は二度目の連覇達成ってわけね」

ギョニ子が言った。

「そういうことになりますね。今年はある意味特別なダービーなので、レジェンドが連覇するのかもしれません」

「特別なダービーってどういうことだい?」

タコ社長の質問にマスターが答えた。

「史上初の“令和生まれの馬だけ”によるダービーという点です」

2022 ダービー
7-13 ドウデュース(令和生まれ・武豊)1着

8-17 ロードレゼル(令和生まれ
8-18 イクイノックス 2着

「昨年のダービーには2頭の令和生まれがおり、その2頭の枠で決着しています。ドウデュースは令和生まれ初のダービー馬だったわけです」

マスターの説明に麗子ママが質問をした。

「ドウデュースは朝日杯FSの勝ち馬だったわね?令和生まれの馬として初めてGⅠを勝った馬でもあったのかしら?」

「その通りです」

マスターが答えた。

「その一週前の阪神JFを勝ったサークルオブライフは平成31年の3月24日生まれ。令和は5月1日からでしたから、同じ西暦1999年生まれでも、平成生まれと令和生まれがいるわけです」

「令和生まれの馬だけのダービーか。だからこそ若武者の横山武史ということもありそうだけど、終わってみればレジェンド武豊かもしれないですね」

真一郎が腕を組んで言った。

「ということで、ヘッドラインからは『みんなのKEIBA』も加味して、ファントムシーフを一番手にあげておきます」

マスターはそう言って麗子ママのほうを見た。次は麗子ママの番だ。

■ キタサンブラックを復習せよ

「わたしは『3分で分かった気になる名馬』を調べたわ。今回登場したのはドゥラメンテ」

7-14 ドゥラメンテ皐月・ダービー二冠
Mデムーロ・堀宣行・サンデー

3-05 ソールオリエンス
皐月賞馬・勝てば二冠
3-06 ショウナンバシット(Mデムーロ

7-13 シーズンリッチ(父ドゥラメンテ
7-14)ファントムシーフ
7-15 ノッキングポイント(サンデー

8-17 ドゥラエレーデ(父ドゥラメンテ

「人気馬の枠だけど、3枠と7枠が強調されているように見えるわね」

ギョニ子の言葉に麗子ママがうなずいた。

「そうなの。動画の最後に2頭の馬を復習せよと出るのだけど、その2頭も3枠と7枠を示唆しているみたい」

「復習せよと言ってるのはキングカメハメハとキタサンブラックでしたね」

マスターがそう言うと、麗子ママが答えた。

「そう。その2頭を血統に持つのは以下の3頭よ」

1-02 スキルヴィング(父キタサンブラック
3-05 ソールオリエンス(父キタサンブラック
7-15 ノッキングポイント(母父キングカメハメハ

「血統だけでは強い示唆ではないけれど、変則二冠馬キングカメハメハからは勝てば二冠のソールオリエンス、キタサンブラックの動画からはタイトルの『“祭り”は7度鳴り響く』から、勝てばダービー7勝目の武豊ファントムシーフ。そして、キタサンブラック産駒からはスキルヴィングとソールオリエンスね」

【3分でわかる】キタサンブラック・“祭り”は7度鳴り響く
https://youtu.be/9gWsRWij4Xo

「そうなると『3分名馬』からはソールオリエンスとファントムシーフでいいでしょうね。広げれば枠で3と8、そして名前が挙がった馬たちもとりあえず押さえておきましょう。さあここでちょっと休憩しましょう。10分ほどしたら再開します」

マスターのその言葉に、各自トイレに行ったりスマホをいじったり、伸びをして体をほぐしたりして過ごした。

■ overture

「では揃ったようなので、今日子ちゃんお願いします」

マスターの言葉にギョニ子はうなずき、解説を始めた。

「目黒記念のところで話したけど、ももクロちゃんからは『オーバーチュアー』という馬が出てきて、JRA最後の勝利からファントムシーフが浮上したわ」

オーバーチュアー JRA最後の勝利
2005/5/1 新潟8R
1-01 オーバーチュアー 1着

同日新潟メイン 谷川岳S
5-09 フジサイレンス(五十嵐雄祐)

同日東京メイン スイートピーS
7-14 ライラプス 1着

同日京都メイン 天皇賞(春)
5-10 スズカマンボ 1着

「3場開催だったこの日だけど、ダービーと同じ『東京メイン』を重視すると、同じ『7枠14番』に入ったファントムシーフは無視できないわ」

「新潟メインからも強い示唆がありますよ」

マスターがニヤっと笑いながら言うと、みんなが注目した。

「新潟メインが谷川岳ステークス。ファントムシーフは谷川牧場の生産馬です」

「あちゃーーー!」

天を仰いでそう叫んだのはギョニ子だった。

「なんでそこに気づかなかったんだろ!マスターサンキュー!!」

「いえいえ、足りないところを補い合えるのがチーム戦のいいところです。ところで『谷川』からは、少し強引ですが武豊のダービー7勝目につながる解釈もあります」

「え!?どういうことですか?」

真一郎が驚いた表情を見せて言った。

「羽生善治永世七冠です。1996年2月に、当時の将棋タイトル戦七つすべてを、史上初めて独占したのです。羽生善治七冠誕生は大きなニュースとなりました。その後2017年に永世七冠の資格を得ています」

「谷川岳はどうつながるんだい?」

タコ社長が先を促したのでマスターは苦笑して言った。

「そうでしたね。将棋が好きなものでつい余計な解説を入れてしまいました。1996年2月に七冠目を奪取した相手が、王将戦の相手である谷川浩二王将だったのです」

「へえー!そんな歴史があったのね!羽生善治永世七冠に対して、勝てばダービー7勝目の武豊ってわけね?」

ギョニ子がそう言うとマスターはうなずいた。

「それもありますし、実は来週にも羽生善治以来の七冠達成がありそうなのです」

「それってもしかしたら藤井君かい?」

タコ社長の言葉にマスターがうなずいた。

「そうです。明日、岩手県宮古市で叡王戦の第4局があります。その対局に勝つと叡王位防衛となり六冠保持がまず確定します。そして、来週の水曜日と木曜日に行われる名人戦第5局。そこで渡辺明名人に勝てば、七冠達成というわけです」

「明日の叡王戦と来週の名人戦。連勝が条件だけど藤井聡太なら十分ありそうだね!武豊がまずダービー7勝目をあげ、その翌週に藤井聡太七冠誕生。残すは前人未到の八冠独占!神様のちょっとしたいたずらってわけだ」

真一郎が興奮気味にまくしたてた。

■ あらいぐまラスカル

「さてと、まだ『あらいぐまラスカル』の説明が残ってたわ」

ギョニ子がそう言うと、みなそうだったという顔になった。

「さっきも言ったけどラスカルと言えばラスカルスズカ。この馬実はアドマイヤベガ世代なの」

「アドマイヤベガといやあ、スペシャルウィークの翌年・・・ってことは武豊のダービー連覇じゃねえか!」

タコ社長がそう叫ぶと、ギョニ子がうなずいた。

「ビンゴよ!そしてここからが面白いの。ラスカルスズカとアドマイヤベガは、一度だけ対戦しているのだけれど、ゲートを見て座りしょんべんしないでね」

1999/11/7 第60回 菊花賞
1-01 ナリタトップロード 1着
3-04 テイエムオペラオー 2着
3-05 ラスカルスズカ   3着

8-14 アドマイヤベガ(武豊)6着

3-05)ソールオリエンス
7-(14)ファントムシーフ(武豊

「いやいや座りしょんべんしちゃいそうだよ!ラスカルスズカとアドマイヤベガの最初で最後の対決が、5番と14番・・・ソールオリエンスとファントムシーフのゲートか!」

真一郎がそう言うと、ギョニ子は満足そうにうなずいた。

「ラスカルちゃんからもファントムシーフとソールオリエンスでよさそうじゃない?」

マスターはうなずき、次のタコ社長を指名した。

■ 国士無双

「では次に移りましょう。社長さんお願いします」

その言葉にうなずいたタコ社長は少し照れながら言った。

「この流れで気になる馬を挙げるとなんだか出来レースみたいだけれどよう、俺の考察からもファントムシーフなんだよ。これを見てくれ」

タコ社長はそう言い、作業着の胸ポケットからメモ帳を取り出してみんなに見せた。

さくらコマース ダービー勝利>

1978 サクラショウリ (前走皐月賞3着
1988 サクラチヨノオー(前走皐月賞3着

2023 ファントムシーフ?(前走皐月賞3着

サクラとのつながりはわかったけれど、そもそもサクラはどっから出てきたのよ?」

ギョニ子の突っ込みにタコ社長は右手で自分の後頭部を叩いた。

「あたたた。それ言ってなかったな。札幌競馬場のイベントだよ。『サクラサク』って言葉が気になるじゃねえか。

「このイベントのことですね」

マスターがパソコン画面をみんなに見せた。

札幌競馬場 スプリングホリデーパーク
岡田紗佳 サクラサクダービー

「4月28日・・・ちょうどダービーの一カ月前に公開されたページです」


札幌競馬場イベントページ

「マスターありがとね。そうそうこれこれ。来場ゲストの岡田紗佳っつうのは、KADOKAWAサクラナイツ所属の麻雀女流プロ。なんでも国士無双13面待ちをあがったことがある強者らしいじゃねえか」

「そうでしたね。私も動画を見ましたが13面待ちをリーチ。数巡後に一万が場に出てロン上がりしています」

マスターが言った。マスターは麻雀プロを目指していたこともあるほどの実力者だ。

「そうなんだよ!麻雀つうのは手牌が13牌だから、ツモにしろロンにしろ上がり牌は『14牌目』ってわけさ。『14番』ファントムシーフだね。そして国士無双13面待ちの動画を見たんだけどよう、『』が右から数えても左から数えても『7番目』に置いてあるわけよ。『』は『東京優駿』の『』、『7番目』は言わずもがな武豊のダービー『7勝目』って寸法さ!」


岡田紗佳、国士無双13面待ち!!【麻雀最強戦2022】

一気にそう話して喉が渇いたのか、タコ社長はすっかり水っぽくなっていた眞露の水割りで喉を潤した。小さくなった氷がいくつか口の中に入ったのであろう、ボリボリと氷を噛む音が店内に響いた。

「なんだかファントムシーフ本命に流れが来ていますね。さて、しんちゃん。我々に忖度する必要はありませんから、どうぞ注目馬をあげてください。

■ 眠れぬ夜

マスターにそう促されて、コホンとひとつ小さな咳払いをしてから、真一郎は口を開いた。

「僕が調べたのは『ウマのそら』長澤まさみ編、日本ダービーキャンペーン、ファイナルファンタジーとのコラボ。この3つです。すべて同じ馬につながりました」

おおという声があがり、みんなが真一郎に注目した。

「まずは『ウマのそら』長澤まさみ編。火曜日にビリーヴとカルストンライトオの話をしたのを覚えているでしょうか?」

「覚えているわ。カルストンライトオの5番がオークスで使われたのなら、ビリーヴの4番がダービーに使われるんじゃないかって説だったわね?」

「その通りです」

ギョニ子の言葉に真一郎がうなずいた。

<馬単&3連複・3連単発売 初のGⅠ>

2002 スプリンターズS
1着:2-04 ビリーヴ(武豊)
※馬単・3連複が初めて発売されたGⅠ

2004 スプリンターズS
1着:3-05 カルストンライトオ(大西直宏)
※3連単が初めて発売されたGⅠ

2023 オークス
(3-05)リバティアイランド

2023 ダービー
(2-04)トップナイフ ?着

「ウマのそら」長澤まさみ編は、ウオッカの回顧をしているのにも関わらず、長澤まさみはあみだくじでどの馬券を買うかを決めている。この不自然さが勝馬投票券の歴史を示唆しているのではないかという考察だった。

「3連複と3連単の発売開始年に注目したのは間違っていなかったと思っています。ですが少し詰めが甘かった。実は3連単は、2004年から2008年の途中までは、後半4レース限定の発売だったのです」

真一郎の言葉にマスターが深くうなずいた。これから彼が何を言おうとしているのか、もうわかっているようだった。

「3連単が全レースに解禁されたのが2008年。そして、全レース解禁後の初GⅠが、やはりスプリンターズステークスだったんです」

2008/10/5 第42回 スプリンターズS
7-14 スリープレスナイト(上村洋行)

(7-14)ファントムシーフ

「しんちゃんやりやがったな!ファントムシーフと同じ『7枠14番』でスリープレスナイトかい!」

タコ社長が興奮気味に叫んだ。

「スリープレスナイトがサイン馬である理由はもうひとつあります。JRAサイトのトップページ画像の一つになっている、ダービーデーワイド5%アップキャンペーンです。映ってる男の胸には『PRESS』の文字。背景は赤で3枠を示唆。『スリー』の『PRESS』で『スリープレス』というわけです」


JRAホームページより
https://www.jra.go.jp/

「凄いわしんちゃん。今日は神がかってるわね」

麗子ママに続いて、ギョニ子が言った。

「上村洋行騎手って、確かこれが唯一のGⅠ勝利じゃなかったかしら?」

マスターがうなずいて言った。

「その通りですよ、今日子ちゃん。その上村洋行が、ダービーの1枠1番ベラジオオペラで調教師としてダービー初出走。1番にはサイン馬が入ると言われていますから、自身の唯一のGⅠ勝利ゼッケン、『14番』を示唆している可能性は高いです」


JRAホームページより
https://www.jra.go.jp/datafile/meikan/jretirement.html

「馬券についてはまだあります」

真一郎は言った。

「長澤まさみのあみだくじで選択肢になかった馬券、WIN5です。WIN5で初めて対象レースとなったメインレースと、ダービーを見てください」

2011/4/24(日)
WIN5 3レース目
新潟11R 魚沼ステークス
8-14 ラインブラッド 1着

同日東京メイン皐月賞
6-12 オルフェーヴル 1着
※WIN5 5レース目

2011/5/29(日)
WIN5 5レース目
東京11R ダービー
3-05 オルフェーヴル 1着

(3-05)ソールオリエンス
7-(14)ファントムシーフ


「凄いわしんちゃん!WIN5対象の初メインレースが魚沼ステークスで14番。WIN5対象の初ダービーが5番オルフェーヴルが勝った年なのね!」

ギョニ子が真一郎の頭をなでながら言った。

■ 日本ダービーキャンペーン

「さあ、次は日本ダービーキャンペーンです。このキャンペーンで不自然なのはなんといってもD賞でしょう。日本ダービーキャンペーンなのに目黒記念が対象レースとなっているからです」

「あらホントだわ!気がつかなかった」

麗子ママが驚いた表情を見せた。


JRAホームページ 日本ダービーキャンペーンより
https://www.jra.go.jp/special/spring-challenge2023/

「D賞の賞品は第88回から今年第90回までの優勝馬のマフラータオルです。『D』はダービーの『D』を暗示でしょうね。目黒記念が対象レースなので、第88回、第89回、第90回の目黒記念を調べたところ、ダービー馬が優勝した年がひとつだけありました」

1979/2/18 第88回 目黒記念
サクラショウリ
(1978 第45回 日本ダービー優勝馬 皐月賞3着馬

7-14 ファントムシーフ(皐月賞 3着

「おいおい、サクラの馬といやあ、俺が調べた札幌競馬場のイベントともつながるじゃねえか!」

タコ社長の語気には怒りが含まれていた。なぜさっき言わなかったのかと言いたいのだろう。

「すいませんでした社長。サクラショウリの話が出たとき、もうちょっとでこの話をするところでした・・・」

真一郎はそう言うと舌をペロッと出した。

第88回というのがいいですね。国歌独唱の石井竜也さん。米米CLUBはこの『第88回』目黒記念を示唆しているのかもしれませんね」

マスターの発言にみんなが顔を見合わせてうなずいた。

■ キャンペーンコードの秘密

「さあ、いよいよラストです。Club JRA-Netのキャンペーン、『即PAT新規加入クエスト 日本ダービー×FINAL FANTASY XIVキャンペーン』です」

真一郎の神妙な顔つきに、みんなは凄いサインを発見したのだなとすぐに気がついた。固唾を飲んで真一郎の次の言葉を待っている。

「Club JRA-Netのキャンペーンは、エントリー時にキャンペーンコードを求められることはまずありません。ところがこのファイナルファンタジーとのコラボキャンペーンの場合、キャンペーンコードが求められているのです」

「そのキャンペーンコードがヒントってわけね?」

ギョニ子が我慢できないという顔で先を促した。真一郎はうなずき、スマホ画面をみんなに見せた。

キャンペーンコード 09014


QUEST of 90th JAPANESE DERBY

おお!というどよめきが店内に響き渡った。

09014・・・『第90回』のダービーは『14番』が勝つ。Club JRA-Netに加入していて、かつ、このキャンペーンに応募しようとした競馬ファンだけに与えられたご褒美でしょう!」

真一郎が全部言い終わる前に、みんな立ち上がって拍手をしていた。ブラボーブラボーとタコ社長が叫び、マスターはそっと右手で目尻をぬぐった。涙があふれそうだったのだ。

「記念すべき第90回日本ダービーは、本命14番ファントムシーフ、対抗5番ソールオリエンスでいいですね?」

真一郎の言葉にタコ社長が答えた。

「異論なんかあるもんか!14番→5番の馬単1点で大儲けしようぜ!!」

タコ社長の言葉にみんながうなずき、スナック忘れな草のダービー勝負馬券は、馬単14→5の1点と決まった。

スナック忘れな草 勝負馬券
第90回 日本ダービー
馬単 14→5 (1点勝負)

スナック忘れな草
~2023ダービー・眠れぬ夜~
-完-

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