スナック忘れな草~キングオブGⅡ・2024紫苑S・セントウルS・京成杯AH~
トップ画像引用:うるま屋 カードショップ(改変)
■ サトノダイヤモンド
2024年9月2日(月)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
「第60回でサトノダイヤモンド産駒ってわけか・・」
タコ社長が悔しそうな表情で言った。昨日の新潟記念、シンリョクカのことだ。
「解説プリーズ!」
ギョニ子がいつもの調子で軽く尋ねた。
「お前も少しはここを使え!」
タコ社長が指で自分の頭を指しながら言った。
「いいかい? 結婚50周年の金婚式は有名だが、60周年はダイヤモンド婚だ。区切りの第60回で、サトノダイヤモンド産駒が来たってわけさ」
ふーんとギョニ子が頷く。
「今日子ちゃん、一昨年のプラチナジュビリーを覚えていますか?」
グラスを磨きながら、マスターが優しく尋ねた。
「ええとあれよね。エプソムカップとエリザベス女王杯がセットだったやつ。結局、エリザベス女王の崩御でエリザベス女王杯のほうは取りやめになったけど・・」
「そうそう、それです。エリザベス女王の就任70周年をお祝いするのが、プラチナジュビリーだったわけです」
<〇周年・ジュビリー>
25周年:シルバー・ジュビリー
40周年:ルビー・ジュビリー
50周年:ゴールデン・ジュビリー
60周年:ダイヤモンド・ジュビリー
65周年:サファイア・ジュビリー
70周年:プラチナ・ジュビリー
「そっかー。大谷翔平のいろんな記録が話題になった週だったけど、そこからのダイヤモンドでもよかったのね!」
ギョニ子がポンと手を叩いて言った。真一郎が続く。
「勝ったシンリョクカはもちろん、木幡初也騎手、竹内正洋調教師、由井健太郎オーナー。重賞初勝利の揃い踏みでしたね・・・柴田裕一郎ではなくこっちでした」
みんながなるほどと頷いた。
KBAZNの出演者が示唆するテイエムスパーダからの、重賞初勝利プレゼントホースに目を付けたまではよかったが、もうひとひねり必要だったわけだ。
■ 月見冷やし中華
「さあさあ、これでも食べて少し休んでね」
麗子ママがみんなに冷やし中華を配り始めた。
「そろそろこれも食べ納めだな」
タコ社長が言った。
「あら? 温泉玉子が乗ってるわ! 珍しい!」
そう目を輝かせたのはギョニ子だった。今日の冷やし中華には、錦糸卵の代わりに温泉玉子が使われている。麗子ママが解説する。
「9月といえば月見バーガー月見なんちゃらとか、季節限定物があちこちから出るでしょ? それにならって月見風にしたってわけ」
「なるほどこれはおいしいです!」
真一郎が言った。
「少し食べてから温泉玉子を崩して麺と混ぜると、いい味変になります」
「ありがとうね、しんちゃん。夏と秋のマリアージュってわけよ」
麗子ママの言葉に、ギョニ子が箸を休めて言った。
「そう言えば、今週の秋競馬ってそうよね? 中山競馬と、阪神の代替である中京競馬が始まる秋競馬の開幕週なのに、サマーシリーズはスプリントとマイルの最終戦があるわ」
「終わりと始まりが混在する週っつうわけだな」
タコ社長がそう合いの手を入れると、マスターと麗子ママが目を合わせ、それから大きく顎を引いた。
「んん? さてはマスターとママさん、何かネタがあってこの月見冷やし中華を用意したんじゃねえか?」
タコ社長のさすがの洞察に、マスターはばれましたかと頭を掻き、麗子ママはうふふといらずらっぽく笑った。
■ アリスヴェリテ
「残念ながら自身は走らず、同枠セレシオンのサポートだったアリスヴェリテ。この馬が1勝クラスを勝った3月2日。まさに終わりと始まりが混在する週だったのです」
2024/3/2(土)~3/3(日)
※2024ルーキーズデビュー週
※安田隆行、中野栄治ら調教師7名引退週
2024/3/2(土)
小倉8R 4歳以上 1勝クラス
5-06 アリスヴェリテ 1着
(柴田裕一郎・初勝利)
「ああ、そっかー!」
ギョニ子が膝をパンと叩いて言った。
「なんだかそんな話をした記憶があるわ! 通常は2月末で調教師が引退、3月に騎手がデビューだけど、今年は曜日の関係で一週ダブったのよね?」
マスターが頷く。
「そうなんです。そして、このレアな終わりと始まりが混在した週に、スプリント重賞を勝った馬がいます」
2024/3/2(土)中山11R
第19回(夕刊フジ賞)オーシャンS
8-15 トウシンマカオ
(産経賞)セントウルS
トウシンマカオ
みんながおおという声を挙げた。マスターが続ける。
「夕刊フジ賞に対し、産経賞のセントウルステークス。夕刊フジは来年1月で休刊するという噂が流れていますから、トウシンマカオがフジサンケイグループのスプリント重賞を統制するかもしれません」
■ ダノンスマッシュ
「それにね」
続きは麗子ママが解説した。
「さっき名前が出てきた、レアな年に引退した安田隆行調教師。今年と同じ中京代替のセントウルステークスをあの馬で勝ってるのよ」
2020 第34回 セントウルS
8-16 ダノンスマッシュ(安田隆行)
(同年オーシャンS1着・京阪杯1着歴あり)
2024 セントウルS
トウシンマカオ
(2024オーシャンS1着・2023京阪杯1着)
みんながなるほどと頷いた。マスターが続ける。
「トウシンマカオじゃなければ、このGⅠホースの復活という変化球があるかもしれません」
2024 セントウルS
(ダノン)スコーピオン
(安田隆行→福永祐一)
「2022年のNHKマイルC覇者も、それからは10連敗。福永祐一厩舎に転厩して3戦目。初のスプリント戦で復活なんてことも」
みんながうんうんと頷いた。
スナック忘れな草
セントウルS 注目馬
トウシンマカオ
ダノンスコーピオン
■ 74
10分ほど休憩しようかというときに、入ってきた男がいた。ノーコスプレ、ダンディくろたんだ。
「おやおや、月曜日から熱心ですね」
そう言ってタコ社長の右隣りに座る。マスターがこれまでの見解を簡単に説明する。
「なるほど。トウシンマカオは人気でしょうが、ダノンスコーピオンはそこそこ人気薄で面白そうですね」
「くろたんさんも何かあるんだろ?」
タコ社長がそう水を向けると、くろたんはゆっくりと響のロックを一口味わってから、おもむろに上着のポケットから果物を出して、カウンターの上に置いた。みずみずしいおいしそうな梨だった。
「ずばりキーナンバーは『74』・・・セントウルステークスは、マスター命名の筆おろしホース、テイエムスパーダが出てくれば面白いですよ。これをみてください」
<セントウルS・統制サイン>
前年優勝馬出走なら、74隣が馬券対象 8回連続
2005
5 ゴールデンキャスト(連覇)
+74 3着 2 マルカキセキ
2006
2 ゴールデンキャスト
ー74 1着 18 シーイズトウショウ
2009
6 カノヤザクラ
+74 1着 16 アルティマトゥーレ
2011
14 ダッシャーゴーゴー
+74 2着 13 ラッキーナイン
2012
10 エイシンヴァーゴウ
+74 1着 4 エピセアローム
2014
15 ハクサンムーン
ー74 1着 1 リトルゲルダ
2015
2 リトルゲルダ
ー74 3着 8 バーバラ
2018
14 ファインニードル
+74 3着 13 グレイトチャーター
2023
1着 11 テイエムスパーダ
2024
テイエムスパーダ 74隣
「セントウルステークスは2005年以降、前年優勝馬が出てきたら74隣が8回連続馬券になっています。今年は前年単勝万馬券の穴を空けた、テイエムスパーダが登録していますね」
みんながおおという声を挙げた。
「よくそんなの見つけるわね~」
ギョニ子が感心したように言った。
「まあたいしたことはないですよ。長年競馬をやっていると、数字のほうから私に囁きかけてくるのです」
くろたんはそう言うと、響の残りを一気にあおり、右手の甲で口元をぬぐって夜の街へと消えて言った。
「今日は最後までダンディでしたね・・」
真一郎がくろたんがいた席を見ながら言った。
■ バランスオブゲーム
10分間の休憩後、ギョニ子が何気ない感じでマスターに尋ねた。
「マスター。くろたんさんが解析してくれたスプリンターズステークスのCM。セントライト記念、京王杯2歳ステークス。そして毎日王冠だったわよね?」
マスターが頷く。
「シンプルにさあ、この3つのレースを全部勝った馬っているのかしら?」
それは面白い視点ですねと、マスターはさっそくパソコンを走らせた。数分後、惜しいですねと言いながらみんなにパソコン画面を見せた。
「3つ全部勝った馬はいませんでしたが、セントライト記念と毎日王冠のふたつを勝った馬なら、6頭が該当します」
<セントライト記念・毎日王冠制覇>
ミツハタ
(1951・1951)
ヒシマサル
(1958・1958)
ウメノチカラ
(1964・1965)
クリシバ
(1970・1970)
プレストウコウ
(1977・1978)
バランスオブゲーム
(2002・2003)
※( )の西暦はセントライト記念・毎日王冠
みんながなるほどと声を挙げた。マスターが解説する。
「重賞の日程が現在とは違いますから、毎日王冠、セントライト記念の順で制した馬もいますが、とにかく両方制した馬となるとこの6頭。6頭の中に、2歳ステークスも勝った馬が2頭います」
ウメノチカラ
1963 朝日杯3歳S(現:朝日杯FS)
バランスオブゲーム
2001 新潟2歳S
「一頭じゃないのが惜しいけど、セントライト記念と毎日王冠と2歳ステークス。3つ全部勝ったこの2頭がサイン馬なんでしょうか?」
真一郎が訊いた。マスターは、固く閉じていた目を見開いて言った。
「新潟記念の結果を踏まえると、バランスオブゲームがサイン馬の可能性が高いですね」
みんながマスターに注目する。
「この馬、ご存じのようにGⅡを6勝という最多勝記録を持っています。GⅢである新潟2歳ステークスは、同馬が勝った唯一のGⅡ以外の重賞勝利なのですが、このときの騎手をみてください!」
バランスオブゲーム
2001 新潟2歳S(木幡初広)
みんながおおという声を挙げた。
「なんてこったい!!」
タコ社長が大きな声を出した。
「昨日重賞初勝利を挙げた木幡初也のお父さん、木幡初広だったのかい!?」
ギョニ子も続く。
「バランスオブゲームっていったらカッチーでしょ? カッチー以外でも重賞勝ってたんだ!」
「そうなりますね・・」
マスターが深く顎を引いて言った。
「田中勝春でGⅡを6勝。木幡初広でGⅢを1勝。合計7勝というわけです」
「新潟記念の前に、木幡初広のことに気づいていたら・・・」
真一郎が言った。みんなが眉根を寄せて大きく頷く。
勝負事にタラレバはないのだが、アリスヴェリテの6枠にあまりにも注目しすぎた。スプリンターズステークスのCMをもっと深く分析していれば、バランスオブゲームから木幡初広を経て、木幡初也が乗るシンリョクカという着地は十分にあり得た。
■ サクラ・ウメ・バラ
暗くなりそうな雰囲気を、麗子ママの明るい声が断ち切った。
「セントライト、毎日王冠、そして2歳ステークス。3つのレースを勝った2頭だけの馬が、ウメノチカラとバランスオブゲーム。そして、CMの最後にはメモリアルヒーローのサクラバクシンオーでしょ? ちょっと強引だけど、みんな花の名前じゃない?」
(ウメ)ノチカラ
(バラ)ンスオブゲーム
(サクラ)バクシンオー
みんながなるほどと声を挙げた。今週、花の名前が絡んでくるのだろうか。さっそく、3重賞から花関連を探すことにした。
セントウルS
テンハッピー(ローズ)
麗子ママが言った。
「大穴を空けた馬の休み明け。あまり積極的には買いたくないけど、バランスオブゲームの『バラ』があるなら無視できないわね」
次はギョニ子だ。京成杯オータムハンデにバラがいるという。
京成杯オータムハンデ
オーキッドロマンス
(バラの品種名)
みんながなるほどと声を挙げた。よほど花に詳しい人でないと、馬名からすぐにバラ関連だとは気づきにくいだろう。
「しかもこの馬!」
ギョニ子が言った。
「CMのコラソンビートの京王杯2歳ステークスに出てるのよ!」
2023 京王杯2歳S
1着:6-07 コラソンビート
2着:2-02 ロジリオン
3着:3-03 オーキッドロマンス
みんながなるほどと声を挙げた。
最後にタコ社長が、紫苑ステークスから一頭みつけた。こちらはかなりの穴である。
紫苑ステークス
(バランス)ダンサー
「へえー!そんな馬が登録してあったんですね!」
真一郎が言った。タコ社長がニヤリと笑った答える。
「おうよ。しかもまんまバランスオブゲームの『バランス』がはいってらあ。想定騎手は田辺裕信。夏競馬ではお世話になったし、もう一丁を期待しようじゃねえか!」
みんながなるほどと声を挙げた。ラジオNIKKEI賞のオフトレイル。BSN賞のブレイクフォース。あれがなかったら夏競馬はどうなっていたことか。
マスターがポンと手を叩いてまとめる。
「よし! 月曜の段階でこれだけ出てくれば十分でしょう。シンリョクカのことがありますから、あまりこれらの馬に決めつけず、新しいネタには柔軟に対応しましょう!」
みんながうんうんと頷き、3重賞の注目馬が決まった。
スナック忘れな草
3重賞 注目馬
紫苑S
バランスダンサー
セントウルS
トウシンマカオ
ダノンスコーピオン
テンハッピーローズ
京成杯AH
オーキッドロマンス
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?