住んでる賃貸が事故物件(物理)だった話③

さて、翌日は在宅勤務だった。

朝と夜にシャワーを浴びる生活をしていたが、シャワーは保留。ベタつく髪が気になるが見る人はいないので我慢する。飲み物はペットボトル飲料。
問題のトイレだが、弊社の在宅勤務の条件として「すぐに連絡を取れる状況にあること。連絡が取れないと怠慢、欠勤と見なす」とあるので、通常通り席を立っていたらタイミングによっては欠勤になってしまう。それは避けたい。そのため、勤務前にコンビニで済ませ、昼は外食がてらお店のものを借り、それ以外は我慢することにした。
この期間ほど出勤したいと思ったことは無かった。女性は共感してくれると思うが、ナプキンを変えたいタイミングで変えられないことは辛いよね、ほんとに。

その日の在宅勤務をどうにか終えたが、ここであたしはどーーーしても髪を洗いたくて仕方なくなってしまい、100円シャワーデビューをすることにした。衛生面など気になることも多々あったが行く前からグダグダ言っても仕方ない。いいやッ!限界だ行くね!今だッ!

〜3分 100円〜
それは、乙女の最低限のケアの値段と時間である。

中は狭いが一応鏡などもついていたので櫛を持っていけばシャンプー後に髪を梳かす位は出来た。ドライヤーやコンセントの設備は無いので、結局家に着くまでは濡れたままなのだが。
髪を洗って顔と体を洗って3分間。
あとの女性的な色々はいつか水が使えるまで諦めることにした。夏じゃなくて良かった。長袖に厚めのタイツさえ履いてしまえば何も見えない。ついでに見せる人もいない。SABONのボディスクラブをしたいなんて、そんな上級国民な願いは数日前に置いてきた。
とりあえず髪や体がスッキリする分マシなのでしばらくお世話になることに決めた。

明くる日はいよいよ工事だった。
どうしても勝手に家に人が入られるのが嫌だったので彼氏に家にいてもらうことにした。これで少しは抵抗感がなくなった。
とうとう床が無くなるのか…と仕事中ソワソワしながら報告を待つ。

夕方頃「今回は如月さん家から水漏れしてないかの点検のみ。結果として、上と下の階を繋ぐ排水管の劣化が原因」「排水管工事のために床が無くなるのは土曜日の朝8時」「それまで断水継続」との連絡が入った。
断水継続。お前それまじか。ていうか工事の日程また勝手に決めやがって。どうせなら今日全て済ませてしまえよ。

今日が水曜。工事は土曜。水、水が欲しい。今のあたしに水をくれる人がいたら「ショーシャンクの空に」のあの有名なシーンと同じポーズが出来ると思う。水くれ。
仕方が無いのでこの日も、駅のトイレを借り、コインシャワーを浴び、南アルプスの天然水を買って帰路に着いたのだった。

ー・・・数分後、外階段であたしは2階のおばさんと対峙していた。
ちょっとあなた、と引き止めてきた人は
「あなたの所から水漏れしてるのよ」ともううんざりするほど聞いたセリフを目の前で繰り返していた。
「うちではなく、排水管の劣化と聞きましたが」
「あなた、今月の頭にも水漏れしてて他の業者に見てもらったあと、管理会社に直してもらったのよね」
「そうですね、その時に台所は問題なかったです」
「でも、あなたのところなんですって!」

あー、イライラする。 何だこのババア。
昔に比べれば随分沸点も高くなってるとはいえ、言いたいことは言わなきゃ気が済まない。どうしてそんなにすぐ人と喧嘩しちゃうの!?どうして仲良く出来ないの、と幼少から何度も言われた言葉が脳内を過ったが、言葉が出るのが先だった。
「じゃぁ、うちが嘘ついてると言いたいんですかね。あたしの過失であなたにご迷惑かけてるとでも?とんでもない、こちらだって急な工事や断水で迷惑してるんです。寒いんでもういいですか」
出てきた声のトーンに自分でも驚いたが、ババアは目を丸くして驚いていた。
「やだ、違うのよ!お互い大変よねって話!」
「・・・ん?」

つまり、こうだった。
土曜は夜分に何度も押しかけて申し訳なかった。こちらも動転していたので、つい。ごめんね。他の業者に見てもらって問題なかったのにこんな水漏れ困るわよね。あと、あなたが今月頭に修理してもらったって言ってた洗面台の水漏れ、管理会社の人は知らないって言ってたわよ、ほんとに大丈夫かしら。私ここに長く住んでるけど、オーナーが変わってから対応が酷くて酷くて、今回の件だってきっちり迷惑料やコインランドリー代は貰った方がいいわよ。今日の工事だって勝手に日程決められてどれだけ迷惑なのよ・・・ということだった。
なんだろうか、このおば様に対するイメージが180度変わった。あたしは先程喧嘩腰になったことを謝罪し、迷惑よねって話に同意し、土曜夜の騒動を許し、ついでに心の中でババアと呼んでいたのをおば様に改め、和解した。
話せばわかるのかもしれない、何事も。
そして、早とちりで喧嘩してしまう自分の性格を悔い改めることを神に誓った。

木、金、と代わり映えのしない断水生活だったので割愛。

土曜、せっかくの休日。
普段の休日だったらやっと起き出す時間、家に轟音が響いていた。

to be continue…

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