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神宮外苑再開発の見直しを求めるアクションの継続は無駄ではないらしい?

事業者が提供する情報が乏しいので、東京都の公表資料を読みまくっているのですが、なかなか興味深いので、未読の方は、都の資料をチェックしてみることもおすすめします。

一つ挙げると、令和5年(2023年)4月6日、事業者宛に出された「神宮外苑地区におけるまちづくりに関する再要請について」があります。

最初に要請が出されたのは、令和4年(2022年)5月26日。小池百合子都知事名義で事業者への要請がありました。要請書のポイントは4つ。対する事業者側から報告が出されたのは、令和4年(2022年)8月と、令和5年(2023年)2月17日。2月の事業者報告で具体的な記述がある部分を取り出してみます。(番号の太字は、都からの要請)


1.スポーツ施設を軸にした環境の整備、みどりの充実とオープンスペースの確保。にぎわいの創出、歴史や地区特性を生かした景観形成、防災性の向上

[事業者]
・野球場とラグビー場の間には、多目的に利用でき、広域避難場所としての防災性向上にも寄与する約1.5haの中央広場を整備する。
・聖徳記念絵画館前には、創建時の芝生姿を基調とした約2.5haの憩いの場を整備。
・中央広場にマンホールトイレや非常用電源を確保。事務所や宿泊施設にも帰宅困難者滞在機能を持たせる。

2.外苑創建の歴史を踏まえた、幅広い都民参画への取り組み

[事業者]
・地区を南北に貫く「みどりの散策路」(2028年以降整備予定)を整備
・タウンマネジメント団体を組成し、市民参加型の植樹イベントや市民からの樹木の寄贈を募る献木などの施策を実施
・渋沢栄一が初代会頭を務めた東京商工会議所の協力を得てのスポーツを核とした推進(←何をやるかは不明)
・本プロジェクトで伐採した樹木は、環境に配慮した利活用を積極的に検討

3.神宮外苑の自然環境の質の保全。とくに4列のイチョウ並木の保全には万全を期すこと

[事業者]
・4列のイチョウ並木はすべて保全。イチョウ並木から記念絵画館をのぞむビスタ景を構成に残す
・イチョウ並木の根系調査は、プロジェクトサイト等を通じて公表
・軟式野球場の大銀杏をはじめ、保全・移植対象樹木を増やすことを検討

*樹木保全の専門家として「樹木医等の専門家」とありますが、生態系の専門家のほうが大事なのでは?とは思います。

4.整備計画、都民参加の取り組みなどの詳細な情報をわかりやすく発信すること

[事業者]
・整備計画の詳細や市民参画の取り組みは、プロジェクトサイトで順次公開
・2023年春にプロジェクトサイトのリニューアルを予定(←で、アレ?という気も)

5.省エネや再生可能エネルギーの積極的な活用による「ゼロエミッション東京」の実現

[事業者]
・EPR20%、PAL削減割合10%、自然エネルギーの積極的利用等、温室効果ガスの削減に努める

6.子どもがスポーツや緑に親しめる機会の創出、子ども目線の施設整備

[事業者]
・プロアスリートとの交流やパラスポーツ体験など、東京2020大会のレガシーを生かした取り組み
・複合棟Bの室内競技場を整備し、多様なスポーツ交流を図る。合宿・キャンプ利用、プロ選手の試合前やオフシーズの利用、部活動や大会など、多様なイベント利用を可能にする(←盛り込みすぎでは?)
・ラグビー場は全天候型施設として、様々なスポーツやイベントで多目的な利用を図る


と、事業者は報告したのですが、今年4月6日に再要請が出されるわけです。今度は都知事の名前ではなく、東京都市整備局長の名前で。その内容で気になるポイントを挙げてみましょう。

・昨年8月、および2月に報告を受けたが、市民参加型の植樹イベントや献木による植樹などの予定について、具体的な取り組み内容や実施時期が示されていない

・プロジェクトサイトの情報発信が不十分。未だ都民の理解や共感が得られていない。一部、海外メディアなどにおおいても、イチョウ並木が伐採されるなどの誤解が生じている。

で、ここが読みどころと思うので、長めに書き写します。

「何よりも、神宮外苑地区においてまちづくりを進める意義や理念が多くの都民や共感を得られていないことが大きな問題だと認識しております(中略)都の要請に対し、早急に具体的かつ効果的な対応策を示すとともに、事業者として主体的に実施するように改めて要請いたします」

事業者に責任転嫁していますが、プロジェクト立案の経緯からすれば、都にも責任あるでしょ、と思うのですけどね。新聞の全面広告やネット広告もこの流れで決まったんでしょうかね。情報発信になっていないし、理解を深めることにも役立っていない戦略と思います。

今後、まだ行政の手続きはあるのですね。2月17日に開発事業の施行認可は受けていますが、「権利変換計画の認可手続きも控えている」とあります。所有者の法的区分の転換のようなので、事業者と都の間で終わってしまいそうな認可ではありますが。

ただ、再要請書に「今後、事業を進めるためには、都民の理解と共感を得ることが極めて重要です」とあるので、何らかのアクションを続けることは、無駄ではないようです。

仕事に関するもの、仕事に関係ないものあれこれ思いついたことを書いています。フリーランスとして働く厳しさが増すなかでの悩みも。毎日の積み重ねと言うけれど、積み重ねより継続することの大切さとすぐに忘れる自分のポンコツっぷりを痛感する日々です。