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ビリー・ザ・キッド、真実の生涯―第11章

ジェシー・エヴァンズ、再び—キッドとジェシー—かつての友は今や仇敵—回想—流血なき邂逅—トム・オフォラード

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キッドと無謀な仲間たちは今やリンカンで無法者となったが、彼らはこっそりと広場に出現して、いつもマクスウィーンの店を安全な隠れ家としていた。法律は執行されず、しばしば彼らは白昼堂々と広場に入り、敵をもろともせず、友人たちからもてなしを受けた。

しばらくの間リンカン郡には保安官がいなかった。保安官の職務を執行する勇気を持つ者がほとんどいなかった。最終的にジョージ・W・ぺピンが一時的に職務を引き受けることに同意した。今度は彼が数人の代理を任命した。彼の職務期間中、強盗、殺人、放火、そして、あらゆる犯罪が目白押しであり、狂乱の真っただ中であった。キッドは無為に過ごしていたわけではなかった。 仲間たちの利益のために勇敢な心、冷静な判断力、腕前、もしくは大胆不敵な精神が必要な時はいつでもビリーは先陣に立った。

サン・パトリシオは、リンカンから山を抜ける道を通って7マイル(約11キロメートル)離れたルイドソ川沿いにあるメキシコの小さな市場であり、キッドと仲間たちにとってお気に入りの場所であった。そこにいた多くのメキシコ人たちは、キッドに友好的であり、キッドの自由を脅かしそうな動きがあれば何でも伝えてくれた。

6月のある日の昼、キッドの忠実な盟友であるホセ・ミゲル・セディロは、ジェシー・エヴァンズが一団を伴って下流に出没したという情報をもたらした。おそらくチザムとマクスウィーンの馬の群れを盗むつもりだろう。それはキッドと一団が委ねられた馬の群れであった。

朝食を待つことなく、キッドは5人の男たちを連れて出発した。その時キッドのそばにいたのはその5人で全員であった。チャーリー・ボウディー、ヘンリー ・ブラウン、J・G・スカーロック、ジョン・ミドルトン、そして、トム・Oオフォラードである。最後の者は若いテキサス人であり、勇敢で無節操であり、最初に会った時から文字通り死ぬまでキッドと運命をともにすることになる。この時は彼は数日間、一団に加わっただけであった。

ブラウンを伴ってキッドはルイドソ川の西側にある稜線に登った。そして、稜線を伝って馬を預けておいたブルーアー牧場に至った。キッドはボウディーに他の3人とともに西岸 に沿って上流に向かうように指示した。

馬に乗って3マイル(約4.8キロメートル)ほど進んだ後、キッドはボウディーと3人が進んだ方向から銃声が響くのを聞いた。銃声は散発的であり、どうやら小競り合いが続いているようであった。キッドは馬を下り、ブラウンを左側から丘を回るように送り込んだ。その一方でキッド自身は葦毛の馬の手綱を取って川に至る急勾配を降り、銃声が聞こえた方向に至る道に進んだ。 非常に苦労してキッドは山の麓に到達して、川を渡って、それから東側の急勾配を何とかよじ登った。その時、一騎の馬蹄の響きがキッドの注意を捉えた。その瞬間、キッドはキッドは、丘の狭間の向こう側でブラウンが狂ったように北に向かって馬を走らせているのを見た。それと同時に火器の激しい音がキッドの耳を襲った。キッドは馬に乗って、巧みな馬術で少なくとも1マイル(約1.6キロメートル)を踏破した。それほど速くなかったが、キッドがどのように踏破したのかは驚異である。コヨーテでさえ這って歩けないような岩の割れ目をすり抜けてごつごつした岩壁を越える。藪、サボテン、そして、ザカトン[訳注:・メキシコの乾燥地帯産の数種のイネ科植物]の間を通ってキッドは曲がりくねった道をひたすら進む。何とか尾根を伝った後、キッドの前にさらに高台が姿を現した。その間には半マイル(約0.8キロメートル)にわたって峡谷が続く。向こう側の高台の麓に至る前に戦いの様相が見えてきた。8人の男たちを伴ったジェシーがボウディーの一団を攻撃していた。岩の間で、そして、丘の麓で彼らは戦っていた。混戦のせいでキッドは敵と味方をうまく判別できなかった。しかし、キッドは敵に捕まったボウディーを見つけた。敵の中にはジェシーの姿もあった。キッドはよく知られた雄叫びを上げて友人を励ますと、峡谷にまっしぐらに向かった。

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