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うちなーぐち(おきなわ語)で「深呼吸」は何と言うか?#18

私の知人、うちなーぐち会会長の源河朝盛さん(1940年北谷生まれ)から、あちらこちらの病院を回ってきたが、医療従事者は「深呼吸して下さい」のうちなーぐちを、みんな「大息(うふいーち)しみそーれー(して下さいね)」と言っていると電話口で言われました。

「大息(うふいーち)」とは「ため息」の事であり、深呼吸ではないのだけれども、深呼吸という、うちなーぐちは何と言うかなと質問されました。

確かに「大息(うふいーち)」は「ため息」であり深呼吸に「大息」を使うのは違和感があります。

とにかく、うちなーぐちの基本は『沖縄語辞典』(国立国語研究所編 1963)ですので、調べると「大息」は「ため息」としか書いていません。

そうだよなと思いながら『医学沖縄語辞典』(稲福盛輝 1992)を調べるとそのP40に「うフいーチ」とあり「深呼吸」とあるではありませんか!

はい、その『医学沖縄語辞典』(稲福盛輝 1992)の表紙とP40の二枚の写真がこれです。

『沖縄語辞典』(国立国語研究所編 1963)のメインの編集者は「島袋盛敏」さんという方で1890年生まれです。

『医学沖縄語辞典』(稲福盛輝 1992)の著者である「稲福盛輝」さんは1922年生まれだという事が分かりました。

稲福盛輝さんは1922年生まれなので島袋盛敏さんよりは32歳も年下です。

けれども1922年は大正11年なので、稲福さんはうちなーぐちの母語話者だと言えますし、首里で稲福医院として開業なされていたお医者さんなので、稲福さんの著書『医学沖縄語辞典』はそれなりに説得力がある文献だと言えます。

ということを源河さんに伝えると

「あんでぃちん、何(ぬー)がな肝(ちむ)ふがんさー(そうであっても何か納得できないな)」

と言われました。

それでさらに「Okinawan-English Wordbook」(崎原貢 2006 ハワイ大学) を調べるとそのP189に「ufuiichi」があり「A Deep breath(深呼吸)」とあり、続けて「a sigh(ため息)」とも書いてあるではありませんか!

その「Okinawan-English Wordbook」(崎原貢 2006 ハワイ大学) の表紙とP189の二枚の写真がこれです。

この「Okinawan-English Wordbook」の著者である崎原貢さんは1928年、つまり昭和3年那覇生まれの方なので、うちなーぐちの母語話者と言える方です。

「Okinawan-English Wordbook」も十分説得力のある那覇言葉の文献です。

それも源河さんに伝えると

「あんでぃちん、何(ぬー)がな肝(ちむ)ふがんさー(そうであっても何か納得できないな)」

とまた、言われました(笑)

そこで私は

「大人(たーりー。お父さんという意味だが、親ぐらい年が離れた方へも使える)さい、くぬ稲福さんや1922年生まり、崎原貢さんや1928年生まり、御胴(うんじゅ。貴方)やかん、じょーい、しーじゃやいびーんどー(源河さんよりも相当年は上ですよ)」

と伝えたら

「あんしぇー”大息”や深呼吸ん、ため息ん、二ち肝合(ちむえー)ぬあさやー(それじゃあ”大息(うふいーち)”は深呼吸と、ため息の二つの意味があるんだね)」

と分かったような事を言いますが続けて

「やしがバイロンさん、ため息や吐ちゅるばーる、息や吸らんどーやー(でもねバイロンさん、ため息は息を吐くのであって、息は吸わないよ)」

とそれに対して私は反論したのですが、長くなるのでもうここまで(笑)

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