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【現役IR担当役員コラム : IR/SRの現場から】市場急変時におけるIR/SR担当者の対応について



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コラム:市場急変時におけるIR/SR担当者の対応について

こんにちは!Figurout外部アドバイザー(東証プライム企業IR管掌役員)のSです。

前回に引き続き、「IR/SRの現場から」と題して寄稿させていただきます。
今回は今月初旬に世界を震撼させた同時株安時におけるIR/SR担当者の対応について考えてみたいと思います。

7月末の日銀金融政策決定会合における政策金利の引き上げを引き金に、円高が急速に進行するとともに日経平均株価が乱高下し、8/5の日経平均は過去最大の4,451円の下落という、まさに衝撃的かつ未曽有な事態に発展するに至りました。

株価下落は日本にとどまらず、一時的な米国経済の停滞感観測も相まって、世界的な株安を演出し、多くのIR/SR担当者は肝を冷やしたものと思われます。

かくいう私も、所属会社の株価が大幅に下落し、特に8/5と8/6の大幅下落局面においては株価モニターを見るのも怖くなるくらいの大幅な下落で、心臓が止まりそうな気分に陥りました。

さすがにこのような事態においては、「なんでウチの株価が下がっているんだ??」と言ってくる社内の役員をはじめとするメンバーはいないでしょうし、証券アナリストからの連絡も、3月決算企業を中心にサイレント期間である企業も多かったこともあり、さほど顕著にはなかったものと思われます。
足元は各社の決算発表や、一時的な狼狽売りによる株安見直しの流れから、大幅下落前までの水準には戻っていないものの、日経平均をはじめ、各国の株式市場は一応の落ち着きを取り戻しているように思えます。

今回は数日間で終わった株式市場の大混乱ですが、このような混乱時において、IR/SR担当者ができることは何か?について考えてみたいと思います。

一言で言ってしまうと、「冷静に市場の動向を見る」ということに尽きてしまう気もします。

しかし、ただ静観しているだけではさすがにIR/SR担当者としては力不足な気がします。

私自身が考えたことは、①自社株買いをはじめとする、株価下落による現行株価に対する自社の考えをアナウンスできる施策がないか?、②今後想定しているコーポレートアクションに対する影響度はどれほどのものか?、③ベンチャー投資先のIPO環境に変化が生じるか?、という点でした。

月初の株価急落局面直後から、複数の企業が自社株買いの発表を行っています。

現行株価が割安であることのアナウンスメント効果を狙ったものや、従来から検討していた資本政策の実現のための好機ととらえて発表されるケースなど様々ですが、市場混乱タイミングにおける市場へのプッシュ型の施策としては王道であり、もっとも効果的と考えられます。

このタイミングで自社株買いの発表を行うことのできる企業は、平時から資本政策を慎重に検討を重ねていたらこそ、市場急変期のタイミングで機動的なコーポレートアクションの発表に至ったものと考えられ、経営陣やIR/SR担当者が極めて優秀だなと感じました。

また、POをはじめ、市場からの資金調達を検討している会社や、M&Aなどを検討している会社のような、重要なコーポレートアクションを予定している会社にとっては、今回のような市場急変は肝を冷やすものだったと思われます。

もしかしたら、検討していたコーポレートアクションを延期せざるをえなくなった会社もあるかもしれません。

このような市場急変期においては、予定しているコーポレートアクションへの影響についても冷静に分析する必要があり、必要に応じて経営陣に対してその分析についてレポートする必要があると思います。

最後にベンチャー企業におけるIPO環境の変化についてです。

私自身、自社のCVC責任者も兼務していることから、今回の市場急変が、ベンチャー企業のIPO環境に悪影響を及ぼさないかが大きな気がかりとなりました。

現状、市場急変によってIPO延期となったニュースはなく、上場承認を得た企業の上場は今後も続く見込みのようですが、見えないところで影響がでている可能性もあると考えられます。

このようなタイミングにおいては、主幹事証券をはじめとする、日ごろから懇意にしている証券会社担当者と連携し、情報収集に努める必要があると思っています。

今回は市場急変時におけるIR/SR担当者の対応について考えてみました。

まずは冷静になる。
これが第一だと思います。

そして次に、冷静に自社が置かれている環境をベースに客観的に市場を分析し、やるべきことを見定めてスピード感をもって経営陣に報告し、必要な施策を提言する。

このようなタイミングだからこそ、鋭い分析力と、日ごろからの経営陣との関係性がモノをいうと思われます。

平時から危機時を想定した対応を考える。

IR/SRに限らず、取りざたされている地震などの自然災害対応と同じなのかもしれません。


まとめ

いかがでしたか?
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