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【対談連載】第7回 吉田栄作さん 『あえてゆっくりすることが大事なときもある』

【連載】大山峻護のポジティブ対談 
コロナ禍を乗り越えるためのメッセージ

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第7回 吉田栄作さん
『あえてゆっくりすることが大事なときもある』

この対談は『ビジネスエリートがやっているファイトネス』の著者・大山峻護が各界で元気に輝きを放ち活躍しているこれはと思う人達をゲストに迎え、コロナ禍の今だからこそ必要なポジティブメソッドをみなさんにお届けするもの。第7回は一昨年(2019年)デビュー30周年を迎えた吉田栄作さん。バランスの悪いときは立ち止まる。自分を見つめ直し、そして隣の人に優しく……。そんなお話です。

■コロナですべてがストップ

大山)デビュー30週年記念コンサート前の忙しい時期にありがとうございます。
この企画はコロナを乗り越えるためのメッセージを多くの方にお伝えしようというものですが、(吉田)栄作さんはもう一年以上も続くこの時期をどのように過ごされてきたのでしょうか?

吉田)一年前の第1回の緊急事態宣言で、撮影やらなにやらいろいろなことがストップしました。今回の歌手デビュー30周年コンサートも、30周年の締めくくりとして実は去年の6月にやる予定のものでした。それがコロナで1年延期。その前から30周年の活動をしていたので、もう2年ですか……。終わらない30周年になってしまいました(笑)

大山)今もそうですが、第一回の緊急事態宣言のときは時は「この先どうなるんだろう」という不安も大きかったと思のですが、どうでしたか?

吉田)もちろん不安もありましたが、どこかで「やっと休める」みたいなところもありましたね。テレビドラマもストップするし、この夏公開される「全裸監督」のシーズン2の撮影も中断、さらにツアーも延期。普通は落ち込むところでしょうが、でもどこかでホッとした自分がいたんですね。やっと休めると。ちょっと不謹慎かなとは思うものの、正直なところはそんな感じでした。
そういう意味で言うとちょっと感覚がずれているというか、独特なのかもしれませんね。
50歳になって自分の事務所を立ち上げて独立するといった人生のギャンブルのようなことを好むところもありますし、そこら辺りが人と違うというか、緊急事態宣言が出ても「あえてゆっくりすることが大事なときもあるよそりゃ」みたいに普通に思えてしまうんですよね。

大山)ブレない自分があるということかもしれませんね。

■自分をたたえながらゆっくり過ごす

吉田)(コロナの感染が拡大し)世の中が経済的にも精神的にもどんどん逼迫する中で、コロナで亡くなる人もいれば、自ら命を立つ人もいたと思います。今みたいに休業要請が出たり、仕事をなくしたりで、明日を生きるお金がないと苦しんでいる人がたくさんいることも理解しています。
でも、コンビニのレジで大声を上げる人がいたり、横断歩道で揉めていたりなど、世の中に怒号が飛び交っているのを見ると、日本人の、人に優しくしたり、隣の人をいたわったりといった、優しさをシェアできる民族的な良さが失われていくようで、残念な気持ちになったのを覚えています。

大山)先が見えない不安で余裕もなくなるというか……。

吉田)ただ、第一回の緊急事態宣言ではすごくいい天気が続いたじゃないですか。そんな中、何をするでもなく空を見ていると、そこにはつきなみですが青い空が広がり、白い雲が流れていて、そして、その空の下で不安な気持ちを抱えている人はいっぱいいるんだろうな、なんて考えていると、その人たちへの応援歌かみたいものがふっと降りてきたんですね。

いままでずっと頑張ってきたあなたなんだから、一生懸命を(一度)忘れて、これまでの人生をたたえながら、ゆるめにすごうそうよ。それが今の幸せなんじゃないかな?

みたいなことをリモートセッションとかで歌ったら、どんどん仲間が集ってきて、1曲できてしまった。それをプロデューサーが「CDにしようよ」と言ってくれてたのが『One Fine Day』という曲なんです。

大山)そうなんですね。自分をたたえながらゆっくり過ごす。いいですね。

吉田)格闘技なんか特にそうだと思うんですが、俳優でもそうですし、何の仕事でもそうで、闘わなければならないシチュエーションがある。そこからいったん離れて休む。そんな時間も大事なことだと思うんです。

大山)そうですね。でも栄作さんは全力で生きてきたからそう言えるところがあるんでしょうか。

■夢は全部叶えてやる

吉田)16歳から役者になろうと走ってきて35年。もういいかなと思うところも確かにあります。今は、応援してくれる人のために頑張っている。そんところがあるのかもしれません。

大山)いつからそう思えるようになったんでしょうか?

吉田)そうですね。いつかな? これはよく話すことなんですが、僕は神奈川県の秦野の出身なんです。で、16歳の時、高校のバスケ部が休みの日に小田急線に乗って新宿に彼女と遊びに行ったんですね。
彼女がいろいろと調べてくれて、新宿センタービルの上におしゃれな喫茶店があった。そこでコーヒーを飲みながらグランドレベルを何気なく見ていたら、人が混み合った感じで忙しくスクランブル交差点を行き交っているわけです。もちろん50階以上から見下ろしているので、人は小さく見えるし、車もものすごく小さい。
「あの人たちには仕事や学校といった日常の生活があって、家族がいて、恋人もいて。でもここから見たらあんなに小さく見える。俺もあそこに降りていったらあれか」
そんなふうに思った時、人生は一回。いつか死ぬんだったら、何かを残せる仕事をしたいとなった。
そう感じたことが、自分の中ではなぜか芸能界に直結していて、「俳優になりたい」と帰りの電車で思い、次の日に部活やめたんです。それで養成所に入って、バンドに入って。それが僕のスタートでした。

大山)行動力がすごいですね。

吉田)若いとエネルギーが強い。喜怒哀楽の振り幅が大きい。僕は浜田省吾さんのファンなんですが、お金で苦労した家庭で育ったので「お金で俺のことをバカにしたやつには足元にビッグマネーを叩きつけてやる」と、浜田省吾さんの『MONEY』の主人公のような気持ちが自分の中にありました。恨みに対しては力で返すみたいな。

大山)「やってやるよ!」というエネルギーですね。

吉田)ええ、夢は全部叶えてやるぜというね。16歳でそう決心し、22歳の時になりたい自分になれた。それで一旦休業。26歳の時にアメリカへ行くわけです。

■人気と実力のバランスが取れていない……

大山)でも絶頂の時に休業ですよね。よくそこで決断できましたね。

吉田)そこで気づく自分があったんです。浜田省吾さんの歌に例えて言うなら「純白のメルセデス。プール付きのマンション。最高の女とベッドでドンペリニヨン」を手に入れたわけです。そこに行けば何も悩むことがない自分がいるはず。なのにどこか寂しいんですよね。それを手に入れると自分を孤独に追いやってしまう。まるで悪夢のようにね。
今思えば、お金と自分の実力のバランスが取れていなかったというか、自分と周りが求める虚像のギャップがすごかったんですね。

大山)みんなが欲しい物をすべて手に入れた時に孤独が襲ってくるって、トップを取った人しかなかなかわからないというか……。

吉田)言ってみれば、何も遮るものがない山の頂で一人突風のような向かい風に立ち向かっているという感じです。つまり、そこに居続けることは、その山のてっぺんで風にさらされ続けることなんですよ。で、22歳の僕は根が意気地なしなんで、その山を下りようと思ったわけです。
ただ一気に飛び下りると死んじゃいますから下りるときは一歩一歩下りる。一気に登ってきた道筋を本当に一歩一歩(確かめながら)下りていって、次は頂上から見えた違う山を登ろうと思ったんです。今度は段を飛ばさず、風にも煽られない、バランスのいい山を目指そうと。

大山)思い切りのよいのは子どものころからだったんですか?

吉田)いやいや、さっきも言ったように本当にビビリで、意気地なしな少年でした。それはいまでも思っています。でも、行くときは行く、勝負のときだけはキレることができる。そういうところは持っていたように思います。

大山)そんな一面もあるんですね。意外ですね。

吉田)ビビリだから事前の準備もするし、トレーニングをして自分の体を鍛えもするし……。

大山)なんか感覚がアスリートみたいですね。

吉田)もともと小学校からバスケをやっていて体育会系なので、そんなところはありますね。負けたくないから準備をする。勝ちたいというよりも負けたくないですかね。
「このままだと俺負けるよな」みたいなところからの準備というか……。

■「市を切れるか?」「切れません」
勝新太郎のオファーを断る

大山)すごいなー。山の話もそうですし、どこか自分を俯瞰しているようなところあるというか? 僕なんか、しがみつくタイプです。しがみついてしまって何も俯瞰ができなくなる(笑)

吉田)しがみつかずに間口を広げれば拾えるものが大きくなりますよね。それは俯瞰できているから余裕があるのかもしれません。

大山)僕はアスリートのセカンドキャリアの支援もしているんですが、「自分にはこれしかない」と思う人ほど自滅しているようにも感じますね。

吉田)最近やらせていただていた仕事で、岸谷五朗さんが主演の『天』という雀士のドラマがあるんですが、その中で僕は赤木しげるというカリスマ雀士を演じさせていただきました。この赤木がまさに物事を俯瞰している人物と言いますか、 彼の言うことなすこと全部わかるんですよね。
はじめは「俺は麻雀もやらないし、マンガの原作も見たことないし、なんでこんな役が来たの?」といった感じでした。
でも演じてみると全部、わかるんです。全てに勝つわけでなくトータルで勝つみたいな生き様に共感するというんでしょうか。

大山)役の話で言うと勝新太郎さんのオファーを断った話もすごいですよね。あれは座頭市を切る役でしたよね。

吉田)あの時は、勝さんから「座頭市の最終章を作りたいんだけど、ここで市を終わらせたい、お前に市が切れるか?」と言われたんですね。その時、僕は「切れません」とお断りさせていただいたんです。

大山)いやー、でも普通は「おいしいっ!」って飛びついちゃいますよね。なんでお断りしたんですか?

吉田)それに見合う俳優が切るのならいいと思うんですけど、当時の二十いくつの人気だけでそこにいる僕が勝新太郎さんの分身である「市」を切ってはいけないと思ったんです。

大山)いやー、まさに自分を俯瞰できているから判断できることですよね。すごい。なんか、職人のように見えてきました。

■人生は起承転結のある旅

吉田)ありがとうございます。ただ、22歳までの僕に足りないものはまさにその職人のような技術や準備だったんです。
それに気づくことができたおかげで、今では「仕込みが8割。それがあるから自由にやれる。7~8割は準備しておいて間違いはない」、そう思えるようになりました。
舞台も映像もライブも結局はこそですよ。人以上に見せようと思ったら、自分が納得がいくまでのものをやろうと思ったら、それに耐えうる体力をつけておかないといけない。体を鍛えるのもその一つです。

大山)いやーすごい! ありがとうございます。今日もいいお話が聞けました。最後に栄作さんのこれからのビジョンをお聞きしてもいいですか?

吉田)僕が50歳で作った事務所がDHUTAというんですが、これは旅人が持っているズタ袋の「頭陀(ずだ)」の語源なんですね。
人生は旅である。ずっと続いていく。いただいている対価に感謝。
ということからのDHUTAなんです。旅はまだまだ続いていくぞと。
で、僕の今は人生の第三章を旅している。起承転結の「転」だと考えているんです。それを65歳くらいまでにまとめて、結に向かおうと。
先日、偉大な田中邦衛さんが88歳でお亡くなりになりましたが、まさに職人ですよね。ああいう人生の全うの仕方、「結」を迎えたいなと思っています。

大山)そのための区切りとしての30周年コンサートツアーでもあるんでしょうか?

吉田)そうですね。1年伸ばした今も、50%のお客さんになるかもしれないけれど、とにかくこれをやって、次へ進もう。そう思っています。
先程も話したように『One Fine Day』のような歌が生まれてくる事はギフトだと思っています。コロナの緊急事態宣言がなければ出会っていない曲、本当に素晴らしい曲なので、それはそれでコロナが悪いばかりのことではないのかなと思っています。
今もまだ、コロナが終息していませんが、一度人々が、それこそ世界中の人々が立ち止まって考えることのできる時期でもあると考えています。それこそギフトだと。
この状況をさらに俯瞰して言うならば、今地球自体が病気にかかっている状況でもあると思うんです。コロナに限らず、水質汚染もそうだし、大気汚染もそうだし、人類というものがどんどん、どんどん母なる地球(ほし)を病気にさせている。これは反省すべきことでもあるのかなと思います。

そんな状況に私たちがまずできること。それは隣の人に優しくすることなんじゃないのかなと思っています。この野郎なんて言っていたらまずできません。
だからこそ一度立ち止まって自分を振り返ってみることも大事なんじゃないでしょうか?

どうしてもそんなふうになれない、心が落ち着かないといった時には、山か海に行く。
自然に触れることは、人間にある邪気みたいものを洗ってくれる、本当にいい行為です。
森林浴をする、滝を見る。波を見る。まさに母の愛そのものですね。

~おわり~

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吉田栄作(よしだ・えいさく)
1969年1月3日生まれ
血液型 A型
出身 神奈川県
身長 182cm

オフィシャルサイト
https://www.dhuta.net/eisaku_yoshida
Eisaku Yoshida Official Channel   
https://www.youtube.com/channel/UC22wGqBywXw1Wj17kYFBO8A

~お知らせ~
吉田栄作歌手デビュー30周年
コンサートツアー2021開催!
【~We Only Live Once~】
全公演チケット発売中。
当公演は感染予防策を実施して行います。感染状況によっては、座席が変更になる場合がありますので予めご了承下さい。

【開催概要】
〇名古屋公演
日時:2021年6月5日(土)  
17:30開場 18:00開演
会場:ボトムライン
https://www.bottomline.co.jp
料金:全席指定 8,800円 + 1drink代
※2020年6月13日(土)の振替公演です。
当日のチケットをお持ちの方はそのままご入場頂けます。
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション
052-320-9100 (12:00~16:00)

〇大阪公演
日時:2021年6月6日(日)
  16:30開場 17:00開演
会場:バナナホール
https://www.banana-hall.com
料金:全席指定 8,800円 + 1drink代
※2020年6月14日(日)の振替公演です。
当日のチケットをお持ちの方はそのままご入場頂けます。
昨年より開場・開演時間が30分遅くなっておりますのでご注意下さい。
お問い合わせ:夢番地
06-6341-3525(平日12:00-18:00/土日祝休)

〇東京公演
日時:2021年6月25日(金)
  18:30開場 19:00開演
会場:渋谷プレジャープレジャー
http://www.pleasure-pleasure.jp
料金:全席指定 8,800円 + 1drink代
※2020年6月19日(金)の振替公演です。
当日のチケットをお持ちの方はそのままご入場頂けます。
お問い合わせ:スネークミュージック
03-3260-8535(平日11:00-18:00)

吉田栄作 LIVE ALBUM 発売決定!
歌手デビュー30周年記念ライブ『We Only Live Once』の模様を収録。
2021年8月末発売予定。
特典:お買い上げの方のみが鑑賞できる映像QR CODE付き
今回のツアー会場にて予約開始!
(コンサート会場予約のみの特典あり)

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