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#5土家大輝選手インタビュー

Bリーグには学校に籍を置いたままプレーする学生の選手たちがいる。特別指定選手だ。ファイティングイーグルス名古屋にも今季、将来有望なガードの特別指定選手が1月から加わっている。早稲田大2年の土家大輝選手(20)。期間限定でプロの世界に入り、どんな思いで日々過ごしているのか、語りました。

■バスケット漬けの毎日

 「ホントに一日中バスケットボール。週末の試合に勝つために、毎日そのための行動をしている。そこは大学生とは違う。学生は勉強とかいろいろあるんですけど、プロはずっと勝つためだけのことを考えていられる。やりやすいというか、楽しいですよ」
 「平日は午前10時から11時まで朝ワークアウトがあって、その前後に自主練をして、ケアをして、お昼ごはんを食べて、ちょっと休憩して、また午後6時から8時くらいまで練習です。その前後でシューティングやったり、ウェートやったりで、僕は10時くらいに体育館を出るっていう感じですね」
 「やっぱりシーズンの途中から合流するっていうことで、FE名古屋のチームバスケットのシステムや選手の特徴を知るまでは少し時間がかかりました。自分と同じポイントガード(PG)の先輩たちもいろんなタイプの方がいて、例えば、ヨコさん(横江豊選手)はコントロールガードなので、こういう考えでセットをコールすればもっとやりやすいよというアドバイスをいただいています。松さん(松山駿選手)はすごくシュートが得意なので、どのタイミングで打っているのかを見て学んでいます。年齢が近い分、いろんなオフェンス、ディフェンスのシステムのことを気軽に教えてもらっていますね。宮さん(宮崎恭行選手)はやっぱりこのチームのことを一番よく知っていて、僕が質問することに対しては全部答えてくださっています」
 「基本的にみなさん優しいんです。最近は杉本先輩(杉本慶選手)にソウさん(ソウシェリフ選手)をいじれって指示されている。ホントに先輩たちは優しくて、面白いです。なじめてきました」

■コロナ禍に地元で自主トレ

「大学1年生の時にも特別指定選手のオファーをいただいたチームがあったんですけど、体もしっかりできていなくて、行ったとしても試合に出てなんぼだから、まずは体作りをしてとアドバイスを受けてやめました。今回はシーズンが始まった時から特別指定で行かせてくださいと大学の監督にお伝えしていて、オータムカップ、インカレを通して見てくださったFE名古屋から声をかけていただきました」
 「今年度、大学の授業は後期で一部は対面があったんですけど、ほとんどずっとオンラインでした。練習も3月の途中から6月くらいまではストップしていて、自分は地元の岡山県総社市に帰って2週間の自粛をして、緊急事態宣言も出ていなかったので、個人的に地域の体育館を予約して練習やトレーニングをしていました」
 「6月の10日くらいに大学へ戻って、9月くらいからインカレへ向けてチーム練習を始められました。でも、一人一人に意識の差があり、全然動いていなかった選手も、大会があるかどうか分からないけどそれに向けて準備できていた選手もいた。なので、なんかちょっとかみ合わないというか、不安が大きかったですね。でも、そこは早稲田のいいところでもある。文武両道で、全員がBリーグを目指しているのではなくて、様々な人がいる中でバスケができているので、ある程度仕方のないことだと思います」
 「インカレの8位という順位は良くも悪くもないっすね。僕が入学する前は6位で、1年生の時はベスト16。でも、一人一人成長が見られた大会ではあった。僕は1年生のときから多く試合に出させていただいて、迷いがあってターンオーバーになったり、20点取れる試合もあれば5点や3点に抑えられる試合もあったり、ファウルトラブルが多かったり、自分自身のコントロールや相手へのアジャスト能力っていうのが欠けていたんです。今年のインカレでは6試合やった中で35分から40分近く出させてもらい、ファウルもコントロールできて、自分の良さであるシュートを生かしながら周りに頼るところは頼ることができた。自分のいいところも伸ばしつつ、味方を信頼しながらできた。下級生がすごい思い切って楽しめた大会だったかなと思います。1年生には今のうちはミスしていいんだよっていうのを伝えて、しっかり後押してあげるのも、自分がやってきてもらった分、やらなければいけないかなとは思います」
 「FE名古屋では逆に下級生の立場になり、思い切ってやろうという部分と、分からないことはしっかり質問して先輩たちから多くのことを学ぼうっていうところは使い分けています。そしてコートに立ったら、限られたプレータイムの中で自分のよさを生かしつつ、ハードにディフェンスをすることがマストで、と考えています」

■耐えて我慢の高校生活

1月23、24日の東京Zとの2連戦でデビューし、27日の西宮戦では出場27分、3ポイント3本などで10得点、3アシスト。上々の滑り出しだったが、2月に入って13、14日の奈良との連戦ではほとんど出番がなかった。

「デビュー戦で8分、翌日も16分出していただいて、次の西宮戦はちょっと特別だったんですけど、自分の実力的にはそんなに出られる選手じゃないという感じがしていた。シュートに関しては自分が得意な3ポイントを思い切って打つことができてよかったんですけど、相手にリードされている状態の中で接戦に持ち込められなかったし、流れを変えることができずにそのままずるずるとやられた。そこはPGとして全然まだまだなんだなというのは感じました。大学とは違った環境になって、レベルが上がって、自分のプレーに迷いもありますし、不安もあります。それが練習からちょっと消極的なプレーにつながったりだとか、そういう部分があった。そこは改善して、自分がプレータイムを勝ち取っていく世界だと思う」

 ずっと全国で活躍してきた。総社ミニバスに所属していた小学6年生では約1年間、練習試合も含めて負けなしの147連勝で全国優勝をした。岡山・玉島北中学校では3年生でU16日本代表に選ばれてドイツ遠征をし、司令塔として全国中学大会で準優勝。ジュニアオールスターでMVPを獲得した。高校は全国屈指の強豪、福岡大大濠高校へ進んだ。

 「ミニバス、中学と挫折がなかったんですよね。それで大濠に行って、ユニホームは1年生の時からもらっていたんですけど、出られない時間帯が多かった。3年生になってようやくスタートのメンバーに選んでもらったけど、それでもうまく行かない時期もあって、すごく自分の中で悩みながら、耐えて耐えて我慢してやってきた。なんかその経験は自分の今に生かされています。2年生の時には日本一(全国高校総体優勝)とか3年生の時には国体も優勝とか、いろいろな経験もさせていただいて、技術的にもなんですけど、精神的にすごい成長できたかなと思います。だから、奈良戦であまり出られなくて本当に悔しかったんですけど、高校の時に出られなくて悔しくて練習してという経験があるから、今は準備するしかないという気持ちがあります。マイナスに考えてもなにも生まれないというのは高校時代に分かっているので」

■名古屋で身につけたいこと

1年前の2020年2月には3×3のシブヤトーナメント(httpts://www.asahi.com/sports/events/shinsbuya_3×3/)に出て優勝。コロナ禍で制限のある学生生活だが、幅広くチャレンジして充実させている。大学バスケならではの面白さを伝える動画メディア「CSPark」のバスケ大好き宇宙人・カルロスから「餃子の王将が好き」という情報も(https://4years.asahi.com/article/14175692)。
 「あれはカルロスさんから『早稲田でいいメシ屋はないか』と聞かれて、僕は早稲田で行くなら王将かやよい軒で、王将はよく行きますって答えたんですよ。中華料理も好きですけど、お寿司が大好きですね。大学の同期に愛知の子がいて、そいつから矢場とんとか山本屋に行った方がいいよって言われているんですけど、なかなか行けてなくて」
 「FE名古屋で4月の2週目くらいまではたぶんできるんじゃないかなと思います。はっきりとは決まっていないんですけど。フィジカル面ですごく劣るのでボールがもらえなくてほかの人に任せちゃったりというのがあるので、大学へ戻る前に、しっかり自分が体を張ってコンタクトした上でボールをもらうというもらい方を身につけたい。あとはピックした時に、今はすごく感覚的にやっちゃっている部分があるんです。大学では通用しているんですけど、プロだと駆け引きがうまくて、ボールをカットされることが多い。ピックを使った後にどこが空いているのかというのを、感覚じゃなくて見て判断できるように、というのをこの期間で習得したいなと思います。さらに自分の得意なシュートはすべき場面で決めきる力をつけたいですね」

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