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釣りを始めて1年を経ていない初心者の私が、83cmのスズキを釣った話・発動篇

では、後編です。すぐに投稿の予定でしたが結局、1か月かかりましたね…暇つぶしにどうぞ。

釣りを始めて1年を経ていない初心者の私が、83cmのスズキを釣った話・発動篇

5.Air Combat Manoeuvring

このスズキという魚は、釣りあげられる際に海面から飛び上がり、激しく身体を左右に振る動きを取ることが有ります。

これは「エラ洗い」と呼ばれる挙動で、以前私がキャンプ場で逃がした大きな魚がスズキだとわかったのも、「エラ洗い」で大きな魚体が海面に飛び出たのを目撃したからです。

色々とネット等で勉強したのですが、この「エラ洗い」は釣りにおいては非常に厄介で、例えば引っ張る方向と反対に急激な力がかかれば糸が切れてしまう可能性が有りますし、逆に引っ張る方向に身体を振られると、糸が緩んで針が外れてしまう可能性も有ります。

対処法を調べると(前回かなり悔しかったのでいろいろとネットで見てしまったのだ)、反対側に力がかかっても糸が切れないようにドラグを緩めて衝撃を吸収できるようにしておくことや、逆にこちら側に力がかかっても糸が緩まないように強めに糸にテンションをかけておくことなどが挙げられていたのですが、そもそも、これは二律背反で同時には出来ないことです。

その他にも色々と対処法を見かけはしましたが、矛盾なく「エラ洗い」に対処できる解決策は無く…

要は「対処法は無い。神に祈れ」というのが結論のようでした。

そんな必殺のマニューバ(空中戦闘機動)である「エラ洗い」を警戒しながらも、ゆっくりとサヨリを岸に寄せるように慎重に糸を巻き取ります。魚の泳ぐ速度と巻き取る速度をシンクロさせると、まるで魚と一緒に海を泳いでいるような気がしますので個人的には釣りの中でも大好きな時間ではあるのですが、今回は、緊張感がかなり有りました。

おそらく戦間期のアドリア海で赤い飛行艇を見た空賊たちも、ポルコ・ロッソの必殺マニューバ(空中戦闘機動)「捻り込み」を警戒していたと思うのですが、彼らと同様に私も祈りました。

6.祈り

力をかけつつも、慎重に糸を巻き取り、海に沈んだままだった電気ウキが海面にちょろちょろ出て、かなり手前の方まで引き寄せることが出来たことが分かります。

このまま、タモが届く岸の方まで、何も起こらずに、もしかすると寄せられるのかもしれないとの期待が心に宿りだした頃。

海面が割れて、水しぶきが上がり、そして遂に、今日のその時が訪れます。

効きますように。

どうか

ネットやYouTubeで観た浅い知識が

スズキにも…

風の神様…!!

着水!

この間、およそ0.1秒。

大きく跳ねることはなく、あまり綺麗なエラ洗いではありませんでしたが、大きな魚が水面から飛び出すのは、かなりカッコよかったです。

糸が切れたり、針が外れたりはしていないかと心配しながら巻き取りを再開しますが、しっかりとした重さを感じる!やった!!乗り切った!!

エラ洗いを乗り切って、再びサヨリ釣り法にてスズキを岸に寄せていきますが、またエラ洗いをしないとは限りませんので、緊張は継続しています。

ウキがどんどん近づき、海面近くのスズキの姿も肉眼で確認できるほど近づいてきました。

からまん棒(仕掛けとウキが絡みにくくする仕掛け)のところまで糸を巻きとってしまうと、もう糸は巻けないので、あとはタモの投入です。

すこし糸をたるませた状態で竿を上げると抵抗も殆ど無く頭が持ち上がり、エラに空気を当てることが出来たように思います。これも釣りをするまで知らなかったことなのですが、魚はエラに空気を当てるとおとなしくなってしまうとのことで、タモを使う必要もないくらいの小さなチヌで練習を繰り返していたのですが、その感覚を今回のスズキにも活かすことが出来ました。

すぐに頭を海に戻して、少し泳ぎに迫力の無くなったスズキの前にタモを入れました、感覚的には、岸の横を静かに泳いでいくいくスズキの前に網を落とす感じ。

少し前まではタモの使い方も分からずに焦っていたと思うのですが、風に飛ばされた帽子、バケツの蓋、そして、小さなチヌたちをすくい続けてきた成果が今、実を結ぼうとしています。タモさん、いつもごめんなさい。うまく行けば貴方はスズキをCatchしたタモですと祈りつつ、左手でタモ、右手で竿をコントロールして、そして、上手い具合にタモにスズキの頭が入り、身体も入り…

ズシリと重い感覚と、信じられないくらい程のしなり(ボート漕者としてはベントと書きたい)を見せるタモのロッドに驚愕しながら、少しずつ短くしていき…

堤防に上げることが出来ました。

やった…

釣り上げた…

いやー、凄い。

息を切らしながら、自分が釣りあげたスズキを見た私の第一声。

こんなんおったら、アジは釣れんて…

ダイソーで買ったメジャーで測ってみると、80cmを超えており(83cm)、こんな大きい魚を釣ってしまって良いのか、とハッキリ言ってビビりました。

7.覚悟

最終的には持ち帰って家族みんなで美味しく頂いたのですが、釣った後にどのようにして、持ち帰ることを決めたかについて、その時の心の動きも書いておきたいと思います。

このような大きい魚と言うことは、間違いなく何年間も生きてきたスズキだろう。もしかしたら10年以上生きてきたスズキかもしれない。

スズキはルアーフィッシングでも良く釣られる魚で、ルアーで釣る人たちはスポーツ的に釣りをするから、大きい魚を釣っても「次に釣る人の為に」とリリースをすることが多いみたい。このスズキも何度か人間に釣られてリリースされてきたのだろう…

こんな立派なスズキだし、リリースするべきなのか…。

そういう想いに駆られながらも、別の角度からの考えも頭に浮かびました。

もしも、ここで自分がこのスズキをリリースしたとしたらどうなるだろう。

また、釣られてリリースされるかもしれないし、もう相当な老スズキだろうから、もっと大きいサメみたいな魚に食べられてしまうかもしれない。時々、大きな魚の死体が浮かんでいることが有るけど、あんな感じでなんかの弾みで死んでどこかの岸に流れつき、野良猫に食べられたり、虫に食べられるかもしれない。というか、私以外の人間に釣られて食べられるかもしれない。

こういう風に考えていくと、今後のスズキの運命は「それなりに生きた後は、死んで何者かに食べられる」という結論になります。その結論は明日かもしれないし10年後かもしれないですが、変わらないものと思います。

ということは、自分がこのスズキをリリースするかどうかということは、このスズキが死んだあと、「ちゃんと食べることが出来るのかどうかにかかっている」ということではないか、と何となく思いました。

持ち帰るなら、早くエラを切って血抜きをしないと美味しく食べることは出来ませんので、あまり悩むことは出来ません。

このスズキを持ち帰って、食べることが出来るのか。

別にお客さんに出すわけではないので、自分たちの家族で美味しく食べることが出来るのか。

出来る出来ないの前に、自分はこのスズキを捌いて美味しく食べることについて自信を持てるのか…。

持てる。

釣りを始めた頃なら分からないけど、今なら捌けると思う。綺麗には無理かもしれないが、釣ってきた小~中型の魚はたくさん捌いてきたし、スーパーで買った大きな青物も、ゆっくりとやれば、家族で食べられる程度には捌くことが出来て美味しく食べることも出来た。

結論として、このスズキを美味しく食べることが出来ると思う。まだ釣りをして1年も経っていないけど、今まで自分で捌いてきた沢山の魚のおかげで、そのことについて自信を持てる。

だから、リリースせずに持ち帰ることにしました。

セオリー通りにエラをハサミで切ってバケツに放り込んでおきます。

エラ蓋が動くたびにドクドクと血が流れていくのが見えて、美味しく頂きますのでどうか綺麗に血抜きが出来ますように、とお祈りしました。

やはり、アジやサバとは違って凄い量の血が出て、しかもかなり長い時間がかかりましたが、何とか血が出なくなりました。

待ってる間にサビキ釣りを再開させたのですが(どんだけから揚げと南蛮漬けを食べたいねん)、10cm程度のアジゴも沢山かかりはじめました。

これはスズキがいなくなったからなのか、それとも、明るくなってきたからなのかは分かりませんが、短時間で4〜50匹ほど。アジゴとは言え、こんなに釣れたことは今までなかったのでこちらも嬉しかったです。小さいアジはいくらでも美味しく食べることが出来ますから。


アジも沢山釣れました。

8.帰宅

血が出なくなったスズキは手持ちのクーラーボックスにはそのままでは入らないので、折り曲げたりして何とか放り込みました。とにかく一旦帰るべきだろう、と思ったので帰宅。

妻も子供達も起きてきており、疲れてるんだから寝たほうが良いんじゃないかという顔をしていたのですが、「クーラーボックス開けてみてよ」と言って妻に開けてもらうと流石に「えー!」と驚愕しておりました。やったぜ!

記念撮影を何回かして、朝食を取って子供達の諸用を済ませた後、10:00くらいに堤防に再び戻り(疲れてるんだから寝たほうが良いんじゃないか)、サビキ釣りを再開してアジゴを更に追加。アジが沢山釣れる状況というのは初めてでしたので、こちらも楽しかったです。

さて、アジゴも思う存分釣り終わった後、長男も諸用から帰宅しましたので、一緒によく行く釣具チェーン店に釣ったスズキを持ち込んでみました。

釣具店の多くは釣れた魚を持ち込むと写真を撮ってくれて、その後、お店の壁に貼ってくれたりするのですが、私もいつか壁に写真を載せてもらえたら良いな、と思っていました。

ドキドキしながら「持ち込みなんですけど…」とお店の女性(バイトのおば…お姉さん)に言うと、あーありがとうございますとニコニコ言ってもらえて、手際良く撮影の準備をして頂きました。

どれくらいの大きさの何の魚が釣れたのかとかは特に聞かれず、準備が終わったところで、じゃあよろしいですか、とクーラーボックスを開けて頂いたところ、「んー、なんですかこれは…ええーっ!」という感じの反応をされて嬉しかったです。

撮影台も「大きいのに変えないとですね」と言われて、大きいのに変えてもらい、別のお店のお兄さんに見てもらうと、やっぱり、うわー凄く大きいですねーと言われました。うちのお店の持ち込みでもトップクラスかも、とも。

お店の人は大きさだけでなく、「この体高はなかなか無いですよ」としきりに言っていて、スズキの褒めポイントは体高なんやな、ということを知りました。皆さんも周りにスズキが釣れた人がいたら、体高を褒めるようにして頂けると幸いです。私はそうします。

釣具店の人によると体高が凄いので「ヒラスズキじゃないか」と仰っていて「狙って釣ってる人が一年に一回釣れるかどうかの魚」「私も釣ったことないです」とのことでした。私みたいなのが釣って申し訳ないですとお伝えしました。

因みに帰って図鑑とかを見て特徴を調べるとポピュラーなマルスズキじゃないかな、とも思いましたので、釣れたのはとにかく「スズキ」ということにしておきたいと思います。

大きさと重さも測ってもらい私の釣ったスズキは83cm・3.47kgとのことでした。

9.感謝

撮影してもらってお家に帰り、捌く前にもう一度、魚の状態のスズキを眺めてみました。

とんでもねぇ…

突き出た口、大きな目、そして、釣具屋さんの人が言っていた体高を形作っている頭から胴体への美しいけど、ちょっと強引さを感じさせる曲線のライン。身体はとにかく長くて内臓の入っている胴体から尾に繋がる部分が異様に長く伸びています。


シンクに入らない…


まじまじと見ながら、とにかくカッコいい魚だなと思いました。私はピラルクとかガーとかの古代魚がカッコ良くて好きなのですが、スズキもカッコ良さでは全然負けていないことに気付きました。釣り人の多くが食べるわけでもなく、シーバスを追い求める理由が分かるような気がします。こんなのが釣れたら滅茶苦茶テンション上がりますね。

出来れば、このままいつまでもこの形で置いておきたいところですが、そうすると持ち帰る時に自分に問うたことの答えを違えることになります。

なので、文化包丁を手に「釣れてくださってありがとうございます」とお祈りしながら捌きました。

別にお店でお客さんに出すわけでもないので、切断面はギザギザだったりするのですが、ゆっくり丁寧にやっていけば、食べる分には申し分なく捌くことが出来ました。

時間としてはやはり2時間くらいかかりましたが、充実した時間でした。私はプラモとかを作るのが好きな人なのですが、何かを解体することも楽しい行為だよなと思います。

捌いたスズキは夜にお刺身、洗いなどにして食べました。

とにかく本当に美味しい。さっぱりとした中にもほのかな旨みがあって最高でした。スズキは旬が夏と聞いていたのでドンピシャでした。

その日に食べることが出来たのは、切り身の1/4にもいかないくらい。しかも、ちょっと多すぎたなと思いましたし、アラも皮も沢山残っています。

その日から5日ほどかけて、毎晩、スズキを食べました。お刺身をベースにして洗い、はま寿司でのお持ち帰りシャリに乗せたお寿司、アラ煮や皮の茹でポン酢など。


お刺身
いつかは食べてみたい、と夢にまで見た洗い
お寿司。シャリは「はま寿司」のお持ち帰り
しばらく楽しませてくれたアラ

アラ煮を食べた時、身体中が上品な旨みのプリプリかつコリコリの軟組織に覆われていて、コラーゲンの塊やなと思いました。

骨についてはよく洗って乾かした後、乾燥剤と一緒にジッパー袋に入れて保存しておくことにしました。大きな頭蓋骨も凄かったですが、目を惹いたのはエラ蓋の部分。鋭い刃物のようで、これに釣り糸が引っ掛かったら絶対に切れてしまうな、と思いました。

また、刃物とかにすると丁度良い大きさで、石器時代などでは骨を使って物を切ったりしてたんじゃないかな、と想像しました。

時々、骨を眺めてこのスズキのことを思い出したいと思います。

このコブは折れた後なのかな。


刃物に使えそうなエラ蓋

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こんな感じで、スズキが釣れた時、釣れた後のことを書いてみました。

今回、スズキが針にかかったのは全くの偶然ですが、ネンブツダイを泳がせたところから、釣り上げて、そして、捌くところまで今まで釣りをしてきて得た知識と経験が活かされていたことが、まとめて書いてみてわかりました。

このスズキを釣ったのは7月の連休。私が釣りを始めたのは去年の9月からなので一年も経っていなかったのですが、いつか釣りたいと憧れていたスズキ、しかも、こんな大きなスズキを釣ることが出来てとにかく嬉しいです。

今後、こんなに大きな魚を釣ることはなかなか出来ないと思いますが、頑張って釣りの勉強を続けていきたいと思います。

では、最後まで読んで頂きありがとうございました。

また、どこかの堤防でお会いしましょう。

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