アラビアの食文化

私達が住んでいたカフジ。つまり会社の居住区には、現地のアラビア人も住んでいました。父が務めていたのは日本の会社でしたが、だからといって現地において日本人が偉かったというワケではありません。日本側はあくまでサウジアラビアで石油を採掘する権利を一時的に買っているにすぎなかったため、社内での階級がものすごく高い現地人もたくさんいました。父の上司もアラビア人でしたし。
彼等のような一部のお金持ちな現地人は、家も広くて(ウチも相当広かったですが)庭師と家政婦がいるのは当たり前。そして世界のどこかに数件の別荘を持っている。真に羨ましい。

そんな彼等が何食べてるのか気になる方も多いかもしれません。
が、これが意外と質素なんです。質素というか、簡素?
たぶんコックを雇っていた方もいたと思うので、普通に中国料理とかインド料理とか食べてた家庭もあると思うんですけど、基本的に
・ホブス(平たいパン。小麦粉オンリーのシンプルな味)
・ひよこ豆のペースト(ちょっと酸っぱい。子供の頃苦手だった)
・肉(牛肉だったり羊だったり)

が現地人のご飯の基本でした。うん簡素。
ホブスなんて国が補助してるからびっくりする程安いし、さもない味(失礼)なんですけどね。わりとみんなコレ食べてる。
酒を飲まない国だから食文化が発達しないのか…。
そしてもっと謎なのが、デザートにデイツ(ナツメヤシの実)やプリンが出てきたりするんですけど、これもイマイチな味で。デイツはともかく、なぜプリンから卵と牛乳と砂糖以外の味がするのかは、子供ながらに不思議でした。
ただこれ冗談じゃなくて、デザートが美味しくないと本当に困るんですよ。料理は大体メイドさんが作るのですが、デザートだけはその家の奥さんが作ることが多いのでうかつに残せない。マジで不味いと困る。いろんな意味で究極のデザート。

アラビア人って子供が大学行く段になると海外留学させる傾向が強いので、結構舌肥えてると思うんですけどね。スーパーにも年がら年中ありとあらゆる野菜があるし。お金には困っていないだろうし。
でもなんか現地のご飯は美味しくなかったなぁ。

しかし味はさておきカフジで最も衝撃的だったのは、アラビア人がパーティに招待してくれた時にお祝い事として出てくる羊の丸焼き
敷き詰められたご飯の上に、でーん!と羊ちゃんが生前の姿のまま乗ってるんですけど、本当に丸のままなんですよ。いや、丸焼きだからそりゃそうなんですけど。

その何が問題って。
現地の方はその…より貴重な部位をゲストにふるまうのが素晴らしいと思っているようなんですよね。
貴重な部位。
…つまり、目玉とか脳みそとかを主賓にふるまおうとするワケで…。

…もうね。
リアルに羊たちの沈黙ですよ。
羊なだけに洒落で言ってるんじゃなくて、あの映画並みの衝撃ってことです。
いいですよ。大人になっていれば、食べ物だけじゃなくて言葉とか思いとか色々飲みこめることも出来てきますし、貴重な食料なのに残すとかもったいない。わかる。わかります が、子供にこのビジュアルは衝撃的すぎる 。もう仏さんと目を合わさないように必死です。
味もやっぱり日本で食べているラムやマトンよりずいぶんと臭かった気がします。というか、日本で食べるジンギスカンとかマジで美味しいですよね。あの羊とアラビアの羊の違いはなんなんだろう。やはり年齢と環境なのかしら。

時に聞いた話ですが、最近ではカフジにもピザ屋が出来たそうです。
お祈りの時間毎に店を閉めざるをえなかったり、アルコール&豚肉禁止のためなかなか食文化が発展しづらい土地だと思っていましたが、少しずつ変わっていっているようです。

以上、衝撃的な現地の食文化のお話でした。