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設楽知昭氏を偲ぶ

画家の設楽知昭さんがお亡くなりになられていたことを知らなかった。12月末まで愛知県美術館で常設展内で追悼展がされているという。豊田市美術館と名古屋市美術館に行っていたのに見逃してしまった。後悔。

設楽さんの絵画は美術雑誌などでかなり前から知っていたが、具体的に身近に感じたのは故・利岡誠夫さんが寄贈してくれた現代アートのコレクションに2点の絵画があり、企画展のチラシ掲載のために連絡をとった時だ。寒い季節なのに、わざわざ愛知から観に来てくださった。画集や絵ハガキや論文などをくださった。あのフワフワとしていながら凄まじく複雑な設楽さんの絵はどうやって作られているのか、画家にしか分からないのに、その秘密を抱いて勝ち誇ったような印象を与えない、おおらかで優しい方だった。

一年半後、急に設楽さんからメールが来た。うちの作品は描いた時より色が変色しているからメンテナンスしたい、とのことだ。修復費がかかるんじゃないかと一瞬ドキッとしたが、画家が指定する方法は「太陽の光に晒すこと」だった。どういうことだろう、と頭を悩ませたが、そうすれば驚くほど簡単に元の色に戻るから、気候の良い時期に一定時間やってみてくれ、という。美術館のバックヤードというのは、なかなか日光が安定的に当たる室内空間がない。渋々やってみたが、一週間では色が変わらなかった。曇天になったので一旦収蔵庫に戻し、また折をみて再開します、と言ったきりメールが途絶えてしまった。亡くなる一年前だ。

再開しようかな。

心からご冥福をお祈りいたします。


画像:設楽知昭《海の光》
設楽さんについては、絵の幸福 | みすず書房 (msz.co.jp)が詳しい。