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竹川快の絵について

「いくつかの次元を行き来する自分と、それに対するちょっとしたコメディ」。自らの創作をそう語る竹川の作品群は「イメージのユートピア」というにふさわしい。人体や顔、ビルや星座、地形、文字…。湧き出すイメージを画面にマッピングし、意図と偶然の間を揺れ動く主体を俯瞰して自らの手と戯れる。

今から一世紀ほど前、シュルレアリスムの画家たちは、意識と無意識の危うい境に立ち、具体と抽象を横断するイメージを描き出した。ドローイングを主とする竹川の制作は、ダリ、マッソン、マッタ、さらにはヴォルスやポロックにいたるまで繰り返された遊戯に満ちたイメージの実験を彷彿とさせる。

竹川の線は予測できない。人体らしきものを描いたと思えば、人体は解けて文字になる。複数のイメージが重なり、線は面となり、やがて支持体からはみ出す。画面には竹川が憧れて止まない草間彌生のネット・ペインティングのような没入感すらある。

ペインティング、ドローイング、コラージュを通して複合的イメージを操る竹川は、アカデミックな美術教育を受けていないが故に、手を技能に従わせることなく、日々新たなゲームを楽しむ。どこか流行追従的な絵画が多い時代に、彼は少数派かもしれない。だからこそ多くの目に触れることを願う。