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いつもの場所

外の景色がぼんやりと見渡せる薄暮…そんな時間に入るお風呂は、この季節の何よりの楽しみ。湯けむりと蚊取り線香の二重のけむりに、一日の出来事なども重ねて湯ぶねにつかる。
いつにも増して外の景色の美しさが新鮮に映る。それはなんのことはない、いつもは右側を開けている引き戸、それを今日は左側にしているだけのこと!?たった50センチ視点が変わっただけで、こんなにも違う景色が広がることに、喜びと驚きを感じた。

そんな小さな変化に心動かされるのは、前日の変形菌との出会いがあったことも少なからず関係していると思う。

昨年に引き続き八戸工業大学の星野保先生を講師に迎え、変形菌の観察会を開いた。
1週間前から天気予報を眺めては一喜一憂。
不安定な梅雨空を案じたところでどうしようもないと思いながらも、デリケートで小さな変形菌に出会うために、やはり雨では困るのだった。

前日入りしてくださった星野先生とアシスタントの学生さんと一緒に雨が小康状態になった隙をみて、下見に出かける。出かける、といってもなんのことはない、わが家から目と鼻の先、駐車場の隣の林へ。アシスタントのSさんが、首尾よくオレンジ色のツヤツヤ輝くホソエノヌカホコリを見つけた!まずはひと安心。

それにしても前日夜の天気予報も本降り。ええい、ままよと当日の朝を迎えた。すると、おやおや?願いが届いたのか、雨は上がった。

先生から変形菌の説明や見つけ方などのお話を伺って、いざ変形菌探しが始まる。いつもの場所、そここそが変形菌やら冬虫夏草やらの住まう場所でもある。

昨年の観察会の時に見つけたのは、クモノスホコリの仲間。今年はツノホコリ、ホソエノヌカホコリ、ムラサキホコリなどなどまた違う種類が登場。冬虫夏草もポコポコと。
5歳のTちゃんも大きな変形菌の株を見つけるというお手柄。
他にもキノコや様々なカビ、土壌生物…。観察会には登場しなかったが、ニホンジカやクマの通り道でもある。コンクリートで固められた場所では忘れてしまいそうな命の息吹を感じる場所。
午後は実体顕微鏡をのぞいたり、顕微鏡につなだモニターを眺める。小さな部屋に、参加者の皆さんの歓喜の声が響く。

※顕微鏡の写真は星野先生よりご提供いただきました

「…来年もまたやりましょう!」星野先生から心強い言葉をいただいて、無事観察会を終えた。小さくも、美しく、そして奇妙な変形菌。そんな変形菌にどこか似た(!?)人たちと、来年もタイマグラの森の中でご一緒できますように。いつもの場所が更にいい場所になる。


(文:山代陽子 写真:山代生)


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