マガジンのカバー画像

南極経由、宇宙行き。|10年前の南極越冬記

31
2009-10、南極の昭和基地で越冬生活を送っていた当時、書き綴っていた紀行文。それらを10年が経ったのを機にまとめたものです。noteの予約投稿機能を使って、当時の日付から10… もっと読む
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

賑やかな訪問者

#10年前の南極越冬記 2009/11/2ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 昭和基地にペンギンがやってきた。六羽もいっぺんに。 やってきたのはアデリーペンギンという体長40cmくらいの小型のペンギン。もうすぐ生まれてくる雛たちを安心して孵すことのできるルッカリー(営巣地)の候補地を探しに来たんだろう。 両手を広げて上手にバランスを取りながら、一生懸命にペタペタと前を行く仲間の後を追いかける姿は本当に可愛い。立

宇宙の果て、距離を測る

#10年前の南極越冬記 2009/11/6 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 長い1週間だった。年に2回、2月と11月には、僕の担当する地圏部門の大きな観測イベント、VLBI (Very Long Baseline Interferometry) 観測が行われる。このVLBI観測は、昭和基地(日本、東南極)の他に、O’HIGGINS(ドイツ南極観測基地、南極半島)、TIGOCONC(チリ)とKOKEE(ハワイ、カ

挨拶がわからない

#10年前の南極越冬記 2009/11/23 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 11月13日に、51次の先遣隊5人が飛行機で昭和基地入りしてから10日ほど過ぎた。人数が少ないせいもあるが、まるで昔から一緒に暮らしていたかのように、早くも皆馴染んでいる。 先遣隊を乗せたツインオッター機は、ロシアのノボレザレフスカヤ基地からベルギーのプリンセスエリザベス基地を経由し、はるばる昭和基地にやってきたのだが、飛行機がラン