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南極経由、宇宙行き。|10年前の南極越冬記

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2009-10、南極の昭和基地で越冬生活を送っていた当時、書き綴っていた紀行文。それらを10年が経ったのを機にまとめたものです。noteの予約投稿機能を使って、当時の日付から10… もっと読む
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2019年11月の記事一覧

極夜の入口

#10年前の南極越冬記 2009/6/1 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 5月30日を最後に、昭和基地は長い夜に入った。 これからは蜃気楼で浮かび上がりでもしない限り、太陽が全く昇らない極夜期になる。最後の太陽は、水平線の上に少しだけ顔を覗かせて滑るように西へと移動し、そして見えなくなった。 朝焼けと夕焼けの境目なんてそこには無く、オレンジ色の灯火が、南極の広い空をゆっくりと染め上げ、そしてまた暗闇の中へと

外の世界

#10年前の南極越冬記 2009/6/4ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 6月7日放送のTBS「情熱大陸」に、僕ら50隊の篠原洋一シェフ、麦沢京介シェフの二人が登場する。僕らがまだ日本に居たときから今日まで、約1年もの長きに渡って二人を追い続けた、その集大成だ。僕も昭和基地側の撮影で少し協力させてもらった。きっと僕も知らない二人のシェフの姿が見れると思う。ぜひ番組を見てもらいたい。 閉鎖された環境の中での食

極夜の音

#10年前の南極越冬記 2009/6/9 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 極夜に入って一週間が過ぎた。加えてすっきりしない天気が続いていて、めっきり外でシャッターを切る機会が少なくなってしまった。極夜で太陽が出ないとはいえ、まだ完全に真っ暗になるわけではない。雲さえ晴れれば、赤く染まった空を楽しめることができるのに残念だ。曇っていてはオーロラも星空も見ることができない。こういう天気だと、ヘッドライトを着けていて

南極の特別な日

#10年前の南極越冬記 2009/6/15ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 6月21日、日本だと夏至の日は、南半球にあるここ南極では冬至になる。この日は南極で生活する全てのひとにとって特別な日だ。極夜のちょうど折り返しの日でもあるこの日を挟んで数日間は、どこの国の基地でも Mid Winter Festival(極夜祭)で盛大に盛り上がる。極夜のせいで溜まった日頃の鬱憤を思い切り発散させるための、さしずめ南極

お祭りだって大変だ

#10年前の南極越冬記 2009/6/27 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ※MWF: Mid Winter Festival(極夜祭) ◇◇◇ 昭和基地は今日もブリザード。ブリザードになると基地の外へと出ることはできず、僕の仕事である観測作業はしばしのお休みとなってしまう。こんな日はもう諦めて、基地の中で調理や機械隊員の手伝いなどをして過ごす。今日は明日の昼飯の仕込みや、風呂の配管の清掃などを手伝わせてもらった。前