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「ソニー技術の秘密」にまつわる話

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ここでは、ソニー株式会社の研究技術開発の要を果たし、「ソニー創成期の基礎技術」を確立させた 木原信敏 (きはら のぶとし) の著書『ソニー技術の秘密』に記された研究開発の歴史を振…
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#磁気記録

ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者が残した名著 〜 『ソニー技術の秘密』 にまつわる話を

■ ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者1946年 (昭和21)年に井深大、盛田昭夫により創設され、現在では世界的な大企業としてその名を世界に轟かせている ソニー株式会社(Sony Corporation) その創業期より数々の「世界初」「日本初」の製品を誕生させ、ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者がかつて存在していました。 1950 (昭和25) 年に発売された、国産初のテープレコーダー『G型テープコーダー』。 1955 (昭和30)年に、ト

円盤状の磁気シートをレコードのように回転 〜 静止画を可能にした 『シートレコーダー』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (51) VTRの使用用途の一つとして、高速動作の分析が挙げられますが、VTR以前の高速動作の分析にはフィルムが使用されていました。 VTRも誕生直ぐには対応は難しく、機能が改善され、倍速やスロー再生といった特殊な再生方法を可能にする半導体メモリの導入によって実現のものとなったのです。 1971 (昭和46)年、世界初のビデオ・シートレコーダー (白黒動画像磁気記録再生機) 及び、カラー・デモンストレーター (カラー・スチール画再生機)

秘密裏に開発が進められ、半導体素子CCDとの融合により実現 〜 電子スチルカメラ 『MAVICA』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (53) 現像・焼き付けといった面倒なプロセスを必要とする銀塩写真よりも、もっと便利なカメラを作ることができる。 1980年 (昭和55) 年10月、ソニーの技術者・木原信敏は、VTR開発のノウハウを基に光学記録からさらに進んだ磁気記録による「電子スチルカメラ」の開発を決心します。 すでにシート状の磁気媒体に画像を記録するノウハウは、『シートレコーダー』や、 その他の磁気カードを活用したいくつかの試作品開発から手元にあり、CCDカメラ

幼児教育用視聴覚装置『トーキングカード』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (54) ソニーの創業者の一人・井深大は、次の世代に託す人材教育は0歳から始めなければ取り返しがつかない。という基本理念を持っており、この井深大の幼児教育の発想を実現する方法として、おもちゃ感覚で遊びながら語学を習得させるというものがありました。 その井深大の夢を叶えるために、ソニーの技術者・木原信敏は、動物などの絵が描かれた幅200mm高さ80mm程度の厚紙のカードの背面に磁気をコーティングし、これを再生する装置『トーキングカード』を開

日本の磁気記録技術の開発史の決定版! 〜 『日本の磁気記録開発 - オーディオとビデオに賭けた男たち』 中川靖造 著(ダイヤモンド社 1984)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (56) 企業戦略の視点から、日本における磁気記録技術の進歩の歩みを辿ったドキュメンタリー作品。 著者は、週刊誌や月刊紙の取材記者として活躍しフリーライターとなった中川靖造 (なかがわ やすぞう) 。 本書の他にも『次世代ビデオ戦争』、『日本の半導体開発』や『海軍技術研究所』といった日本の科学技術関連の著書をいくつか残されています。 「裾野の広い磁気記録開発史からみれば、ほんの一側面でしかない」 と、著者本人が語っているとはいえ、お

150分の映画をわずか1分でダビング!レンタルビデオ産業を活性化させた 〜 高速ビデオテープダビング装置『スプリンター』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (57) 『U-matic』や『ベータマックス』といった家庭用 VTRの商品の誕生により、誰もが簡単にテレビ映像を録画できるようになり、いつでも好きな時にテレビ番組を視ることができるようになりますが、ソニーの技術者・木原信敏は ビデオを単なるタイムシフトマシンに留めたくない と考え、映画などの娯楽映像を見られるのもホームビデオの楽しみであると考えるようになります。 家庭用VTRが普及すれば、それだけパッケージ映像の市場は拡大すると考え