歯磨き粉を集めるひと

北山まこ。25歳。人間。

彼女は歯磨き粉が大好きだ。
ずっと、歯磨き粉で検索をかけている。
毎月、歯磨き粉が家に送られてくるらしい。

彼女の家に行ったとき、なにか口にいれる度に、歯磨きを勧めてくる。

歯磨き粉を減らしたいのだ。

歯磨き粉で埋め尽くされている収納ボックスはアートに感じる。

歯磨き粉を集めるきっかけが、趣味探しだったらしい。
なにも趣味がない彼女は、いろんなことを試した。
せっかくなら毎日使用できて、部屋に荷物が増えない趣味を探した結果、歯磨き粉に没頭した。

不思議だなあ。本当に人って十人十色だと思わされる。

この間、久々に彼女にあった。
雑貨屋さんを巡りをして、見たことのない歯磨き粉を見つけた。
彼女は「物が多すぎる、資本主義は悪いかも知らんけど、ニッチな幸せを満たせるこの時代が嫌いじゃない」とドヤ顔で言った。

うまいんかよくわからない言葉。
私は、なにも言わずドヤ顔返しをした。
ミスった。場がしらけた。もっと言い返し方があっただろう。

場を正常にするため、彼女と一緒の歯磨き粉を買った。








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