思い出せないことが多い。

忘れっぽくなった。いや、もともと多くのことを覚えていられなかったんだと思う。
重篤な障害でも病気ではなく、ただただ日々をぼーっと過ごしているからなのか、
指の隙間から水がこぼれていくように、ちょっとずつ思い出が薄まっていく。
指の隙間がほかの人よりも少し大きかったというだけだ。

そういった具合で、私には思い出というものが少ない。特に小学校から高校にかけては壊滅的に記憶がない。
小学校の記憶はほとんどなく、好きだった給食も授業も、どんな校舎だったかも思い出せない。大人になってみたドラマや映画などのシーンが混入しもはやどこまでが自分の記憶で、どこからが後から付け加えられたのかもわからないくらいだ。
中学校の体育祭や文化祭も同じくでやった記憶もないけれど、出場競技順で並んだ数分の記憶はあるので、中学校で体育祭はやったのだろう。
高校時代はまだまばらにある。あるが弱い。ホームステイでNZに行った本来ならば強烈な記憶に残るイベントがあったが、北島に行ったのか南島にいったのか、町の名前もホームステイ先のファミリーの名前も思い出せない。
思い出せるのは、大きな崖がずっと続く海岸と、夕食で出た新聞紙で包まれた大量のポテト、帰るときに泣いてくれたファミリーの小さな女の子。それくらいだ。

たまに、何かの思い出のとっかかりだけを思い出すことがある。詳細は分からないけどそういえばこんなこともあったかなといった程度のごくごく小さなとっかかり。
詳細を思い出そうとしても思い出せなくて、古い友人に聞こうと思っても同じ思い出を共有する友人が誰なのかも思い出せない。
ただただ懐かしさのモザイクがかかかった思い出を思い出す。
すごくもどかしくて切なくなるけれど、なにも思い出せない。

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