東京の光

就職活動で東京に来た。

行きの飛行機に乗ったとき、2年前にロンドンに行った時のことを思い出した。

いまでもはっきりと思い出せる。ヒースロー空港への着陸態勢を整えた機体から夜の街の光がちらほらと見えた。

一面に広がる暗夜の中に人の心という奇跡が確かに存在することを証明してるみたいだった。

この光の中には、思索に耽る人、深酒をする人、陰謀説を説く人、アンドロメダの星雲の計算に没頭している人や愛を育んでいる人もいるかもしれない。

そして光を見るのと同時に消えている光の存在も感じた。そこには眠っている人や外で働く人の生活の抜け殻があって、そんな人たちの希望を認められた気がした。

そうこうしているうちに羽田行きの窓から富士山が見え、次第に機体は霊峰を中心に弧を描きながら高度を下げた。日本の象徴は薄水色に浮かぶように在った。

東京は空気が汚れているというが、そうは感じなかった。

電車に乗ると、人の一生を溜めに溜めたような黴と埃の匂いがした。左側のドアが開くと、睡気眼を二つ付けた老人や歓楽を語る学生が乗り込んできた。人の数がとても多いという印象を第一に受けた。

街の喧騒は気にならない。むしろ理想の音だったし、憧れそのものの形をしていた。

どうも都会は人を受け入れないらしいが、受け入れられないことに嘆く暇もないらしい。

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