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定額減税が面倒なのは、給与明細の表記どうこうじゃないんよ

いままでいろいろな規模の会社で、経理の仕事をしてきました。いまも少人数の会社の経理を担当しています。いろいろな会社で給与計算も担当してきました。

いまの会社では、Excelを使った「手計算」で給与計算をしています。給与計算はセンシティブな業務ですが、社労士や税理士でなければ難しいとか、専用の給与計算ソフトがなければできないといったものではありません。基本的には毎月同じような処理をしていけばよく、慣れと知識と自信があればExcelだけでも業務は可能です。

そんな経理職のわたしが「定額減税」についてどう考えているかというと、

めっっっっっちゃ面倒くせえ!!!!!!

という感じです。思わず太字にして改行してしまいました。本当にめんどくさい。もうちょっとなんとかならなかったのか。なったでしょ絶対。

まあ、でも、社員の皆さんの手取りが増えることは確かなわけで、ちゃんとやろうと思うわけなんですが。

この定額減税に関して、政府は「給与明細に所得税の減税額を明記するよう義務づける」ことを決めたそうです。そして、この件でインターネットが盛り上がっている様子が見受けられました。

「対応するのが大変だ」「事務作業が増える」「こんな直前の時期に義務化とか言うな」などの声がありました。が、個人的にはこうした意見については、ちょっと意味がわからないなと感じています。

だって、明細には書くでしょ。

基本給と残業代と役職手当とかを区分して書くでしょ。源泉所得税と社会保険料と厚生年金と雇用保険を区分して書くでしょ。年末調整をした月も、「年末調整額」を書くでしょ。給与明細ってそういうものだよ。普段の月とは違うイレギュラーな金額が含まれてるなら、それは明記するに決まってるじゃん。

義務化なんてされなくても、普通の給与計算の担当者であれば、普段から給与明細を毎月発行しているのであれば、定額減税の金額は給与明細に明記するはずなのではないかと思うんですよね。
「対応するのが大変だ」と主張している人たちは、いったいどんな給与明細を発行するつもりだったんだろうと不思議に思います。

ここで誤解されたくないのは、わたしも定額減税の制度は「めっっっっっちゃ面倒くせえ!!!!!!」と思っているという点です。本当にめんどくさい。ただ、それは給与明細に表記するかどうかではなく、そもそもの仕組みがめんどくさいんです。

それは間違えないでほしいと、わたしはすごく思います。ポイントを取り違えたままで政府批判の材料にしないでほしい。正鵠を射ていない批判は、相手に刺さりません。

定額減税の項目を給与明細に書くなら、年末調整のときに使っている項目をとりあえず流用してもいいだろうし、備考欄に書いてもいいと思うんですよ。もちろん、Moneyforwardとか弥生会計とか会計システムをつくっている企業は大変な苦労の上でこの減税に対応しているでしょうから、大抵の会社はそれを利用するだけで済むはずだし。自社独自システムを使ってる会社は御愁傷様すぎます。お疲れさまです……。

でも、そもそも給与って会社によってかなり千差万別あるから、給与明細のシステムって意外と自由度はある場合が多いはずなんですよね。
役職手当みたいなものが何種類も組み合わさってる企業もあるし、社宅家賃が引かれたり共済金が引かれたりする企業もあるし、すべてのパターンを網羅可能な給与システムにならない分、「自由記述欄」の用意があるものだと思う。違ってたらごめんなさい。

わたしが言いたいのは、給与明細への記載義務なんてことよりも面倒なことがあるってことなんです。扶養親族の人数を確認し直さなきゃいけなかったり、控除しきれなかった金額を数ヶ月にわたって管理し続けなきゃいけなったりするのが面倒なんだよ!!!!! 夏のボーナスがある会社ばかりじゃないんだよ!!!!!! 年末調整で1回で済むようにしてくれればなんにも文句はないんだよ!!!!!!!!!!!!

……などと思っております。

今回、この直前のタイミングで、しかも「減税のありがたみを実感できるように〜」みたいな馬鹿馬鹿しい理由による義務化によって、定額減税のくだらなさが広く知れ渡ったこと自体は、よかったのかなと思っています。
ただ、そうはいっても、「給与明細に記載するのは大変だ」みたいな意見をもとに批判が広がるのは、なんというか経理の仕事をする者として看過したくない気持ちがあり、こういう文章を書くに至りました。

最後に、全国の市町村で住民税徴収事務に当たられている地方公務員のみなさまと、3月決算がまだ締まっていない多くの同業者たちへの深い感情を示してこの文章を閉じたいと思います。みんながんばろうね。

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