見出し画像

眼科診療における具体的な感染対策① 手指衛生

手指衛生の重要性

感染症看護CNSのしんかいのりこです。

前回に引き続き、今回は眼科診療における具体的な感染対策①手指衛生について書かせていただきます。

2020年1月に国内で発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックが収束せず、3年が経過しようとしています。日常的にマスクをつける日々が続き、家庭内だけでなく駅やお店などあらゆるところにアルコール手指消毒剤が設置され、手指衛生の大切さが広く認識されてきました。この手指衛生を改めて考えてみたいと思います。
 
アルコールで手指を消毒することや石鹸と流水で手洗いを行うことで、手の微生物数をできる限り減らすことを手指衛生と言います。
 
手指衛生の目的は、微生物が私たちの手を介して人から人、または物から人に伝播することを防ぐためであり、世界保健機関 のWHO をはじめとして、国内外のガイドラインでは手指衛生を最も基本的かつ重要な感染対策と位置付けています。
 
新型コロナのパンデミックで「手指衛生は重要である」というのは、広く認識されてきましたが、この手指衛生を行うと、様々な感染症が減少する、といった論文が日本だけでなく、海外から数多く発表されています。そのため、手指衛生は感染対策に有効であるというのは疑う余地がないと言えると思います。
 
効果的な手指衛生を考えた時、タイミング=いつやるの?、そして方法=どうやるの?という2つの観点から考えることが重要です。
これは比較的シンプルな考え方で、タイミングは、WHOが推奨している手指衛生が必要な5つのタイミングで実施をするということです。
 
WHOが推奨している手指衛生が必要な5つのタイミングとは
・患者に触れる前
・清潔操作の前
・血液や体液に触れた後
・患者さんへに触れた後
・患者周囲の環境に触れた後
 
になります。眼科診療の現場では、患者さんの診察やケア、検査、処置の前後、バイタルサインの測定前後、点眼の前後、待合室や診察室などの環境清掃を行った後、診察機器に触れた後などがそれにあたると思います。
 
では、次に方法です。
方法は主に2つ、擦式アルコール手指消毒と石鹸と流水による手洗いです。
今は、アルコール手指消毒がスタンダードとされています。その理由としていくつかありますが、その一つに、石けんと流水の手洗いに比較して短時間で効果が得られるメリットがあります。20秒ほどかけて指先、手背、手掌、指の間、手首までの範囲をしっかりと擦りこむ必要があります。全ての部位に擦り込まないうちに、手が乾燥してしまった場合は、量が足りていませんので、手が大きい方などは約20秒間擦り込むのに十分な量、例えばポンプ式の場合は、2~3プッシュ必要かと思います。
 
一方で、手に血液や体液などで汚染した時や、アルコールに効果のうすいウイルスや細菌による感染症が疑われる患者、もしくは環境に接触した後には石けんと流水による手洗いが必要です。20~30秒かけてまんべんなくこすり洗いし、十分な水で流した後、ペーパータオルで完全に乾くまで拭き取る必要があります。 
現在は、新型コロナの流行で、ずいぶんと手指衛生の実施率が上昇してきていると思いますが、洗い残しがないように必要な時間をかけて行うことがとても重要です。

手指衛生について、感染管理のスペシャリストである坂本史衣先生の記事が分かりやすくとても参考になります。今回の記事も坂本先生の記事を参考にさせていただきました。多くの書籍やSNSで貴重な情報を発信して下さり、いつも勉強させていただいています。