Chapter 2-3 ヴィンセント,罪と罰

このように,FF7の中で語られる「問題」とは,実は我々の世界にも当てはまるということ,そしてその「問題」と決して無関係ではない我々は,責任のある当事者であるということを見てきた。

ここまでくればヴィンセントの役割はおのずと決まってくる。ヴィンセントに託された最大の役割とは,当事者でありながら傍観者の立場を取り,何もしない人々の罪を訴えることにあるのだ。

ヴィンセント「この身体は……私に与えられた……私は……ガスト博士や宝条
……そして,ルクレッツィア*を止める事が出来なかった……見て
いることしか出来なかった
……それが,私の」原文ママ(ルクレツィアの祠にて)
ヴィンセント「セフィロスを倒す……いとしい女性の息子を倒す……私はまたを犯そうとしているのか……それとも,見ているだけだった私に
できる,せめてものつぐないか……」(ハイウインドのコックピットにて)

FF7中で語られる「問題」とは決して他人事ではなく,我々の現実社会に敷衍して語ることが出来る。ともすればとかく無関心(とは言えないまでも“見てるだけ”)になりやすい現代人の罪は,自分自身へのしっぺ返しとして罰せられる。『この身体は……私に与えられた罰……私は……ガスト博士や宝条……そして,ルクレッツイアを止める事が出来なかった……見ていることしか出来なかった……それが,私の罪』。ヴィンセントの言葉はこうした現代人の罪と罰を示唆してくれている。

FF7を読み解く鍵
ヴィンセントの使命:傍観者の罪と罰を知らせる

以下は”見ているだけ”のヴァリエーションである。

『遠くからながめてるだけじゃなにも変わらないって気づいたんだろ』
ブーゲンハーゲン「だがな,ナナキ。わしは最近考えるんじゃ。こんなにも星が苦しんでいるのに,星の一員,いや,星の一部であるわしらにできるこ
とは本当に何もないのか,とな。結果はどうなろうと何かやること
が大切なのではないか?

ヴィンセントの名前の由来はChapter 3にて明らかにする。


語釈
*ルクレッツィア:「ルクレツィア」が正しく(設定資料『ファイナルファンタジーⅦ 解体真書』(ASPECT)),実際作中でもその通り表記されていた。愛した女性本人を前に,ヴィンセントまさかの呼び間違い。

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