左重心生活7日目



左足の震えは依然として続いております。それもそのはず、僕はこの20年間さらには野球という激しいスポーツの中でも右重心オンリーだったのですから。これから左重心で立ち続けたところでお互いのバランスが一致するには30年以上の歳月がかかってしまう可能性すらあり得ます。

しかし、どうやら重心がおよぼす変化の全てが身体的なものだけでは、無いようです。

夕べの出来事でした。リビングに足を運ぶと両親が他愛のないことで言い合いになっていたのです。珍しいことではありません。ほっておけばすぐに元通りになるトムジェリです。しかし、いくらトムジェリとはいえ、自分を産み育ててくれた両親の言い合いは気持ちのよいものではありません。適当なタイミングで部屋に戻ろうと重心が部屋のある右に傾きかけたその時でした。

「出会ったときの気持ち忘れちゃってね?」

沈黙がリビングを包みました。2人はポカンとした顔で僕を見つめています。僕も、ポカンとした顔で2人を見つめました。
掠れるような弱く力のない声でした。しかし、確かな輪郭をもって両親の鼓膜を震わせたのです。今までの僕ではあり得ない行動でした。左半身が真っ赤に膨れ上がり今にも泣き出しそうな表情をし、右半身が何かを悟ったようにフッと笑っているように思えました。

重心変えます宣言から1週間、多くの批判を受けました。重心を変えてなんになる。きもちわりい。何がしたい。
何も言い返せませんでした。僕すらも重心を変える意味なんてわからなかったのですから言い返せようもありません。しかし、何か変わるんじゃないかと、どうしようもない自分のどこかの一部分が重心によってがらっと。そんな漠然とした予感がしたのもまた事実です。

もしかしたら、重心は今までの僕になかった扉を開けてくれるある種のトリガーになるのかもしれない。そんな前向きな気持ちにさせる瞬間でした。



重心チェンジザワールド…?


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