自動販売機1台の年間売上についてフェルミ推定 (10分) *3112文字

今回は無料サンプルとして、フェルミ推定の解答例を掲載します。
筆者は他にもケース問題の解答サンプルを同形式の文章で販売しておりますので、興味がございましたらご購入ください。
なお、今回は10分程度で回答を作成しました(電卓は使用しました)。

<筆者の回答紹介>
*論理的におかしいと感じる部分や、論理の飛躍が感じられる部分もあるかもしれませんが、それも含めて筆者の回答ですので、読者の皆様の思考力と比較する際にお役立てください。

まず今回のお題について、筆者の作成した回答とそのフローを説明します。以下の画像は実際に作成したメモです。

画像1

画像2

結論の前に前提だけ説明しますと、今回は
・新宿区の某所にある体育館内に設置されている自動販売機
・某飲料メーカーが運営している
・体育館のアリーナ入口付近に並んで2台が設置されている
・アリーナの大きさはミニバスコート2面分
・その他に特徴的な施設(ジムやプールなど)はない
・営業時間は9時〜21時の1日12時間営業
・2時間の利用を利用可能時間の最低単位としている(メモにはない)
・体育館は反面ごとの利用が可能(メモにはない)
という様におきました。

さて結論ですが、この自動販売機では1台あたり年間187万5千円の売上を産出しているのではないかと考えました。

まず、
1年間の売上=年間客数×一人当たりの購買回数×客単価 と分解しました。因数については、
年間客数:1年あたりの自動販売機利用客数。後に説明する体育館の利用回数ごとに客を分類しているため、例えば利用回数が1日に2回の利用客は二人としてカウントしている。
一人当たりの購買回数:利用回数ごとの購買数。
客単価:特記なし。
と定義しました。

先に購買回数についてですが、これは1.25と設定しました。
これは、夏場(3ケ月で考慮)は高気温から一人当たり2回ほどの飲料購入が望め、それ以外の季節ではあまり複数回の利用が望めないと考え、平均値を取ったためです。

次に年間客数を考えていきます。
客数をより詳細な因数に分解してみた結果、
年間客数=体育館利用者数×水分必要率×購買選択率×自動販売機選択率
という様に分解できました。各因数については、
体育館利用者数:1年あたりの体育館利用客数。後に説明する体育館の利用回数ごとに客を分類しているため、例えば利用回数が1日に2回の利用客は二人としてカウントしている。
水分必要率:体育館利用者のうち、水分を必要とする人の割合。例えば見学者やマネージャーなどで水分を元々必要としない人はこれに該当しないが、相当に少数である(役割に関係なく水分は必要とする人が多いであろう)と考え今回は1で設定。
購買選択率:水分の購入を選択するか、持参などで購入しない方法をとるかのうち、購入を選択する人の割合。
自動販売機選択率:水分を購入する人のうち、該当自動販売機での購入を行う人の割合。
と定義しました。
さらに体育館利用者数について、
体育館利用者数=週あたりの体育館使用組数×平均人数×年間週数
と分解しました。各因数については、
1週あたりの体育館使用組数:1団体が体育館半面を2時間利用した時を1回としてカウントした場合に、1週間で体育館が利用された回数の合計。
平均人数:1団体あたりの平均人数。
年間週数:1年間の週の数。すなわち52。
と定義しました。

ここまで因数分解した上で、各因数の値を検討していきます。
客単価:150
水分必要率:1
購買選択率:0.5
*筆者の経験から、女性は飲み物を用意する人が多く、男性は用意しない人が多いと考え、2分の1と概算。
自動販売機選択率:0.9
*筆者の経験から、わざわざ体育館の敷地外へ飲み物を買いに行く人は少数と考え、感覚値として算出。
平均人数:15人
*筆者の経験から、体育館半面を利用して行えるスポーツから考えても15人程度と考え、感覚値として算出。

週あたりの体育館使用組数:57
*まず1日あたりの体育館を利用可能な回数を考えると、
2面×(12時間÷2時間)=12回であり、これについて平日・休日とそれぞれの昼帯(9~19時)・夜帯(19~21時)に分けて利用回数を予想する。
まず夜帯についてであるが、仕事終わりの社会人や授業終わりの学生が利用できる時間帯であり、新宿区であることも考えてフル稼働すると考える。
次に平日の昼帯についてであるが、社会人は仕事があり、学生は授業がある時間帯であるが、筆者の経験上、授業がない学生や既に退職している高齢者が利用することがあるため5割の利用率で設定。
最後に休日の昼帯であるが、基本的には全ての属性の人が利用できる時間帯であるが、9~11時という朝の時間帯も含んでいるため、9割の利用率で設定。
以上を計算すると、
平日5日×(5+2)+休日2日×(9+2)=57となる。

最後に全ての値を当てはめて計算した結果、1年間で2台あたり約375万円の売上、すなわち1台あたり約187万円の売上を計上しているという結論になりました。

〜フェルミ推定の評価〜
日本自動販売機工業会の2004年度の資料によれば、飲料の自動販売機における平均売上は103万円で、食品の自動販売機については78万円でした。これは田舎から都会までの自動販売機を含んでいるため、数字としてはかなりいい数字が出ている様に思えます。
しかし、少し考慮が及んでない部分が大きく2点ありました。それは、
①飲料の自動販売機にしか検討をしておらず、食品の自動販売機の可能性を検討していない
②購買選択率についての定義不足と、季節による購買選択率の変化の考慮がない
です。以下、詳細に説明していきます。

①飲料の自動販売機にしか検討をしておらず、食品の自動販売機の可能性を検討していない
最初から飲料の自動販売機しか頭に入っていなかったために、平均売上を調べてハッとしました。体育館であればカロ○ーメイトなどが飲料と同じ自動販売機に入っていることはよく見かけますし、大きな体育館であれば(今回は違う設定ですが)食品の自動販売機もよく見かけられます。特にカロ○ーメイトなどは飲料と合わせて購入されるケースが多く、客単価が増加します。この点について考慮していなかったのは反省点であると思います。

②購買選択率についての定義不足と、季節による購買選択率の変化の考慮がない
購買選択率の値設定に関して、筆者は単純に「水分の購入をする割合」としましたが、購入するタイミングについての明記がないために、例えば体育館に向かうまでの道中で購入する人の分類が曖昧になっています。それらの人を「購入を選択しない人」と分類すれば因数分解の時点では問題ありませんが、購買選択率の値はもっと低くなる様に思えます(男女関係なくコンビニなどで買ったペットボトル飲料を持ってくる人が多かった気がする)。さらにイメージを深めれば、夏場ほど飲料の必要性を強く感じ、大容量のペットボトルを道中で購入しがちだとも考えられます。そうなればさらに購買選択率は下がり、さらには夏場の購買回数も下がり得ます。そのあたりの考慮が浅かったと反省しました。

他にも購買回数は客数の中で分解した方が分かりやすかったのではないかとか、水分必要率は必要だったかとか、購買選択率という因数名の分かりにくさだとか、体育館事務員など利用者以外の購入はないかなど反省点は多数ですが、後々余裕があれば追記しようと思います。

<補足>
前提の項目で「(メモにはない)」と記載しているものがあります。これは筆者が回答を進めていくうちに必要だと考えた前提を、記載できなかったが説明には必要であるため口頭で話す、という状況を想定して記載しています。

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