見出し画像

知っているだけで周りと差がつく!映像制作における音響処理、たった5つのポイント!

割引あり

1.はじめに

皆さんはじめまして。くっしーEXです。
この記事では、制作された映像にゼロから音声を当てていく方法を各項目に分けてご紹介させていただきます。

記事のレベル感としては、音声編集の知識が全く無い方~素人臭くはないがもう一段レベルアップした作品を作りたい方向けになります。
主に必要となるものの解説や考え方について書いていくので、各ソフトウェアの使用方法や具体的な設定値などは基本的に触れません。それらは実際に手を動かしながら覚えていただければと思います。

まずはじめに自己紹介から。
私、くっしーEXは、3年前にフリーランスとして独立後、作編曲や楽曲のミキシングを主な業務として行ってきました。
ただ、これから先の需要と供給で考えた際にこれだけでは食べていかれないと思っていたところ、知り合いから声をかけていただき映像やゲームなどの音響に携わることとなりました。

そして数々の作品のサウンドディレクターも兼ねた劇伴制作やSE制作などを続け、今年2023年2月にVRSNSのVRChat上で開催されたVRCMovieAwardでは栄えある音響音楽賞を受賞するに至ります。

これらの経験を活かし、これからも増えるであろう3Dやアニメで映像作品を制作したい方々に向けて、音響処理の楽しさ、奥深さ、大切さを伝えて行こうと本記事を執筆しています。

私の携わった作品を全てご紹介することはできないので、記事執筆時に閲覧できる最新の動画である下記トレーラー映像を、著者のおおよそのレベルとして参考にしていただけたら幸いです。
制作期間は6日前後、実時間だと15時間くらい使った案件だったと思います。

また、本記事内で紹介するリンクなどに関しては一切アフィリエイトではないため、ご安心いただければと思います。


2.基礎知識、用語

ここでは、本記事内で何度か出てくる専門的な知識、用語について簡単に解説していきます。概要のみの説明になるので、より詳しい情報が気になる方はぜひご自分で調べてみてください。

・MA(エムエー)

マルチオーディオの略。アフレコ音声やSE、BGMなどをまとめる作業の総称。

・SE(エスイー)

サウンドエフェクトの略。足音やドアの音などから、SFのような現実には存在しない音も指す。効果音の総称。
IT系の職業でもSEと呼ぶ分類がありますが、だいたい文脈で分かるので特に区別されることはありません。

・DAW(ダウ・ディーエーダブリュー)

デジタルオーディオワークステーションの略。音声編集を行うためのベースとなるソフトウェアを指す。主に音楽制作で用いられる。

・プラグイン

上記DAWで使用できる拡張機能。別の会社が出しているものも多く、規格が合えば問題なく使用できる。

・EQ(イーキュー)

イコライザーの略。音の帯域バランスを整える際に使用します。
特定の周波数をカットしたりブーストしたりできる。

・Reverb(リバーブ)

聞き馴染みのある方も多いかもしれませんね。
残響成分のことを指し、リバーブを強めにかける、といった使い方をすることが多いです。
残響成分とはトンネル内で大声を出した時にもわもわと音が響いてるアレです。
似ているもので山に向かっておーい、と声を出した時に何度も跳ね返ってくるものはディレイ(遅延)と言います。

その他、記事中で不明な用語があればコメントいただければ追記します。

3.編集に適したソフトウェア

この項目では、映像と音声を合わせて編集するために必要なソフトを紹介します。
ここに記載されているものでなければいけないということはありませんが、個人でやるレベルであれば使用方法、トラブルなどを検索する機会も多いと思うので、シェア率の高いものを選ぶと時間の節約になると思います。

・Cubase

Steinberg社のソフトウェア、キューベース。
ネット上でのシェア率も高く、使い方やトラブルシューティングのヒット率も高いため、困ったことが起きても解決できる確率が高いです。
グレードによってはビデオ同期機能が使えないので、新規で購入する際は気をつけてください。

・Nuendo

上記と同じくSteinberg社のソフトウェア、ヌエンド。
こちらはCubaseの上位互換と言われており、映像編集に適した機能も多数搭載されています。
フルライセンスが約11万円と、趣味で投資するには少々値が張るのがネック。

・Studio One

PreSonus社のスタジオワン。こちらもcubase同様、かなりのシェア率を誇るDAWです。私は数年これを愛用しているので、映像編集でも使用しています。
ビデオ同期機能は最上位版にしか搭載されていないので注意。

・Pro Tools

AVID社のDAWソフトです。
現場で使用されていることが多いので、名前くらいは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
サラウンドやDolby Atmosにも対応し、将来的にスタジオワークを視野に入れるのであれば使い方を覚えておいて損はありません。

ただ、このソフトのメリットはAVID社のハードウェアとの統合や、別スタジオとプロジェクトファイルをやり取りしながら進める場合の整合性が担保される点が大きいので、個人ユースだとあまりメリットを享受できないかもしれないです。

・RXシリーズ

こちらはiZotope社のRXというソフト。
DAWではなく、ノイズ除去を主軸とした音声編集用ソフトです。
後述する項目『アフレコ音声の編集』で私は使用しています。声優が自宅で収録した音声を扱う場合、ほぼ100%必要になるでしょう。

4.効果音、環境音の作成

ここからはいよいよ実務的な内容です。
前提として、音声を当てる映像はおおよそ完成済(尺の変更などは無い状態)を想定しています。おおよそとした理由は、カラーグレーディングなどのポストエフェクトや、グリーンバックのはめ込み背景などはそこまでタイミングに関係してこないためです。

さて、効果音や環境音を映像に当てていく場合、主に下記2つの方法があります。
・映像に合わせて実際に現実で音を出し、それをマイクで集音する。
・販売や配布されている収録済みの音源を使用して、イメージに近いものをDAW上で切り貼りする。

前者はちょっとしたスイッチの音やドアの開閉音、台所の音や部屋の窓越しで聞こえる雨の音などを使いたい場合にはいいかもしれません。しかし、実際の映像で必要となる効果音は、自分で収録することは難しいものから現実的に存在しないものまで多岐にわたります。
そのため、ここでは主に後者の方法を解説します。

DAW上で切り貼りをすることがどのようなものかピンとこない方もいるかと思います。実際のプロジェクト内ではこのような感じ。

NINE2 トレーラー映像のプロジェクトより

上記のようにそれぞれの波形の長さ、タイミングなどを合わせていく作業です。

ちなみに、前者の方法を用いて映像に多様な音を吹き込む職業を『フォーリーアーティスト』と言います。
面白いメイキング動画を貼っておくので、興味のある方はぜひご覧になってください。


・考え方

まずはじめに、効果音を作る(ここでは便宜上、既成音源を当てていく場合でも作ると表現します)にあたって必要なものは『この場合どういう音が鳴るのか』というイメージです。
どんなにいい音源をいくつ持っていても、イメージができないのであれば映像を引き立たせる適切な効果音を作ることはできません。
現実ではこういう物体が動くとどういう音が鳴るのか、といったことを考えながら音をあてていきましょう。

ここから先は

11,621字 / 3画像 / 2ファイル

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?