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ダンジョン・ワールド:長めのプレイ例

この記事のアップデート版をこちらで公開してます
https://note.com/feltk/n/nd0ec6925e5de
(混乱を避けるために、こちらの記事は近日中に削除予定です)
ガイドの全訳となっており、今回はルールやプレイ方法の読み解きも含まれます(分量があるので3分割、記事の冒頭にリンクあり)。
ルールの読み解きにあたる「ダンジョン・ワールド・ガイド(1)」を念頭に読むと、このプレイ例がよりわかりやすくなるでしょう。

はじめに

この記事は『Dungeon World Guide version 1.2』の「長めのプレイ例」パートの訳になります。このガイドはファン作成のものですが、ルールブックの補完として非常に出来がよく、現在は公式サイトで配布されているほどです。
今回掲載する実プレイ部分も、示唆に富んでおり、よく書けてます。もちろん、著者のGMとしての方向性が随所に出ており、これが正解というわけではありません。その点は差し引いて読んでいただければ幸いです。
このガイドの翻訳もすでに終わっており、微調整を加えたものを『ダンジョン・ワールド日本語版』のクラウドファンディングにて配布予定です。詳報はもう少しお待ちください。

プレイの例

この項は、私(訳注:ガイドの著者)のキャンペーンから引っ張ってきました。いくつかは実際に起きたことなので、ここのルールと信条が実世界でも役立つ様を確認できるでしょう。ムーヴの実運用とともに、この小冊子のアドバイスを実プレイで用いる様子を確認できるはずです。サイドバー(元のテキストではそういうレイアウトでした)には説明と注釈がたっぷり付いているので、テキストを読む流れを遮られることなく洞察が得られるでしょう。ところで、当然ながらプレイヤー・キャラクター全員には名前があったものの、この例においてはクラス名のみで識別する形を取ってます。

GM:「よし、というわけで、古代の塔へと続く扉は、蝶番からぶら下がる形で開いている。君たちは、決心固く、中に分け入る。石造りの控えの間は、石の粉と破片だらけだが、まるで何かがうろついたかのように所々、ごちゃごちゃになってるよ。前方には、頑丈な花崗岩製の、飾りたてられた分厚い両開きの扉が控えている。壁を覆うのは、彫り込まれた美しいフレスコ壁画で、古代のドワーフの戦争の場面が描かれている。ここにはいくつか興味を引く物がある。部屋の隅っこの小さな人型の骨は、ずっと昔に、原形を留めないぐらいに粉砕されている。また、石の床には深いひっかき傷があり、金属を引きずったかのように見える*1」
レンジャー:「両開きの扉は鍵が掛かってる? 開いてみるよ」
シーフ:「待った! 骨があるって言った? そんで、床にひっかいたような傷だって? 刃のトラップに違いない。全員後ろに下がって、僕に任せて欲しい。《トラップの専門家》を使うから……*2」
 彼はダイスを手に取って、振ろうとする
GM:「いいね、どういう行動を取るんだい? 正確にはどのようにしてトラップを調べるのかな? どう動くの? 棒で突いて、部屋を調べるとか、かな?*3」

このサイドバーでは、起こっていることにコメンタリーを加えていきます。論法、舞台裏の思考過程、といったものの解説です。
*1:冒険が求めるものを常に口にする、でしたね。細部を差し控えたりしないか、さもなくば細部への《事実の識別》をプレイヤーに行わせてください。
*2:クラスの能力に合わせた機会を提供する好例でもあります。
*3:常に質問する、です! どのようにして成し遂げようとするのか? どんな感じなのか? ゲーム内フィクションの詳細を手に入れてください。


シーフ:「いいとこつくね。まずはひっかき傷を調べ、どの角度から付いたのか確認して、それから刃がどこから来たのか目で確認します。本当に慎重に歩みを進め、プレッシャープレートやトリップワイヤーを探すんじゃないかな。鋭い目でひたすら床板全体を見ますよ。どうでしょう? よろしいですか……じゃあ合計は11です! 3つ全ての質問ができるってことで。ここにトラップはある? んで、どうやったら起動する? 起動したらどうなるの? そしてここで他に隠されているものは?*4」
GM:「わお、いい出目だね。もちろん、確かにトラップはあるよ。ドアの取っ手を回したら起動する」
 レンジャーは、すぐさまドアの取っ手を放すジェスチャーをする。
GM:「疑っていたような刃ではないよ。刃を収めておく隙間はない。実のところ、とても妙な感じだ。扉の枠には目に見える金属の線がつけられており、左右の壁に描かれた石のフレスコ画につながっている。扉の取っ手が回されたときに、その部分がスライドして開くように見える。一番奇妙なのは、隅っこの骨だね。コボルドのものなんだけど、刃で死んだんじゃない。明らかに、巨大な何かに叩き潰されて死んでいる」
レンジャー:「この状況全体が、かなり変だなぁ。辺りをうろついて、《事実の識別》で何が起こっているのかを明らかにしよう。出目との合計は8なので、質問はたったひとつだね。『最近ここで何が起きたの?』かな*5」
GM:「君は姿勢を低くして、埃に残された痕跡を詳しく調べる。数多くの小型のクリーチャーがここを通過しているよ。おそらくたくさんのコボルドだ。そして、石の板がスライドして開き、非常に大きな何かが出てきたのは明らかだね。どんなデカブツかはわからないけど、二本の脚で歩き、コボルドを叩き潰して死に至らしめている。残りのコボルドは、扉を通り抜けてから閉めたようだね」
シーフ:「なるほど、じゃあ《裏稼業の秘訣》を使って、トラップを解除するよ。ペンチとワイヤーと小刀を取り出して、扉の仕掛けに取りかかるぞ*6。出目の合計は7だけど、どういうことになるんだろう?」

*4:これに続いて、質問に答えつつも、全ては教えないようにしているのもご覧あれ。全部バラしては楽しくないので、謎を残しておくべきです。もちろん、私は質問に答え、彼は答えを得たわけですが、そうしたからといって、状況を説明している間にも緊張感は生み出せるのです。
*5:まあ、このトラップの前の犠牲者が、腐り果てて今や骨になってしまったのははっきりしてます。けれども、それは厳密に言えば最近起きたことではありません。けれどもそこにはこだわりませんでした。明らかなのは、私が彼に説明する義務を負っているということなのですから。
*6:しばらくすれば、プレイヤーたちは問われなくても、自分たちがそもそも何をしており、どのムーヴを用いるのかを、伝えてくれるようになります。

GM:「選択肢ってことだね*7。 内部に探りを入れていると、ワイヤー二組がみつかるよ。これはドワーフ職人の手になるものでとても複雑だけど、うち1本が石の板を開き、もう1本が何らかの装置を作動させるものだとわかる。1つを解除すれば、もう片方が作動するだろう。なので、どちらを停止させるか選ぶことになる」
シーフ:「つまり、未知の仕掛けを作動させるか、石の板を開くかってことだね。うーむ、じゃあ石の板が開いちゃうことにしよう。全員、部屋に入って、準備して」
GM:「石の板は揺れ動いて開く。動力は水圧オルガンみたいなものだ。石の板は壁に引っ込んでいき、小さなアルコーブが露わになる。2体の真鍮製の巨人を、なんとか収めることができる大きさだ。巨人は、ドワーフの作ったオートマトンだね。戦争のために作られた、重みのある真鍮の装甲をまとった機械人形だ。でも、これらのオートマトンは起動していない。シーフの選択は賢明だったてことさ。オートマトンは、完全に静止している。はめ込まれたルビーの瞳が、真っ直ぐ前方を見つめるのみだ*8」
ウィザード:「そのルビーはどれぐらいの大きさ?」
 全員がどよめく
ファイター:「またやらかすんじゃないぞ。ルビーはそのままにしておこう。まったく、強欲とされているシーフよりもひどいな」
ウィザード:「実験に必要なんだ……魔法の材料だからさあ*9」
GM:「そうなの? 君の呪文は全て、宝石から力を得ているの? 知らなかったよ」
ウィザード:「いや、特定の儀式魔法だけさ。ええっと、粉状にすり潰して、魔法陣を描くのに使うんだ*10」
GM:「ルビーは、ハーフリングの拳ぐらいの大きさがあるよ。君の材料袋にはぴったりだね」
 全員、再度どよめく
ファイター:「ダメだって。たぶんオートマトンが動き出して、皆殺しにされちゃうよ。放っておこう」
シーフ:「もうひとつのルビーは僕のものだ! 独り占めはさせないぞ!」
ウィザード:「取りかかるよ。この機械人形をよじ登り、ポケットナイフでルビーを取り外しにかかる。そうするには、どれでダイス・ロール?」

*7:これは難問。7-9の2つの選択をちゃんと見いだすのが難しいこともあるのです。特に、簡単なトラップの場合。ここでは、このトラップが何をするのかを考え、2つのパーツに分けました。壁の中にはオートマトンたちがおり、トラップはそれらを起動して、解き放つわけです。ここでは「成り行きを告げ、たずねる」を行っています。
*8:ここで、かなりの富を明示しています。GMは、何か危険なことが起こることが分かっていればよいのです。
*9:単なる言い訳ということは十分に承知していますが、クールな詳細だと思ったので、問い詰めていきます。
*10:最高! 『ダンジョン・ワールド』が大好きなのは、ひっきりなしにこういったことが起きて、なにげないコメントが重要なものになることがあるからです。こういったディテールを聞き漏らさないようにしましょう! 当然ながら、私は新たに登場したこれらのルビーで、彼を釣ろうとしています。

GM:「ダイス・ロールなしで、成し遂げられるよ*11。金属の眼窩のあたりにナイフを差し入れることで、ルビーは緩み、手の中に転がり込んでくる。けれども、そうするやいなや、この機械人形は、驚くべき速さで動きはじめる。その手が、君を掴もうとしてその喉元に向かってくる。どうする?*12」
ウィザード:「げげっ、飛び退いて、ファイターの後ろに逃れようとするよ!」
GM:「素早く動くことで《危機打開》する感じだから、ダイス・ロール+【DEX】で。」
ウィザード:「……5だった。完全に失敗?」
GM:「その通り、機械人形は、君にとってはあまりに素早い。巨大な真鍮の手が突き出され、君の首を掴むと、君を床から持ち上げて喉を絞めてくる。君の足は、床の上数フィートのところにある。残りの人たちはどう対応する?*13」
シーフ:「事態がどう推移するかはっきりするまで、隅っこに隠れます」
ファイター:「走って割り込み、機械人形の締め付けを解こうとする。ハンマーを腕に叩き付ける感じかな?」
GM:「なるほど。君が真鍮の怪物に向かって走っている間に、オートマトンはもう片腕を上げると、その手が回転して、旋回する刃と化す。君が近づくと同時に、ヤツはそれを振り下ろし始める」
ファイター:「つまり、この状況は《ハックアンドスラッシュ》かな?*14」
GM:「そいつに損傷を与えようとする? それとも手放させようとするだけ?」
ファイター:「もちろん、損害を及ぼすよ。とにかく、みんなに攻撃させないために向かっているんだから。その腕を破壊したいな」
GM:「そうなると、やっぱり《ハックアンドスラッシュ》だね。ダイス・ロール+【STR】で」
レンジャー:「9だ、悪くない」
GM:「君は突撃するが、ヤツは君の予想よりもずっと素早かった。オートマトンは電光石火のごとく腕を突き出し、回転する刃は君の防具をズタズタにする……5ダメージだ。君の胸当てから血が飛び散る。けれどもそれによって隙が生じ、腕が伸びきったところに、君のウォーハンマーがたたき込まれ、真鍮の装甲に突き刺さり砕く」

*11:宝石を引き剥がすのは【筋力】チェックなどではありません。『ダンジョン・ワールド』は困難さではなく、その成り行きこそが主眼であることを忘れないでください。ウィザードがこの行動のとれない理由が、私には思い当たりませんでした。
*12:これこそが、戦闘の始まりとなります。けれども、イニシアティブはなく、滑らかに移行しています。私はモンスターの攻撃の始まりを描写して、反応を待ちます。この場合、彼は飛び退くことにしたので、《危機打開》を要求しました。明々白々ですよね。掴まれるのは危険極まりないので。
*13:現在のキャラクターが依然として危険にさらされている間に、次のキャラクターのアクションにスイッチするのは、よいやり方です。こうすることで、緊張感のある戦いに必要なハラハラする感覚を、プレイヤーに抱いておいてもらうのです。
*14:ここで《ハックアンドスラッシュ》か《危機打開》を話し合うことも出来ます。彼の目的が、機械人形からウィザードを解放するだけなら、強打で友人を自由にする間の、刃に対する《危機打開》となるかもしれません。けれども、プレイヤーは《ハックアンドスラッシュ》を提案しており、それは敵にダメージを与えようとすることを意味します。念のため、私はそれを明確化させてます。

ファイター:「へっ! 9点のダメージだ」
GM:「おー、そうだね、分厚い真鍮の鎧は、君の一撃を吸収するものの、ダメージが大きいのでへこんで割れる。機械の腕が二つに折れ、ウィザードは息を切らしながら床に落ちることになるよ*15。レンジャー、君はどうする?*16 この状況を見ているだけかい?」
レンジャー:「んなわけない。ウィザードが落ちた今、障害物なしで狙えるからね。弓を取り出して、その機械人形を撃つよ。むしろ、《狙い撃ち》で、開いた眼窩の中に命中させたいかな!」
GM:「ちょっと待って、それには相手が無防備か不意を打たれている必要があるよ。君はちょうどこのあたりにいるんだから、ヤツは間違いなく君を視認している*17」
レンジャー:「なるほど、じゃあ《射撃》だ。合計は7なので、なんとか成功。そうなると選ぶのは……『〔矢弾〕を 1 減少させる』かな。何発か撃つ必要があったんだよ」
GM:「こいつは真鍮のプレートで覆われているから、理にかなってるね。最初の何本かは、跳ね返されてしまうんだ*18」
レンジャー:「その通り! そう、最初の何本かの矢はそれてしまうんだけど、ついには2枚のプレートのちょうど隙間に命中させるんだ。6ダメージになるよ。あ、それに《動物の友》である鷹が同じ対象に攻撃したなら、その【獰猛さ】がダメージに加えられるとあるけど」
GM:「いいんだけど、この完全防備のタンクに、鷹がダメージを与える方法は? 爪ではこいつにひっかき傷をつけることすらできないと思うんだけど*19」
レンジャー:「うーん……オレの矢がようやく命中したところで、鷹が飛んでいって、その矢を押し込むってのはどうかな? 矢を掴んで、機械の奥深くまで届かせる感じで」
GM:「素晴らしい! よし、鷹はそいつに矢を押し入れると、そこから火花が飛び散り始める。ヤツは痙攣するけど、まだ稼働している。束の間、やったと思うけど、その後で、肋骨に激しい痛みを感じる。何かに後ろから突き刺されたんだ。1体目に集中していたから忘れられていた、2体目の機械人形だね。君のレザーアーマーを刺し貫いてくるので、6ダメージ食らって」

*15:これは主観的な判断でした。9点は強烈なダメージであり、ファイターはウィザードをおろすことが目的だとはっきり述べていました。だから、これが現実的な成り行きだと思うのです。
*16:他のプレイヤーは何らかのアクションを行いましたが、レンジャーはまだだったので、次は彼に振りました。
*17:その行動がいかにクールであっても、ルールはルールってこともある、ということです。
*18:ムーヴが、プレイヤーに選択肢を選ぶよう求めるときは、フィクション上で筋の通るものにしなければなりません。なので私は、こんなふうなちょっとしたことに対してさえも、ゲーム内のリアクションを考え出すのを好みます。そうすることで、世界はより確かなものになるのです。
*19:ここでまた、プレイヤーに質問してます。いつでも、ムーヴがフィクションにかなったものとなるよう気を配りましょう。うまくいくかすぐにはわからないなら、プレイヤーにしっくりくるかを聞くことで、多くの場合、シーンをさらによいものとするクールな答えが得られます。

レンジャー:「ちょっと! そっちも起動していたなんで思わなかったよ!」
GM:「そう、君たちはウィザードの引き起こしたトラブルに専念していたからね*20」
シーフ:「オーケー、私にとってはチャンスだ。私、隅っこで縮こまっていたよね? 機械人形のどちらも、こちらに気づいていないんじゃないかな? 忍び寄って《バックスタブ》を使いたいな」
GM:「連中の注意がどこに向いているのかはっきりしない。普通の人間みたいに動いたり、見渡したりはしないからね。じゃあ、うち1体に忍び寄るってことだね?*21」
シーフ:「《危機打開》かな? 【DEX】だよね? 合計12なので、全く問題ない。影のように振る舞うよ」
GM:「すごいね、友人のレンジャーを2体目の機械人形が突き刺す間に、そいつの背後に容易く到達できるよ」
シーフ:「《バックスタブ》には、無条件でダメージを与えるか、ダイス・ロール+【DEX】で追加の恩恵を得ようとするか、そのどちらかだとあるね。ギャンブラーだから、振ってみよう……9だ。相手のアーマーを1減少させる、を選ぶよ」
GM:「素晴らしい、厳密には、どうやって削るの?*22」
シーフ:「真鍮のプレートを、梃子の原理で緩めよう。レイピアを露出した接合部に差し込み、それから反対の手に持ったダガーで、防具の大きなパーツをずらす感じで」
GM:「最高だね。色褪せた真鍮の大きな塊が、大きな金属音を立てて床に落ちる。このオートマトンは回転して、君に向き合うよ。頭部が180度回り、腕も回転するので、身体の向きを変えることなしに、正面から君に立ち向かう」
シーフ:「私に執着してくるのはわかっていたけど、そうくるのはカッコいいね」
GM:「うむ。そいつは、レンジャーの血を滴らせながら両腕を上げ、君めがけて振り下ろさんとする。一方、部屋の反対側では、痙攣し半ば壊れた機械人形が、いまだに動いている。ずんぐりとした足を持ち上げ、床に転がっているウィザードを踏みつぶそうと構えているね」
ウィザード:「〈マジック・ミサイル〉を撃ちたいんだけど!」

*20:ここは手厳しいように見えるかもしれませんが、本当のことです。彼らは一度として、2つ目のアルコーブの方を見るとは言ってません。私はこれを「歓迎されざる真実を告げる」絶好の機会だととらえ、別の敵の存在を知らしめたのです。
*21:敵が不意を打たれていたり、無力化されているのが明らかな時もあります。そうでない時もあります。そのような場合、《危機打開》(危険は気づかれてしまうこと)を求めることで、「ステルス・チェック」のように機能させることができます。もちろん危険は、見られてしまうことです。
*22:これは、ルールとフィクションが噛み合った瞬間のひとつで、『ダンジョン・ワールド』を気に入っているもうひとつの理由でもあります。誰かのアーマーを低下させようとするなら、その方法を述べてください。私たちはみんな、この卓を囲んで集い、一緒に別の世界を思い浮かべているのです。なので時々は、歯ごたえのあるディテールにも足を踏み入れてみましょう。ムーヴとゲーム内フィクションは不可分です。ゲーム内でそれがどういうことなのか説明することなしに、ムーヴは行えません。

GM:「踏みつけを、転がってかわす代わりに?」
ファイター:「彼が呪文を唱えている間、踏みつけられないように、彼を《防御》できる?*23」
GM:「もちろん。彼を《防御》するにはダイス・ロール+【CON】だ」
ファイター:「くそっ、たった8か。〔ホールド〕は1なので、攻撃のダメージを半減させるのに使うよ。機械人形が足で蹴ろうとする進路にウォーハンマーを振り、攻撃を払いのけよう」
GM:「ほうほう、そりゃいい。実際に到達した蹴りはわずかだったので、ウィザードはたった3ダメージで済むよ。〈マジック・ミサイル〉をどうぞ」
ウィザード:「……出目合計は9。呪文は放たれるけど、よくない事態を1つ選ぶ必要があるな。『いらぬ注意をひくか、術者が困難な状況に置かれる』にするよ。〈マジック・ミサイル〉は、[アーマー無効]の5ダメージだ」
GM:「どういった具合にかな? つまり、呪文は具体的にどう作用するの?*24」
ウィザード:「純粋な魔力とあるけど、電気が放出される感じじゃないかと想像しているんだ」
GM:「完璧だね! つまり、こいつが、巨大な金属の足で君を踏みつけてきて、君は打撲やすり傷を負いつつも、電撃の噴出に全神経を集中させる。雷撃は機械人形に命中して完全に焼き焦がし、その回路をショートさせる。よろめいてるね」
ウィザード:「いらぬ注意をひくか、術者が困難な状況に置かれる、は?」
GM:「おっと、忘れかけてた。ええっと、そいつはよろめき、攻撃の勢いを保ったまま、突然倒れ込んでくる。大きな音を立てて、君の上に倒れるので、押し潰されるまでほとんど猶予がない*25。じゃあ今度は、レンジャーとシーフに振ろう。君たちは敵を挟み撃ちにしたけど、そいつは自由自在に向き直る方向を変えることができるようだ。刃の付いた両手を、シーフに振り下ろすよ」
シーフ:「レイピアでその攻撃をそらせて、ダガーをさっきプレートを引き剥がした部分に突き立てたいな」

*23:こういうことは、イニシアティブのない戦闘において、かなりの回数発生しました。プレイヤーが、お互いに積み重なるかのように行動を起こすのです。同時になることもあれば、割り込みになることもあります。上手くさばけるなら素晴らしいことです。私は、プレイヤーにこぞってアクションを叫ばせることで、事態をよりエキサイティングにします。本当にわれ先にという感じになりますからね。優先順位を決めて、つじつまが合う順番に解決すればよいのです。
*24:質問して、その答えを土台にしましょう! シーンを生き生きと描写している間に、心に浮かんだちょっとした質問を、遠慮なくおこなってください。戦闘中にやっていけない理由はありません。
*25:「いらぬ注意をひくか、術者が困難な状況に置かれる」とあるのを見て、最初に思い浮かべるのは、そのキャラクターが攻撃されることかもしれませんが、全くもっていつでも当てはまることではありません。何か悪いことが起きて、術者が困難な状況に置かれる、に過ぎないのです。なんだって当てはまります!

GM:「《ハックアンドスラッシュ》だと思うけど、どうかな?」
シーフ:「……げげ! 4だから、完全失敗だ!」
GM:「おやまあ、こいつは地力が君を遙かにしのいでいたので、受け流しなどできようはずもなかった。ヤツは君の試みをはじき飛ばし、君の腕に両腕の刃を埋めてくる……7点のダメージで、君は壁に固定される。刃が君の肩を刺し貫いて壁まで達してるので、移動できなくなってしまう。そして、そいつの頭は後ろに回転して、レンジャーの方を向くよ*26」
レンジャー:「そいつが何かする前に、弓を捨てて、スピアを突き入れます」
GM:「よし、同じく《ハックアンドスラッシュ》だね。間違いなく、双方が同時に対応しているだろうから」
レンジャー:「《ハックアンドスラッシュ》は8なので、両者が傷を与えるってことでしょうか?」
GM:「うーん、代わりに厳しい選択はどうかな? つまりこうだ。シーフは機械人形のすぐ後ろに固定されており、君はそいつにスピアを突き刺そうとしている。ヤツは空振りして、その一瞬の隙に、君は内部の機構に阻害されず一撃をたたき込むんだ。スピアをそこに押し入れ、ヤツの鎧を完全に貫通するが、きれいに刺し貫いたことでシーフを傷つけてしまうかもしれない。ということで、君はダメージを受けないが、シーフに行くってことで。いいかな?*27」
シーフ:「いいんじゃないかな」
レンジャー:「うむ、すごいじゃん。やってみるよ。ダメージは7点」
GM:「オーケー、シーフは5ダメージを受けてね。でも、機械人形を機能停止させるには事足りたよ。スピアが貫くと、そいつは動きを止める。これで機械人形は2体とも動かなくなった。みんなが深呼吸して、身体に付いた埃を払い始めたとき、リズミカルに打ちつける音が聞こえる。それは両開きの扉からだと分かった。何かが向こう側から扉を押して、開こうとしているようだ……*28」

*26:正直に言うと、「頭部が回転する」関連は丸ごと、その場で思いついたことです。だって、かなりいけてると思ったので。でも、あらゆる手段が許容されているのです。なぜなら、このクリーチャーを作ったとき、「隠された機能を明かす」というムーヴを与えていたのですから。私はこのクリーチャーのムーヴを用い、同時にでっち上げたというわけです! そしてこのちっぽけなディテールがあったからこそ、機械人形は敵に挟撃されても労せず対等に渡り合えるという、フィクション上の可能性につながったのです。
*27:私がこれを考え出しました。ルールに書かれていることではありません。とはいえ、ルールの精神に則ったものであるのは確実です。結果7-9は、要はよくない結果をはらんだ成功ということなのですから。私はプレイヤーに確認することを好むので、彼らにはやり過ぎだと訴える機会があります。全員が共通認識を持つことは大切です。この場合は、プレイヤーたちが素晴らしいと思ってくれたので、事は上手く運んだのです。
*28:「脅威が迫りつつある兆候を示す」ことにより、冒険を次のイベントへと押し進めています。

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