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娘の不登校④

 「お母さん!猿を飼いたい。」また出た……。
娘は中学生になったばかりの頃からずっと、こう言って猿を欲しがっていた。(なんで猿……。)
「猿なんて飼えるわけないやんか。ウロウロするし引っ掻かれるし…。」
いや、それ以前の問題だ。
 なので心療内科の先生の「ペットを飼うのもいいですよ。」発言から、また猿懇願が始まった。
 「犬にしよう!」「それなら大きな犬がいい。」と、犬を飼うことにした。

 行きつけの美容院のママにその話をすると
「どうせ飼うなら保護犬にしてあげてね〜。」と、ママが引き取った保護犬の話をしてくれた。
 わが家は全員賛成で、保護犬の施設をリサーチし、見学予約をして当日を迎えた。
 その里の奥のほうにある施設には、たくさんの犬や猫がいた。心苦しいが、ここから1匹だけを選ばなければいけない。
 説明を受け、あの子、この子と迷ったが、最終、9歳のゴールデンレトリバーを選んだ。ところが担当の方曰く、もう既に癌を持っているらしい。
(なんてこった〜〜〜)この子も可哀想だが、引き取っていきなり病院通いはキツい。ごめんね、やめとこ。

 娘はいっ時も早く家に連れて帰りたい。決定→審査→引き取りの段階を踏んでも数週間はかかる。
なんとしても今日中に決めたい娘の目はギラギラしてきて、最短で連れて帰れる子を優先すると言い出し、小型犬ブースに移った。
(大きい犬が欲しかったん違うんか〜い)と思ったが、まぁそこは問題ない。
 小型犬は一室に放し飼いになっていて、キャンキャン、ワンワン寄ってきて可愛かった。けれど、どうもビビビッとこない。皆んな小さいからだ。当然だ。

 すると担当のお姉さんが
「あの〜、ダックスフントなんですが、がたいがデカくて人気ないんですが、下の部屋に兄弟でいる子がいるんですけど…。」
と教えてくれ見に行ったら、そこには2匹のダックスフントがいた。一匹は失明していて、もう一匹は他のワンチャンに意地悪するらしい。なのでこの二匹は別室なのだ。
 ここで、ビビビッときたのがこの意地悪犬。がたいがデカくて丁度いい。聞くと、去勢も予防接種も全て済んでいるから明日にでも連れて帰って良いと言う。
ええええええ〜〜〜!運命の出会いだ。
もう一匹の兄弟の子には申し訳ないが、失明しているのなら、ここにいる方が良いかもしれない。食事と医療は保障付きだからだ。
 この子にすると伝えたら、担当のお姉さんは何度も「本当にこの子でいいんですか?」と尋ねながらも
「良かったね〜良かったね〜。」と大喜びだった。
よほど人気がなかったんだな……。
 もう一匹の子に(兄弟を連れて行ってごめんね…)と心の中で謝りながら、翌日迎えに行った。

 きれいにシャンプーしてもらったその子を、娘が抱っこして車に乗り家路に向かった。名前は『ジェイ』
9歳の男の子だ。
 
 この子がわが家にとって、これ程の天使になるとは想像もせず、その日から家族の仲間入りをした。


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