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「水たまりの中にはゾウがいるんだよ」
おとおさんがいってた

ぼくは きいろいかっぱをかぶってそとにでた
あおいながぐつが「ぽけぽけ」なった

あめのひは「おととにいっちゃだめ」って
おかあさんはいってたけど
ぼくはゾウがみたかったんだ

おかあさんが おいもをうでてるあいだに、
そーっとげんかんのとをしめたんだ

かっぱのぽっけには グミとほしーも
よめないけど とけいもいれてきたよ

あとはライダーのベルトもおなかにまいたし
ぴっとるも もった
てには ごーれんじゃのでんわもついてる

だから かいじゅうがきてもだいじょうぶ

おかあさん
「おいかけてこないかな?」
だいじょぶだ

おかあさん
「おいかけてこないのかな?」
おうちがみえなくなりそう

でも きょうは
ひとりでいくんだ

かえろかな
でもかっぱはひとりじゃむげないし

ばれておかあさんにおこられる
きっとおしりを さんかいたたかれる

「あ、みずたまりめっけ」

「、、、ゾウがでてきたらどうしよう」

「おいかけらいたら ながぐつだからはしれない」

「みっきのくつのすればよかった」

かーくんは、ちょっと遠くから
水たまりを見ています。


「あのみずがはねてるのは ゾウがはなからみずをだしてるのかも」

「、、、かいじゅうがでたらどうしよう」

「あ、そうか、ちいさいぞうだから たべられないか」

「だっこしてかえったら かくせるかな?」

「さいしょにおなかのところにいれて、、、そのあとテーブルのしたにおいて」

「なかないかな?」

「かーくんがずっとなきまねをしればいいんだ」

かーくんは、
そーっと、そーっと、水たまりに近づくと
膝をついて、手をついて

勇気を出して水たまりをのぞきこみます。

おおきな雨つぶがひとつ水たまりに落ちます。

「ぽちょん」

はねかえった水が、
かーくんのほっぺに「ぺちょん」

「ゔぁわー」

かーくんはおどろいて後ろにひっくりかえってしまいました。

「ゾウがでてくる?」
「かいじゅう?」

かーくんは、お尻をつきながら、
じいーと水たまりを見ています。

こわくなって、泣きそうになったけど、
かーくんは、手に持ったぴっとるを見て
口をへの字にしてグッとがまんしました。

「あれ、ゾウでてこないかな?」
「かいじゅうも」

かーくんは、
もう一度、水たまりの方へ、、、

右手、左手、
ペタペタ、ペコペコ。

右のひざ、左のひざ
ジュリジュリ、シェリシェリ。

「こんどはもっとゆっくりのぞいてみよう」

雲の切れ目から太陽がのぞいて
湿った風が、かーくんの後ろからソヨっと吹いて

水たまりがサヨサヨ動き
チキチキと光って揺れました。

そーっとのぞいた水たまりには

くろい目をおおきくあけた
黄色いゾウがいました。

その晩お風呂で、かーくんは
おとおさんに黄色いゾウの話をしました。

「でもね、おかあさんにはないしょだからね」



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