概要
電子掲示板等における虚偽情報の流布により対象の社会的評価が低下したと認められる場合、名誉毀損、信用毀損、偽計業務妨害による損害賠償の請求が認められる。つまり、不法行為による損害賠償、慰謝料の請求は認められる。
導入
2017年6月5日に東名高速道路上で起きたあおり運転死傷事故に関連し、インターネット上の電子掲示板(5ちゃんねる)などで発生した書き込みについて虚偽情報により名誉を毀損されたとして損害賠償を求めた裁判を見ていく。2022年(令和4年)3月18日、福岡地方裁判所第3民事部にて出された判決は以下を参照のこと。
平成31(ワ)1170 損害賠償請求事件(判決文全文)
※原告・被告ともに判決を不服として行われた控訴審で福岡高等裁判所は賠償額を引き上げる判決を下した。
なお、上記のあおり運転死傷事故に関しては以下の記事を参照。
東名あおり運転やり直し裁判 危険運転致死傷罪を認定 懲役18年 (NHK NEWS WEB 2022年6月6日 20時06分 配信記事)
事件の当事者
原告
原告A 原告B株式会社の代表取締役。
原告B株式会社 設備建設業を営む株式会社。
被告
原告の主張
■ 原告らの社会的評価が低下したか(5ページ26行)
■ 故意過失の有無について(8ページ12行)
■ 損害額について(9ページ12行)
被告の主張
被告C
■ 原告らの社会的評価が低下したか(7ページ4行)
■ 故意過失の有無について(8ページ25行)
■ 損害額について(11ページ6行)
被告D
■ 原告らの社会的評価が低下したか(7ページ17行)
※なお、被告Dは記事の内容が事実ではないと知ると「削除要請がなされる前に」「訂正記事を掲載し」「事実ではない記事を取り下げ」「謝罪をした」。(8ページ9行)
■ 故意過失の有無について(9ページ2行)
※なお,被告Dらの供述調書は誘導的ないし高圧的な尋問により取調官がその意とする供述を押し付けた結果作成されたものであり信用性がない、と主張する。(9ページ10行)
■ 損害額について(12ページ2行)
被告E
■ 原告らの社会的評価が低下したか(7ページ17行)
被告Dのみに係る部分を除いて被告Dに同じ。
■ 故意過失の有無について(9ページ2行)
被告Dに同じ。
■ 損害額について(12ページ2行)
被告Dのみに係る部分を除いて被告Dに同じ。
被告F
■ 原告らの社会的評価が低下したか(7ページ17行)
被告Dのみに係る部分を除いて被告Dに同じ。
■ 故意過失の有無について(9ページ2行)
被告Dに同じ。
■ 損害額について(12ページ2行)
被告Dのみに係る部分を除いて被告Dに同じ。
被告G
■ 原告らの社会的評価が低下したか(7ページ15行)
■ 故意過失の有無について(9ページ2行)
被告Dに同じ。
■ 損害額について(11ページ22行)
福岡地方裁判所の判断
認定事実(12ページ16行)
(1)本件事故の発生及び本件男性の逮捕(12ページ19行)
※東名高速道路あおり運転死傷事故と原因となった男性の逮捕
(2)被告らによる本件各記述(13ページ9行)
ア 被告Cによる本件記述1(13ページ10行)
ウ 被告Dによる本件記述3(14ページ13行)
エ 被告Eによる投稿(15ページ5行)
オ 被告Fによる本件記述5(15ページ18行)
イ 被告Gによる本件記述2(14ページ2行)
(3)原告B株式会社及び原告Aへの誹謗中傷等(16ページ3行)
(4)被告Dによる訂正文の投稿(16ページ20行)
(5)原告Aの本件虚偽情報に対する対応等(17ページ6行)
(6)刑事告訴(18ページ1行)
(7)本件訴訟の提起及び和解等(18ページ14行)
(8)刑事事件の経過等(18ページ24行)
(9)被告ら以外の者との裁判上の和解(19ページ11行)
(10)賠償金の支払(19ページ18行)
(11)本件男性の刑事裁判(19ページ23行)
※参照記事は以下。
東名あおり運転やり直し裁判 危険運転致死傷罪を認定 懲役18年 (NHK NEWS WEB 2022年6月6日 20時06分 配信記事)
「原告らの社会的評価が低下したか」について(20ページ2行)
(2)被告Cによる本件記述1について(20ページ9行)
(4)被告Dによる本件記述3について(22ページ17行)
(5)被告Eによる本件記述4について(24ページ5行)
(6)被告Fによる本件記述5について(24ページ22行)
(3)被告Gによる本件記述2について(22ページ14行)
「故意過失の有無」について(25ページ14行)
(1)被告らの故意について(25ページ15行)
(2)被告Cについて(25ページ23行)
(4)被告Dについて(27ページ3行)
(5)被告Eについて(27ページ14行)
(6)被告Fについて(27ページ26行)
(3)被告Gについて(26ページ24行)
「損害額」について(28ページ12行)
(1)被告Cについて(29ページ1行)
(3)被告Dらについて(30ページ20行)
(2)被告Gについて(30ページ4行)
考察
考察の前に本件訴訟とその結果についてまとめる。
原告A:名誉毀損に対する一定限度の損害賠償および慰謝料の請求が認められた。
原告B株式会社:名誉毀損・信用毀損に対する一定限度の損害賠償および慰謝料の請求が認められた。
被告C:
【刑事】名誉毀損罪(公判)成立、罰金30万円
【民事】損害賠償として原告Aに22万円、原告B株式会社に22万円
被告D:
【刑事】名誉毀損罪(略式命令)成立、罰金30万円
【民事】損害賠償として原告Aに16万5千円、原告B株式会社に16万5千円
被告E:
【刑事】名誉毀損罪(略式命令)成立、罰金30万円
【民事】損害賠償として原告Aに16万5千円、原告B株式会社に16万5千円
被告F:
【刑事】名誉毀損罪(略式命令)成立、罰金30万円
【民事】損害賠償として原告Aに16万5千円、原告B株式会社に16万5千円
被告G:
【刑事】名誉毀損罪(略式命令)成立、罰金30万円
【民事】損害賠償として原告Aに16万5千円、原告B株式会社に16万5千円
(※遅延損害金は別途、訴訟費用は別途(主文4を参照))
その他、訴訟にいたる前の和解や調停などで原告Aおよび原告Bに対し約230万円の慰謝料が被告以外の者から支払われている。
結論
5ちゃんねる、爆サイ等の電子掲示板に類するサイトに書き込まれた信用に乏しい情報を根拠として他者を批判することは避けるべきである。
参考文献
謝辞
記事中で『いらすとや』様のイラストを使用させていただきました。
記事中で『WaterBridge』様の立ち絵素材を使用させていただきました。