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隠れキリシタン、新大久保へ①

東京から帰宅後、
勢いよくベッドに横になった。
かろうじて寝室を照らす切れかけの電球が
容赦なく、私を現実へと引き戻そうとするが
今はまだ、あの日感じたことに浸りたい。


極人見知りなうえに出不精な私は
沼歴1年10か月にも関わらず、
外での推し事はおろか、アミ会の経験もない。

しかし、人生は不思議なもので
数年に1度、衝動だけの生き方を提供してくる。

そんな時は、素直に従うのが良い。
私は、ためらうことなく軽やかに
東京にいるアミ友に会いにいくことを告げた。
日にちは9/10~12日の二泊三日。
ものすごく急なことだった。相手も驚いた。
(案の定、30分後に無双モードが解除され撃沈)

夕暮れ時の新大久保。
ハングルに囲まれたビルとビルの狭間で
私はスマホ片手に途方に暮れていた。
(おなかすいたな・・)
早足で通り過ぎる人々に圧倒されながら
辺りをぼんやりと眺めていると
突如、視界にナム(パネル)が映り込んだ。
(わあ!!ナムだ!!わああ・・!)
ナムのセンイル(9/12)まであと二日。
自室での推し事しか経験のない私は、
センイルイベントはおろか
外でパネルを見かけることすらなかったので
本当にびっくりしたし、本当にときめいた。
(この胸の高鳴りは、もはや本人・・)
そんな私に、ナムは優しくこう言った。
『見守ってますよ』(幻聴)

ううう・・ナム、、あなたはどうしてパネルなの・・?
一人、心細い。新大久保、コワイ。

チキン、チーズタッカルビ、サムギョプサル・・
1人で入るには、ハードルが高い。

(セブンイレブンで弁当を買ってホテルに戻ろう・・)

とぼとぼとセブンイレブンに向かって歩き出しながら
ふと、東京にいるアミ友たちに思いを馳せ、
こんなツイートをした。

勘違いしないでほしい。
これは、人見知りが初の新大久保で
完全に調子に乗っただけだし
『言ってみたい』だけであって『言ってない』から
このツイートには、
なんの効力もなければ誘いでもない。
絶対にくるな。

しかし、この世には陽キャという生き物が存在しており
彼らは平然と壁を越えてくる(進撃の巨人かよ)

どうしよう、ナム・・。

相変わらず、ナム(パネル)を見つめながら
鳴りやまない通知に心臓が爆発しそうになっていた。

私は、陽キャたちからのフットワークの軽いリプと
DMの両方を眺め、
そのあとに、韓国料理の看板を見つめた。

ナム『大丈夫ですよ。頑張って!』(幻聴)

ナムぅ。

最初に声をかけてくれたのは
最も古いアミ友たちだった。

よく二人で遊びにいく仲良しな彼女たちは
たまたま、この日も二人で遊んでいて
これからちょうど夕食だから良かったら~
とのことだった。

(ナム・・私、頑張るね・・)

高鳴る心臓の音を鎮めるために大きく深呼吸をしたが
込み上げてくる胃痛はどうにもならず、
『緊張する』『人見知りだ』の2つを
何度も強調しながら、ありがたく応じた。
(応じた、じゃないのよ。この調子乗りめ・・)

しばらくして、
先に入ってていいよ~
というDMが届き
これは真の現実なのだなと改めて慄いた私は、
大人しく席に座ってられるメンタルでもなく
外で二人を待つことにした。

さて、いま、目の前に、
ジンペンとユンギペンがいる。

(これが、生のアミ・・!)

感じたことのない不思議な高揚感と
人見知りとがせめぎ合う。

店内はとても賑わっており、
大きなスクリーンには
ATEEZというK-POPアイドルの映像が流れていた。
私たちは丸テーブルを囲みながら
共に選んだ食べ物を食べ、共に酒を交わし
他愛のない話をした

はずなのだが
いかんせん、
新大久保で、生のアミと、韓国料理
という、あまりにも刺激的すぎる状況だ

全く、覚えてない。
(本当に最低)

ただ、二人はとっても素敵な人たちで
話の内容は覚えてなくとも
一緒にテーブルを囲めた喜びは
とても強く心に残っている。
しかも、信じられないことにご馳走してくれた……!
本当に本当にありがとう。
(異国の地に舞い降りた救世主)

さらに、二人は
完全におのぼりさんな私に
所謂、オタクの聖地を案内してくれた。

韓国食品を扱うスーパーや、
ドン・キホーテ、コスメ店、
BTSグッズ(非公式)が売ってるmagic shop・・

目に飛び込んでくるもの全てに一々驚き、圧倒され、

これが、外でのアミ活かーー!!!
ナム、、わたし勇気を出してよかった!!

心の底から興奮した。

案内してもらった中で、
最も強烈な印象を抱いた場所がある。

それは、
皆中稲荷神社

江戸時代、鉄炮組与力の夢枕に稲荷様が立たれ、
霊符を示し、
稲荷神社にお参りをして射撃を試みたところ
百発百中「皆中(みなあたる)の稲荷」と称され、
みなあたる、よくあたる神様として
親しまれております。

皆中稲荷神社公式サイトより

ネオンの光が届かない神社は
夜だということもあって
ややおどろおどろしい印象を受けたが
絵馬がかけられている場所は
ありとあらゆるファンたちの言葉で賑わっており
個々の希望や夢で眩しかった。

二人が何をお願いしたのかはわからないが
私は、咄嗟に
隣にいる二人が幸せになりますように・・
というキザな願い事をした。
(だいぶキザ?)

最後までマメに付き合ってくれた二人には
感謝しかないし、彼女たちと別れたあとは
なんだかセンチメンタルな気分になったことを
よく覚えている。
(臆病な私を引っ張ってくれてありがとう!)


ホテルに戻った私は
二人がくれた美容パックをじっと見つめながら
私も美意識を高めていこう!!と自らを奮い立たせ
22時には布団に入り、
ミンユンギ(最推し)のことを考えながら
明日に備えて、眠ることにした。

が、きっちり1時間後、
大人しく寝ようとしている自分に
突如猛烈にイライラし、
近くにあるハットグ屋で
最もカロリーの高そうなハットグを買い、
ばかやろー!ハットグには酒だ!!と
コンビニでレモンチューハイまで買ったのだった。
へへへ

つづく。

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