凪、或いは経る月日のこと
少年は波を見ていた。
朝焼けの押し寄せる波打ち際で、
絶えず漂う揺らぎに触れていた。
夜を超えた泉は、埃と甘い砂の香りを揺らした。
それは、秘密そのものだった。
思えばそれは、遥か昔から少年のなかに脈うっていた。
絶えず陽光に漂う揺らぎが、肌に触れた。
際限なく続く長い列や、柱や、その巡りが
少年に刻まれていた。
波が触れ合い、脈うち、
花や雫が身を揺らすことを少年に教えた。
そうして少年は、自らの爪先と空の同じことを知った。
星が透け、大地が走り出したとき、
そのすべては初めから一つであったことを知った。
それが手の中にないとき、それは同時にそこにあるのだった。
空は、瞳の中にあった。
泉の周りをゆっくりと裸足で歩き、
それは螺旋になり、
見下ろせばそこに、確かに影は綴られていた。
いま目の前に、そのすべての始まりがある。
祈りが幾重にも重なり、少年の足元にあった。
ともすればそれは、月日ではなかった。
踵が触れ、小さな揺らぎは夜明けになった。
彼方遠い丘で鐘が鳴り、
少年は音の過ぎていくのを観た。
叫びと足音が、まだ微かに足に触れていた。
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