「青の党」政権公約:原子力は必要である

<青の党は架空の政党です>

好むと好まざるとにかかわらずCO2削減の掛け声が世界中で湧き上がってしまっている。日本ではエネルギーの多くを原油や天然ガスに依存しているわけで、当然のようにこれをCO2排出の少ないエネルギー源に置き換えようという動きが盛んである。

CO2排出の少ないエネルギー源として掛け声の大きいものは太陽光、風力、地熱といった、いわゆる自然エネルギーと呼ばれるものの類である。この中でも太陽光に関してはいろいろと後ろ暗いことも噂されてはいる。太陽光パネルで大きなシェアを占めているのがどの国かを見れば一目瞭然である。ちなみにリチウム電池の主要原料となる鉱石の市場、更にリチウム電池の生産量でも大きなシェアを占めているのがどこかということを見てもなんとなく透けて見えるものがあるが、ここでは触れまい。

自然エネルギーと呼ばれるものの多くは電力を生成することを目的としているが、これらの多くが需要とは無関係に発電量が大きく変化する、不安定エネルギー源である。過剰に発電されても出力をカットするよりないし、不足した分は火力発電などで補わなくはならない。
特に太陽光発電は短時間に大きく変動することもあり、送電系統にとっては厄介者である。太陽光依存度の高い九州では以前も電圧が大きく変動したことから対策を講じてきたものの、それでも大きな電圧変動(電圧フリッカー)が発生してしまった。
また、2020年の冬場の天候不順により火力依存度が増え、電力逼迫して危機的な状況であったことも記憶に新しい。

また、自然エネルギーはエネルギー密度も決して高いとは言えないため、広大な敷地が必要である。大きな変動に対応するためにバッテリーに蓄えれば良いという考えもありそうだが、エネルギー密度などを考えても現実的とは程遠いほど大量のバッテリーが必要になってしまう。

日本の電力需要に対する太陽光発電などの自然エネルギーの比率が低いことをもって日本は遅れているといった論を展開する方々もいるが、少し調べればわかるとおり、日本の国土面積あたりの太陽光発電の発電量は、世界第二位のドイツに大差をつけて世界一である。もはや使いやすい場所はほぼ使い尽くしているといって良い。
更に小規模な太陽光発電の導入を目論んでいるようでもあるが、設備というものは小規模なものが分散しているほどコストアップにもなるし、効率が低下するというのが常である。

風力発電についても日本は気象の激しさや、海が急に深くなるため浮体式にせざるを得ず、設置、メインテナンス、送電のためのコストがかかる。
しかも、これらの設備も「消耗品」であることは考慮しなくてはならない。たとえば太陽光パネルを見ても、パネルそのものの寿命もさることながら、それらを支える躯体部分についても適切なメインテナンスをしなければたちまち老朽化していく。実際に台風などによる強風で太陽光パネルが吹き飛ばされるといった被害も散見される。山を切り開いて設置したようなところでは更に様々な問題が指摘されている。
ドイツやノルウェーといったところが良く引き合いにだされるが、ドイツは過剰な電力はEU域内の他国に販売することができるし、不足したときは隣国であるフランス(言うまでもなく原発大国)からの電力を融通してもらっている。
ノルウエーは圧倒的な人口の少なさから、水力発電による電力が有り余っている。このため、EVへのシフトも進んでおり、これを引き合いにだして先進的だという論を展開する輩も少なくない。
なるほど、ノルウエーは電力を大量消費するアルミニウムの精錬なども主要な産業である。が、実はそのノルウエーが大量の外貨を稼いでいるのは化石燃料である点は忘れてはならない。

地熱発電をもっと推進せよという言葉も時々目にすることがある。なるほど、地熱は天候にも左右されない安定的なエネルギーであるし、実は地熱発電設備は日本企業の十八番(おはこ)でもある。
ただし、地熱発電で得られる電力は先日発表された試算(恐らく「これ以上は無理」という限界値だろう)でも2000万kWである。以前の発表では1000万kW程度とも言われていたので、現実的にはこの数分の1、500〜700万kW程度が現実的な値だろう。
一方、日本の電力需要はピークで約1億kWである。地熱発電ではまったくもって全国の需要には足りないというのが現実である。

電力の絶対量を確保する上でも、自然エネルギーの「身勝手発電」の変動に対処する上でも、季節や天候に左右されず安定的に供給できる電力供給源の確保は必須である。
そのような中で化石燃料の利用を抑制しなくてはならないとするならば、我々が手にしている中で確実に使えるものは原子力以外に選択肢が無いというのが現実である。
将来的にはより広い国土があり安定した発電が見込めるような国で水素などを製造し、それをアンモニアやMCHなどにして輸入して利用するといったことも考えられるが、発電量などについてはまだ実験の粋を出ていない。

原子力への依存は理想とは言えない。しかし、他の手段には明らかに限界があり、今現在確実に日本の需要を満たせる「非化石エネルギー源」は原子力以外にないというのもまた現実である。

青の党は、原子力発電は当分の間必要であると考え、原子力以外の手段の研究開発も勧めつつ、より安全な次世代炉の開発と実用化を推進することを公約とする。

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