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第29回かまちゃんねる『資金調達成功のプログラム』Session 2

前回は、「資金調達に成功する事業計画書」における「事業計画の立案編」をお伝えさせていただきました。

今回は事業形態の計画について、より具体的に検討を進めていきたいと思います。事業を興す時にまず考えることがあります。その事業を「一人で始めるのか」、「パートナーと組んで始めるのか」ということなんですけど、これはシンプルに「法人」か「個人事業」かの2択になります。

この選択をどうするのかについて検討してみたいと思います。

法人を設立にするにしても、そもそもその必要性はあるのか検討されたでしょうか。この検討については少なくとも事業開始前までに決めなければなりません。

あるいは事業計画を立てている段階で個人事業主としてスタートして、収益の見込みが立ってから法人化する計画でも良いでしょう。この部分では数だけを見ると業種によって違いはありますが1000万円程度の収益、つまり手残りがそれくらいあれば、法人化するのがベターです。

おそらくはそれくらいの手残りが出るようになれば事業規模そのものが一人で背負いきれるものではなくなっていると思います。事業を運営するってどういうことだと思います?経営者の数だけ答えはあると思いますが、一つの答えとして「雇用を増やし続ける」というのもあります。

つまりは事業を拡大し続ける、成長させ続けるというのも事業を運営する上で考えなくてはならないことです。そのうえで「それは違うな」と感じたのであれば、上場を目指したりする経営者としてはタイプとして合っていないなと思います。

私事で恐縮ですが、ブレインワークスのパートナーとしての立場以外にも半官半民のファンドでDMOの運営やハンズオンメンバーの送り込み、資金の投融資など広い職域でファンドマネージャーとして活動したりしている観点から、全体像を見てそう感じるという話なのです。

とはいえ、コロナの影響でファンド事業については全てのプロジェクトが一旦ペンディングとなっておりまして、私自身も今後はやりたかったメディアという事業について、人生の後半全てをかけて関わっていこうと腹に定めています。

また、前回の「かまちゃんねる」つまり、昨年の最後にお伝えさせていただいたようにRCDコンサルティングのサービスの一つであった、地方で起業やキャリアを模索する人のために開講していた「コト起こし未来塾」を7年という経過の中で一定の役割を終えたということでサービスを終了させていただいたことをお伝えさせて頂きました。

教育系では現在のところ、アバロンコンサルティングの主力サービス「ホワイトアカデミー」においてキャリアコンサルタントとして就活生に「就活のアドバイスをしながら、働くとはどういうことか、キャリアをどのように構築するか」ということについて授業を行っており、コト起こし未来塾の活動はそちらの方へ軸足を移しております。

生徒の中には起業、つまり自分が代表となってリーダシップと責任をもって事業を統括していくべく、どうすればいいのか相談をしてくるケースもあって、そりゃ学業終えたら就職という決まりはないわけですけど、キャリアの最初は就職をおススメしています。

やはりファーストキャリアが生涯年収に一番大きな影響を与えますし、何より組織運営を学ぶ場もなしに会社を作るのは無謀だと言わざるを得ません。

とか言いつつ、私はファーストキャリアの前、つまり在学中に事業を作っています。小学生の頃から読書と音楽が好きで気づけば本もレコードもお店と変わらないくらいの物量を抱えるまでになりました。レコードについては時代がCDへ置き換わるタイミングに手持ちのレコードをフリーマーケットで売りさばくことにしました。

音楽オタクだけにアーティストの情報も蓄積されており、例えばジャケットの由来とか日本の音楽シーンと違って、あるバンドのギターが数年後に違うバンドのギターになっているなんてことも珍しくありませんでしたから、そういった情報が商品の付加価値となって原価の数倍で売れたものも多かったです。

経営もですが、マーケティングを学んだのもこの時の経験が大きかったですね。とにかく、これが思いの外、当たりましてちょっとした財産になりました。そこで店舗を借りて定位置で商売をはじめたのです。それで当時、人気が高まりつつあったファミコンやプレステなどのゲームコンテンツの再販ビジネスに乗り出すことにしました。

この時、私は学生だったんですけど、学業との両立や事業の拡大するにつれて一人で運営することは難しくなってきたので、すぐに法人化しました。現在はこの事業は売却しておりますけども、この時に個人事業と法人化の是非についてめちゃくちゃ勉強しました。

大学は一橋大学の商学部経営学科やトランスポート先のニューヨーク州立大学プラッツバーグ校でしたが、私の商売論は学業で組み立てたものではなく、こうしたリアルのビジネスで毎日のようにトラブルに巻き込まれながら磨いていったものでした。思えば最初の頃なんてひどかったですね。商売をなめていたと思います。

多少良かったのは、親が街の小さな酒屋を経営していたので私は子供の頃からお手伝いをしていて商売の基本的なことを体感してきたことは大きなメリットというかアドバンテージでした。

そうやって身を削りながら事業を進捗させていくうちにわかったのは、法人と個人事業とでは資金調達の方法や設立の時の手続きに違いがあって、それぞれにベターなタイミングというものが存在しているということです。

また、業種によっては許認可事業などもあるのですが、それも法人と個人事業とでは手続きは違います。

事業をスタートさせれば外部にそれを公開にすることになりますが法人なら法人名、個人ならご自身のお名前ということになります。ちなみに法人を設立する時に、ご自宅を事務所にされる方も多いと思いますが、そうするとご自宅の住所を一般公開することになるので避けた方が賢明だと言えます。

これってどっちが良いんでしょうね?

私もよく相談を受けるのですが税金の節税から見た側面や資金調達から見た側面など、それぞれにメリット・デメリットがあるので容易に判断はできないのです。

ここからは、法人と個人事業との根本的な違いについてご説明させて頂きます。法人とは「法人登記」を行うことによって、法的には事業を行うあなたとは別の人格を作ることを指します。

だから、法人はあくまで出資者、つまりあなたが株式会社を設立したのだとしたら、株主のものとなります。もちろん、あなたが出資して法人を設立したのであれば株主かつ代表取締役社長という立場なわけです。

要は会社の社長なんてものはあくまでもその会社を代表するアイコンのような役割を担っているだけであり、その会社を実際に支配するのは出資者である株主ということになるのです。

他人からお金を集めた場合には当然、経営責任を問われることを念頭に置いて事業を運用していかなくてはなりません。

一方で個人事業とは、単純にあなた自身があなたの名前だけで事業を行うために難しい話ではないのですが、あなた自身によっぽどの信用がなければ資金も集まらないでしょうし、本セミナーでは基本的に株式会社を前提に話を進めていきます。

今回は両者の「責任の違い」について明確にしたいとおもいます。

誰しも成功を夢見て事業計画を立てます。そこには失敗するケースを書き込むことは無いでしょう。

しかし、実際には計画が甘かったり協力者が離れていったり、不測の事態によって撤退や倒産など事業運営が行き詰る可能性だってあるのです。

中小企業庁のデータによると、創業5年での企業の生存率はなんと約40%ということで、たかが5年で60%もの会社が倒産や廃業していることになっています。これが10年にもなればさらに厳しい数字となるわけで会社経営が博打に近いものがあるように感じるのも無理がないかもしれません。

倒産や廃業といった理由の中には、計画が甘かったり、そもそも事業として成立していなかった会社もありますし、経営者として最低限おさえておくべきことを知らなかったために、駄目だったケースも相当程度あるわけなんです。

特に「数字に弱い」だとか経営者としては言い訳でしかないですし、どんぶり勘定で経営判断のミスをした、資金調達すべきタイミングを失ったなど、財務に弱いことは残念な結果に陥ることも多いものです。これまで自分や支援も含めた経験上において、創業から売上数億円ぐらいまでの中小企業の社長は財務に疎い方が多かったです。

「脱サラ前はトップセールスマンだったよ」だとか、周囲に認められた職人さんが起業することはあったとしても、ずっと経理をやっていた方が起業をすることは稀であることから致し方のない側面があるのも事実です。

それに日本では学校教育において、財務を学ぶ機会なんて、ほとんどないわけで、社長になって初めて財務と向き合うことになると。立場が人を育てると常日頃から言ってはいますけど、社長が財務に苦手意識を持つのも当然といえば当然といった事情もあるわけです。

PEファンドやベンチャーキャピタルと長年に渡って中小企業の支援をしてきた私には一つの確信があります。それは、社長が営業や商品開発に力を入れるエネルギーの10%でいいので財務へ意識を振り向けてくれれば、経営は飛躍的に良くなる、ということです。だから、このセミナーを通じて中小企業における社長の財務リテラシーを上げていきたいのです。

そして事業の成功には一定の法則があって、それさえちゃんとやっていれば基本的に成功するのが事業だと。つまり事業に失敗する人は何度やっても失敗しますし、成功する人はどんな事業でも一定の成果を収めることができる。こうしたことを学んでいただけたら事業継承の問題も幾分か解消されるのではないかと思う今日この頃です。

また、事業成功の法則を知っているということで、再現性を持っているということになります。事業を何人でやるにせよ少なからず誰かステークホルダーがいるはずです。つまり大なり小なり責任を負っているわけです。

だからこそ、その責任の範囲についてここで明確にしておきたいと思います。

簡単にまとめるとこちらの表の通りですが忘れて欲しく無いのは、株式会社であっても結局は連帯保証人になるケースもあるので借金を返せなくなった時はあなた自身の責任となるということになります。

ここで法人が有利だというのは、損害賠償責任などの予期せぬリスクを負った時に出資者であるあなたは法的には「有限責任」であるといことなのです。

次に手続きの違いについて説明します。

設立時の違いについて表にまとめたのでご参照ください。

法人を設立するということはあなたとは別の人格である別の組織を作る事になるので、法的手続きに則って社会的にきちんと認められる必要があります。

だからこそ若干の費用はかかってしまうわけですが、その費用の内訳についてざっくり紹介します。

・定款印紙代4万円
・定款認証費用約5万円
・設立登記印紙代15万円

ここまでが法定費用となります。

そして、必要に応じて士業の方に依頼するならば、手数料10万円前後あたりが相場でしょうか。

税務署に関しては届け出だけなので法定費用(国などに支払うお金)は一切かかりません。

以上の届け出はあなた自身でもできますが、この辺りは経営者であるあなたの職域の範囲ではないので税理士などに依頼すると良いでしょう。

それではここからいよいよ本題の資金調達の違いについて説明します。

法人と個人とではどれくらい差が出るのか興味深いところです。

こうやって比較してみると、やはり法人の方が資金を集めやすいのが分かっていただけると思います。さらに法人であれば金融機関などから融資の他に、外部からの出資を募ることができます。

出資というのはザックリ言うと返さなくて良いお金なので、これを獲得できればより資金が潤沢になり事業運営がスムーズになります。

ただし、出資=株主となるので経営に対して意見を言う権利もありますし、出資比率によっては雇われ社長のようになってしまうので注意が必要です。要するに事業運営を好きなようにできなくなるってことです。

でもね、私がサラリーマンを辞めて法人を起業した時もそうだったんですけど、元ゴールドマンサックスの重役だった会社経営を数字で見るプロの人やサラリーマンをしていた会社から出資を受けての起業だったので、自分の会社なのに経営に関してかなりシビアに見ていくことになりました。けども、それはある意味良かったですね。

好きなようにはできないんですけど、法人化というか起業した瞬間には4名の社員を抱えていましたから好きなようにしていたらすぐに潰れていたかもしれませんね。

さて、資本金というのは基本的にあなたが最初に事業へ投資したお金です。そして、その資本金は会社の登記簿を通じて誰もがみる事ができます。

そうする事で金融機関の融資担当者などは、その資本金を使って、あなたがスタートさせる事業に対してどれだけ準備しているかということを知り、融資を実行するのです。

以上のような仕組みなので資本金という外部に見せるいわばスタートアップの時期であってもある程度の金銭的な信用力は得る事ができるのが法人だと言えます。

それではここからは、運営後の話になりますが税金の違いについて説明します。これって利益が少ないうちは個人事業が有利で、利益が多くなってくると圧倒的に法人が有利になるので起業前に検討しておきたいところです。

冒頭にも少しお話ししましたが、ひとつの目安として年間利益1000万円がラインですね。冒頭では1000万円の収益を踏んでいればスタッフ、あるいはアシスタントを雇っていないと仕事が回らないでしょうという観点からでした。

しかし、税金面からもメリットはあるわけです。

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