環境変動と農林生態系から考える「地球温暖化と食料生産」
鎌田です。今回の「自然産業を日本から世界へ」では環境変動と農林生態系をテーマに「地球温暖化と食料生産」について論じたいと思います。
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まずは「地球温暖化のメカニズムと現状」について明らかにしていきたいと思います。普段は大学の方で特別講義なども行っておりまして少し専門的な話にはなりますが、いつも学生にもわかるようにかみ砕いて講義しておりますので小難しい話が入ってきますけども、どうぞよろしくお願いいたします。
そもそも地球温暖化とはなんでしょうか? これは人間の活動によって排出された温室効果ガスによってその大気中の濃度が増加したことによって大気の温室効果が高まって地表面温度が上昇する現象のことです。
地球温暖化というのは一般に降水量の変化など、その他の気象要素の変化も伴うので、これらも含めた気候の変化を言い表す場合には「気候変化」という言葉が使われています。
また特定の期間のなかで、たとえば気温が上がったり下がったりするような気候の変動を言い表す場合には気候変動という言葉が使われたりします。
何にしても対象としている現象が単に気候の変化のことなのか、変動のことなのかを注目して言葉を使い分ける必要があるんですね。
そして温室効果ガスというのは短波放射を透過して長波放射を吸収・放出するという特徴をもつ気体なので、太陽からの短波放射を透過しながらも地表面からの長波放射を一部吸収するとともに地表面と宇宙に向けて温度に応じた長波放射を放出するんです。
この地表面への長波放射によって地表面の放射平衡(へいこう)温度は高い値をもつことになります。このような気体の作用が透明のガラス温室の性質と類似していることから、この作用を温室効果と呼称し、これらの特徴をもつ気体を温室効果ガスと呼称するようになりました。
こういった作用は地球という大きな空間での話で、施設栽培などの温室では温室内の空気が外気と遮断されることによる温度上昇効果のほうが大きいことになります。
大気の温室効果は実は地球における水とかあらゆる生命体の存在に欠かせません。なぜなら、温室効果ガスがないと仮定したら地表面の放射平衡(へいこう)温度を計算すると、これは約-18℃となります。
しかしながら、大気中に温室効果ガスが存在することによって地表面の放射平衡(へいこう)温度は15℃程度となって水や生命体が存在できるというわけなのです。
一方で大気中の温室効果ガスの濃度が増加して、長波放射の吸収・放出が増加することで地表面の放射平衡(へいこう)温度がさらに高い値をもつことになります。
これが近年問題となっている地球温暖化のメカニズムということなんです。
主な温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、などがあってここにハワイのマウナロアで観測された大気中のCO2濃度の変化(月平均値)を示します。
これによると、1985年には約345ppmだったCO2濃度が 2020年には約412ppmとなっていまして、15年間で67 ppm 増加しているのがわかると思います。
また 2014年に入ると月平均値として初めて400 ppmを超えており、右肩上がりの上昇を続けていることが見て取れます。
こちらのグラフにみられる小さな変動は1年周期をもっていまして、これは光合成活動によって陸地が多い北半球の夏にCO2の吸収量が大きくなるので冬に低下するという季節変動の影響です。
ここでは地表面気温の全球平均値の変化を示しています。これによって地表面気温の上昇も観測されていることがわかると思います。2013年に発行されたIPCCの第5次評価報告書では世界平均の地表面気温が1880~2012年の期間に0.85℃上昇したと報告されています。
要は左の図と右の図はCO2濃度と地表面気温が上昇してきていることを示していまして、この地表面気温の上昇が人間活動によるものである証拠を示すことは簡単じゃないんです。なぜなら気温は自然変動によっても大きく変化するからなんです。
たとえば今から約2万年前の最終氷期最盛期に比べて、間氷期にある産業化前の気温は3~8℃高いと推計されています。また、とくに北半球においては10世紀から13世紀までは比較的温暖で、15世紀から19世紀までは寒冷だったことがわかっており、それぞれ中世の温暖期、小氷期とよばれています。
氷期・間氷期のサイクルは地球の公転軌道の周期的変化、自転軸の歳差運動、自転軸の傾きの変化による日射量変化によって引き起こされると考えられておりまして、中世の温暖期および小氷期は太陽活動の強弱によって日射量が変動したことによって引き起こされたと考えられています。
このように気候の変化は人間活動以外の自然要因でも起こりますが20世紀後半からの急激な気温上昇が人為起源であると考えられているもっとも大きな根拠は気候モデルを用いたシミュレーションによって示されています。
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