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ピグマリオンは実は王様の名前、の話

ピグマリオン効果を知っている人は多いかも

教育に携わっている人なら特に、一度は聞いたことがあると思います。教育心理学の用語で、教育者(他者)からの期待によって対象者の成績が向上することを言います。ローゼンタールという学者が唱えた説なのでローゼンタール効果と呼ばれることもあります。

その後、ピグマリオン効果についてはそれを示した実験の妥当性について問題点が指摘されるようになり、疑問視されることも増えています。例えば、純粋な期待の効果と言えるのか、例えば教育者の側のいわゆる「贔屓目」のようなものも介入しているのではないかと見られるようになったためです。「あの子は期待できるぞ、だから特別扱いしてやろう」「あの子はお気に入りだから、丁寧に教えてやろう」、実際にもありそうですよね(笑)

また、そもそも「期待」というもの自体がとても曖昧なものとも言えます。期待をかける。なんとなくイメージはできますが、具体的にこういうものと定義するのは案外難しいかもしれません。

実験としての妥当性はさておき、現実の場面では教育者が期待をかけ、(意識的あるいは無意識的に特別扱いをし)、対象者がそれを感じ取り、その結果成績が向上するというところまで含めてピグマリオン効果だと考えることが多いと思います。期待そのものよりも期待によって教育者の関わり方が変わること、教育者と対象者の関係性がポイントではないかと思っています。

ゴーレム効果を知っていますか

よく知られているピグマリオン効果。では、その逆をなんと言うかご存知ですか?相手に期待をかけず、見込みがない「こいつはダメだ」と教育者が思うことで成績が下がること、これをゴーレム効果と言います。期待と成績に相関関係があるのであれば、その逆も当然起こるだろうと考えられたのです。

これも先ほどのピグマリオン効果と同様に、教育者が悪いイメージを持っていることそのものよりも、悪いイメージを持つことによって教育者の関わり方が変わることがポイントだと思います。教育者の側に「あいつは気に入らない。どうせ、教えたって上手くならないだろう」「見込みがない奴にいくら教えても無駄だ」、そんな思いがどこかにあれば、当然対象者もそれを感じ取るでしょうし、関係が悪化すれば結果として成績や成果が下がるというのも納得です。

問題になる「期待」の正体

ピグマリオン効果もゴーレム効果も、どちらも教育者と対象者のお互いのイメージや関係性がポイントとなりそうというお話をしてきました。しかし、こんなこともありませんか?「あいつは期待をかけられすぎてダメになった」「周囲の期待に押しつぶされた」。あれ?期待をしたら成績が上がるはずなのになぜ?

先ほども期待とは曖昧なものと書きましたが、対象者を伸ばすことができる期待と、押し潰してしまう期待があると考えたらどうでしょう。

対象者をサポートするような期待もあれば、対象者の思いや考えとは関係なく一方的に押し付けられてしまう期待というものも存在します。「自分は漫画家になりたかったのに、医者になれってずっと言われて」とかなんとか、よく小説などもにもありますよね。

要は、教育者と対象者が同じ目標に向かっている時、期待は効果的に働くということができます。先日の余談(先輩に世界の○○だと言われて・・・の段)もそうですが、あの時私がその試合を(あるいはその競技を)やりたくない、できればやめたいと思っていたとしたら、いくら先輩に声をかけられたとしても良い方向にはいかなかったと思います。

このピグマリオン効果もやる気スイッチを押す1つの方法ですし、逆にゴーレム効果はやる気なしスイッチをプチッと押してしまうことにも。関係性って面白くて難しい。そんな話をまた今後もしていきたいと思っています。

おまけですが最後にタイトルについて。
ピグマリオン効果の名称の由来は、とある王様が自分が彫刻した人形に恋をしたという神話なのですが、意外と(?)ピグマリオンというのは人形のことと思われていることがあります。ですが、この王様の名前がピグマリオンです。当時心理学専攻の学生のうちでも、ピグマリオン=マリオネットのようなイメージで捉えていた人は多かったような覚えがあります(操り人形。意のままに操れて効果が上がる的に)。


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