ある冬の日に


いつものように午前中の散歩に出た。

行きつけの喫茶店でコーヒーを飲みながらガラス越しに行き交う人の流れを見る。
その情景の動きを愉しみながら、同時に頭の中のスクリーンにいろいろな言葉を浮かべてその組み合わせをあれこれ試してみる。
気になる事にヒィットする言葉の組み合わせがうまく出来上がるとそれをメモに書きつける。
書きつけるとそれで安心して、また行き交う人の姿や様子の感覚の流れに意識を開放し身を任せる。
やがて、頭がリセットされ清々しい気分になっていることに気づく。
コーヒー成分の影響もあるかもしれない。

店を出て人通りの中を歩き始める。
いつになく空気も冷たい。風もある。思わず身を縮める。

ふと、妙な感慨が浮かんだ。

寒い! 確かに寒い!
でも、心のどこかで暖かくて充実したかたまりを感じている。

この暖かさは何だ?
私は何を思ったのだ? 
言葉を探す。

   ∞    ∞    ∞    

寒さを感じとる私の感覚は、正常に機能している!
そして、私にこの感覚を与えている「何か」があると感じる。
そう私を包んでいる自然。空気であり風。
私を超えている存在。

私は一人じゃない!
私は孤独じゃない!
私や他の人を平等に包む自然、存在がある。
感覚を通して話しかけてくる自分以外の存在がある。
私は他の人や鳥や虫や動物たちと平等にその存在に包まれている。
あなたがいる。

    ∞    ∞    ∞    

陽がさしている。
かがめていたカラダが伸びをした。
胸を張って、冷たくて清冽な大気を吸い込む自分がいた。
この「寒さ」を愛おしく思いながら。

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