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和田誠『Black & White in Wadaland 和田誠モノクローム作品集』愛育社 2010.8  和田誠『Coloring in Wadaland 和田誠カラー作品集』愛育社 2011.5  和田誠『定本 和田誠 時間旅行』玄光社 2018.9

和田誠(1936.4.10-2019.10.7)
『Black & White in Wadaland 和田誠モノクローム作品集』
愛育社 2010年8月刊
2016年7月21日読了
http://www.amazon.co.jp/dp/4750003840

A4判、768ページ、分厚い、ずっしり重たい、
「おそらく和田さん[の]…もっとも掲載点数が多い」p.767 画集。

今年の春(2016年4月)に読んだ

『Coloring in Wadaland 和田誠カラー作品集』愛育社 2011.5
https://www.amazon.co.jp/dp/4750003956

の前年に刊行されていた本書をようやく手にすることができて、
「映画」p.448-545、
「丸谷才一コーナー」p.638-699
他をたっぷり楽しみました。

誰を描いているのか私には分からないたくさんの似顔絵が残念です。

「丸谷才一さんとの仕事の上での出会いは1970年、『女性対男性』文藝春秋 で装丁と挿絵を担当した時で、翌年が『大きなお世話』朝日新聞社。次が『夕刊フジ』の連載エッセイ「男のポケット」の挿絵になる。丸谷さんのご指名だった。前の二冊で合格点をいただいたのだろう。

『夕刊フジ』の連載は百回にわたって毎日続く企画。ぼくは新聞連載小説の挿絵を描いたことがない。百回もデイリーで描いたのは「男のポケット」と、やはり『夕刊フジ』の丸谷さんの連載「軽いつづら」1992-93 だけである。

「男のポケット」の頃から丸谷さんの著作の装丁や連載エッセイの挿絵など、ほとんど全部ご指名を受けるようになった。『楽しみと冒険』など、丸谷さん企画のシリーズものの装丁も。

1992年から2010年まで、丸谷さんは毎日新聞書評欄の顧問をされていた。丸谷さんの提案で、紙面が一新された初回から、フロントページの「私が選んだ文庫ベスト3」(のちに「この人・この三冊」)の挿絵を担当。顧問は池澤夏樹さんに引き継がれたが、ぼくの挿絵は続いている。」p.638


和田誠(1936.4.10-2019.10.7)
『Coloring in Wadaland 和田誠カラー作品集』
愛育社 2011年5月刊
2016年4月18日読了
http://www.amazon.co.jp/dp/4750003956

B5判 479ページ ずっしりと重たい画集。

収録作品およそ1000点をたっぷり楽しみました。
作品数が多いので一つひとつが小さいのが多くて残念だなぁ、
というのは無い物ねだりです。

147ページ左上の「長いお別れ」は、
いつ何に発表されたのか記載されていないのが、これも残念だなぁ。
150ページ全体の「深夜プラス1」も!

二つとも拳銃、
「7.65のモーゼル」
(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』清水俊二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976年4月初版 2007年3月68刷 p.40)

「1932年型のモーゼル」
(ギャビン・ライアル『深夜プラス1』菊池光訳 ハヤカワ・ミステリ文庫  1976年4月刊 p.27)
が描かれています。

147ページには私が一番好きだったバーボン(うつ病で退職して以降、可処分所得が無くなってからは飲んでませんけど)も描かれています。

「彼[テリー・レノックス]が台所へはいって来た。入口にちょっともたれてから、窓ぎわの小食堂のテーブルの方へよろめいて行って、くずれるように腰をおろした。まだからだをふるわせていた。

私はオールド・グランド・ダッドのびんを棚からとって、大きなグラスに注いだ。大きなグラスが必要であることがわかっていたのだ。

それでも、彼はクラスを口へ持ってゆくのに両手をつかわなければならなかった。一息に飲みほすと、音を立ててグラスをおき、からだをうしろにもたれさせた。」
『長いお別れ』p.39
http://www.amazon.co.jp/dp/4150704511

「「あのデカイやつ? レバーを切り換えると全自動になる、あれか?」
「そうだよ」
俗に <箒の柄> (ブルーム・ハンドル)といわれたあの旧式のモーゼル銃、特に全自動切り換え装置をつけた1932年型にまずい点は多々ある。

目方は三ポンドもあって全長一フィートもある。握りの部分が不安定で、全自動で発車すると怒った猫のように手の中で跳ね回る。

しかし、長所もあるのだ。認める、認めないは当人の勝手である。」
『深夜プラス1』p.27
http://www.amazon.co.jp/dp/4150710511

ハヤカワ・ミステリ文庫初版 1976.4

私は銃器には関心がありませんけど、
興味のある方は、以下をどうぞ。
銃器マニア Vol.4『深夜プラス1』①②https://www.facebook.com/notes/840166316814924/
https://www.facebook.com/notes/1323045564708516/


和田誠(1936.4.10-2019.10.7)
『定本 和田誠 時間旅行』
玄光社 2018年9月刊 287ページ
2018年10月17日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4768311040

「2000年に刊行された和田誠氏の作品集『時間旅行』は、
1997年開催の「和田誠時間旅行」(ガーディアン・ガーデン、クリエイションギャラリーG8)という展覧会を本として編集し直したものです。

和田氏の幅広い(ビジュアルの)仕事を幼少期の作品も含めて総覧できるものとして、重要な一冊となりました。しかし刊行から18年を過ぎ、その間に『ブックカバー集』『シネマ画集』『レコードカバー集』など、ジャンルに特化した作品集は出ているものの、その後の代表作を総覧できるものはありません。

本企画は、『時間旅行』をベースに、誌面の都合で割愛されていたジャンルを加え、さらにその後の20年弱の代表的な仕事を盛り込んだ増補改訂版です。

幼少時から現在までの仕事をまとめ、4歳から82歳までの和田誠が見られる「定本」として、他に類を見ないオールタイムベストとも言える作品集となります。

【本書の特徴】
・4歳から82歳までの代表作を含む仕事(作品)がまとまっている
・ジャンルごとに幅広い仕事を総覧できる
・新しい作品が豊富。特に『週刊文春』2000枚までの過程をダイジェストで見られる
・オリジナル版では割愛されていたジャンル(装丁、マーク、絵地図など)を追加
・2000年以降の対談やコメントも加える
・グワッシュ、アクリル絵具、色指定の3つの制作過程をダイジェストで解説
・アニメーションや絵コンテを掲載
・阿川佐和子さんとの対談を追加
・200冊を越える著書を表紙画像付きでリスト化

和田誠(わだまこと)
イラストレーター、グラフィックデザイナー、映画監督、エッセイスト。1936年生まれ。多摩美術大学在学中に日宣美特選。ライトパブリシティ勤務後、フリー。1977年から『週刊文春』表紙絵を担当、昨年2000回を数えた。」

初版 『時間旅行』メディアファクトリー 2000年1月刊
https://www.amazon.co.jp/dp/4889918329

「1997年に、「和田誠時間旅行」という展覧会を開きました。会場は東京・銀座にある二つのギャラリー、ガーディアン・ガーデンとクリエイションギャラリーG8。どちらも株式会社リクルートがオーナーで、この二つの会場は、時々「タイムトンネルシリーズ」という展覧会を開いています。

著者の「時間旅行」もその一つでした。このシリーズは一人の作家に焦点を当て、年少の時代から現在にいたる作品群を展示するものです。展覧会ではすべての作品を時を追って展示しましたが、本にするにあたってはジャンル分けをし、それぞれの項目で時間旅行をする、という構成にしてあります。」

1997年開催の展覧会「和田誠時間旅行」(年少の時代からの作品群を時系列に展示)をもとにした『時間旅行』メディアファクトリー 2000.1 183ページ の増補改訂版。

展覧会とは違う、絵物語・スケッチ・エディトリアル・装丁・漫画・似顔絵・版画・立体作品・ポスター・広告・ジャケットにジャンル分けし、それぞれの項目で時間旅行という構成。

展覧会時のインタビュー p.240-266 の脚注写真(都立千歳高校、多摩美大、ライト・パブリシティ他)が見たことのないものばかりでした。

200冊目の著書
『Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集』アルテスパブリッシング 2014.11
http://www.amazon.co.jp/dp/4865591133
刊行時の阿川佐和子との対談「さらなるその後の出来事」p.267-272 も読み応えがありました。

「阿川 丸谷才一さんの装丁の時はまたぜんぜん違う考え方ですか?
和田 いや、丸谷さんだから特別に変えようっていうことはないけれども、丸谷さんの装丁をしててぼくがうれしかったのは、一冊ごとに必ずお手紙をいただくんです。
阿川 すみません。シュン。
和田 阿川さんが手紙をくれないとか、そんなこと言ってないから(笑)。
阿川 そう聞えた。
和田 丸谷さんと直接しゃべるのはそんなになかったからね。
阿川 それじゃあ、感想がいつもお手紙で届く訳ですか?
和田 それが名文でね。短いんだけど。はがき一枚の時もあるし、封書の時もあって、封書でも開けてみると丸谷さんって字がでっかい。すごいでっかい…。それで、要点が一行か二行でパっと書いてある。こういうところが気に入ったとか、こういうところは君の新機軸だねとか。気づかずにやってたんだけど、なるほどたしかに新機軸だと気づかされることがしばしばありました。」p.272

丸谷才一からの葉書については、
東海林さだお「人生最高の幸せな一日」
『猫大好き』文藝春秋  2014.7 装幀和田誠
でも、写真入りで語られていました。https://www.amazon.co.jp/dp/4163900985

読書メーター 和田誠の本棚(登録冊数116冊 刊行年順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091203

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