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北村薫(1949.12.28-)『詩歌の待ち伏せ(ちくま文庫)』筑摩書房 2020年7月刊 592ページ


北村薫(1949.12.28-)
『詩歌の待ち伏せ(ちくま文庫)』
佐藤夕子解説
筑摩書房 2020年7月刊 592ページ
2021年3月21日拾い読み
https://www.amazon.co.jp/dp/4480436804

「“本の達人"による日本語への愛と折々に出会った詩歌との出会いが生んだ名エッセイ。これまでに刊行されていた3冊を合本した決定版。解説 佐藤夕子」

「本の達人・北村薫が古今東西、有名無名を問わず、日々の生活の中で出会った詩歌について語るエッセイ集。作品、作家への愛着や思いがけない出会いが、鋭敏な感性や深い想像力とともに丁寧に穏やかに語られるとき “詩歌” の世界の奥深さと溢れる愛情を感じずにはいられない。これまで分冊で刊行されてきたものを1冊に合本し、“決定版”としてよみがえる。

北村薫 1949年、埼玉県生まれ。作家・アンソロジスト。早稲田大学ではミステリ・クラブに所属。高校の国語教師のかたわら、1989年『空飛ぶ馬』でデビュー。1991年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、2006年『ニッポン硬貨の謎』で本格ミステリ大賞(評論・研究部門)、2009年『鷺と雪』で直木賞、2016年日本ミステリー文学大賞を受賞。著作多数。読書家、本格推理ファンとして、評論、エッセイ、アンソロジーにも腕をふるう」

「十八、「別れの唄」
アロオクール/西條八十訳」
p.152-160

「三十五、「To say good-bye is to die a little」
アロオクール/チャンドラー」
p.316-324

「三十九、「Everytime we say goodbye」
コール・ポーター/村尾睦男訳」
p.351-357
だけ読みました。

「ハードボイルド・ファンでも、
チャンドラー・ファンでもありませんが、
ミステリ・ファンです」
p.156
とあるので、

和田誠
「ギムレットには早すぎる」
『レイモンド・チャンドラー読本 チャンドラー生誕100年記念』
早川書房 1988.9
http://www.amazon.co.jp/dp/4152033665

村上春樹・和田誠
『村上ソングズ』
中央公論新社 
 2007.12
https://www.amazon.co.jp/dp/4120038963
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/538993602841950
を、読まれていなかったのでしょう。

「「フランス人はどんなことにもうまい言葉を持っていて、その言葉はいつも正しかった。さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」
これは『長いお別れ』におけるマーロウの独白であるが、ぼくはチャンドラーを読む前からアメリカのポピュラー・ソングのファンだったので、この言葉に聞き覚えがあった。すなわち、コール・ポーター作詞作曲「エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ」で、「さよならをいう時いつも、私は少し死ぬ」という歌詞で始まる。ポーターがこの歌を発表したのは1944年。『長いお別れ』は1953年。「エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ」はアメリカで大いに有名だったから、チャンドラーが知らない筈はない。しかしチャンドラーはポーターの名を出さずにフランス人と書いている。何故だろうと思っていたらある人が教えてくれた。イタリアのトスティの歌曲に「別れの歌」というのがあり、フランス語の歌詞がついていて、最初の一行が「発つこと、それは少し死ぬことだ」というのだそうである。これが共通の出典であろうか。」
和田誠『シネマッド・カクテルパーティ』講談社 1991.11
p.252「ギムレットには早すぎる」
https://note.com/fe1955/n/nc4dbaafc05b1

五年前に読んだ本。村上春樹・和田誠 『村上ソングズ』 http://bit.ly/vj1fRl #bookmeter  中央公論新社 2007年12月刊。2008年1月14日読了。...

Posted by Tetsujiro Yamamoto on Tuesday, November 12, 2013

"Partir, c'est mourir un peu"
Rondel de l'adieu, de Edmond Haraucourt (1856-1941)
https://www.youtube.com/watch?v=nxgumRaMiX4
https://www.mon-poeme.fr/poeme-partir-cest-mourir-un-peu/
https://en.wikipedia.org/wiki/Edmond_Haraucourt

The Long Good-bye (1953)
"The French have a phrase for it. The bastards have a phrase for everything and they are always right. To say good bye is to die a little."

清水俊二訳『長いお別れ』
「こんなとき、フランス語にはいい言葉がある。フランス人はどんなことにもうまい言葉を持っていて、その言葉はいつも正しかった。/さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」

村上春樹訳『ロング・グッドバイ』
「フランス人はこのような場にふさわしいひとことを持っている。フランス人というのはいかなるときも場にふさわしいひとことを持っており、どれもがうまくつぼにはまる。/さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」

『長いお別れ』の二年前に発表された、
アガサ・クリスティ
『バクダッドの秘密』
They Came to Baghdad (1951)
https://www.amazon.co.jp/dp/4151300880
では、英国人美青年が
「イギリス人らしい発音[中村妙子訳]」p.322 で、
"Partir, say mourir un peu"
と[間違えて]引用します。


この「決定版」と称する文庫本には、巻末に
「本書は文藝春秋より刊行された
『詩歌の待ち伏せ1』文春文庫 2006年2月、
『同2』同年3月、
『同3』2009年12月
の三冊を合本し、加筆訂正を加え文庫化した」
とあるだけで、初出が記載されていません。
1949年12月28日生まれな北村薫さんの意図なのでしょうか。

著者が何歳の頃に、
どのような雑誌に掲載された文章なのか
を知りたいと思う
1955年1月生まれな読者(私)がググってみると、

『詩歌の待ち伏せ 上』文藝春秋 2002.6
『オール讀物』2000年2月号~2001年8月号

『詩歌の待ち伏せ 下』文藝春秋 2003.10
『オール讀物』2001年9月号~2003年1月号

『詩歌の待ち伏せ 続』文藝春秋 2005.4
『オール讀物』『月刊しにか』掲載

で、
『村上ソングズ』以前の連載だったことが判明しました。

「後記 今回の刊行にあたり、いくつかの付記を加えた。」
p.570

初出を読者に明示するのは、
編集者や解説者がすべき仕事だと思うなぁ。

読書メーター
北村薫の本棚(登録冊数12冊 発表年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11607836

ミステリの本棚(登録冊数359冊 著者名五十音順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091193

https://note.com/fe1955/n/ndf1a5b068a45
北村薫(1949.12.28-)
『中野のお父さん』
文藝春秋 2015年9月刊 288ページ


https://note.com/fe1955/n/n3a04834f8be5
北村薫(1949.12.28-)
『中野のお父さんは謎を解くか』
文藝春秋 2019年3月刊 336ページ


https://note.com/fe1955/n/n453b6ff0e41b
北村薫(1949.12.28-)
『雪月花 謎解き私小説』
新潮社 2020年8月刊 224ページ


https://note.com/fe1955/n/n4539d8b0fcaf
北村薫(1949.12.28-)
『中野のお父さんの快刀乱麻』
文藝春秋 2021年11月刊 320ページ


https://note.com/fe1955/n/na463e282640e
北村薫(1949.12.28-)
「中野のお父さん 煙草入れと万葉集」
『オール讀物』2023年3・4月合併号

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