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池波正太郎 (1923.1.25-1990.5.3)『雲霧仁左衛門 忍びの女(完本 池波正太郎大成 17)』講談社 2000年2月刊 954ページ  丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)「戦国時代の心理学」『人形のBWH』文藝春秋 2009.11

池波正太郎 (1923.1.25-1990.5.3)
『雲霧仁左衛門 忍びの女
(完本 池波正太郎大成 17)』
講談社 2000年2月刊
 954ページ
2010年1月25日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4062682176

「妖艶、凄絶、盗賊雲霧一味。
戦国大名につき添う女忍び。
円熟期の代表的傑作!
昭和49年から50年刊行の2大長編を収録。」


『雲霧仁左衛門』
『週刊新潮』
1972年8月26日号~1974年4月4日号連載

『忍びの女』
『週刊現代』
1973年1月3日号~1974年12月26日号連載

を収録した二段組み950ページの重たく分厚い本です。

池波正太郎の映画や食べ物についてのエッセイは
色々読みましたが、小説を読むのは初めてでした。
物語の筋立て、語り口が上手で
すらすらと読めて楽しませてくれます。
池波正太郎のファンが多いのに納得しました。

「盃事は簡略であったが、披露の宴はさかんなもので、
城下の料理茶屋から料理人が四人も出張して来て、
包丁をふるった。
献立は、つぎのごとくである。
 一、鱠(なます)
 一、雉子(きじ)の焼鳥と銀杏(いちょう)大根の吸物
 一、塩引の鮭
 一、塩鮑(あわび)に貝の盛合せ
 一、酒浸(さかびて)の塩鯛
 一、味噌吸物に、山の芋と椎茸の煮物
 一、鯉の刺身(生姜酢)
 一、海老の船盛」
p.180「冷雨」

時代設定は八代将軍・徳川吉宗の治世と書かれています。
当時の豪商による宴会の料理はどんな味だったんだろうなあ~。

「お松は、屋根裏の部屋へ泊まった吉五郎へ、
気のきいた朝飯の膳を運んできた。
焼茄子の皮をむいたのを、まるごと入れた熱い味噌汁に、
山独活(やまうど)の味噌漬。それに、半熟卵をつけてきた。
「これはうまい」
吉五郎が舌つづみをうち、
「茄子を焼いて入れた味噌汁ははじめてだよ、婆さん。
よい香りがするものだね。」
p.40「無断借用」

https://ja.wikipedia.org/wiki/雲霧仁左衛門


丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『人形のBWH』
文藝春秋 2009.11
https://www.amazon.co.jp/dp/4163719601

が絶賛していた
『雲霧仁左衛門』は500ページ以上あり、
怪盗一味と火付盗賊改方の応酬を描いた
読み応え十分な長篇時代小説でした。

「先日、本屋を覘いてゐたら、
池波正太郎『真田太平記』が並んでゐて、十二冊を買つてきた。
この『真田太平記』はあまり騒がれないけれど、なかなかいいですよ。
池波正太郎と聞くと、みんなが『鬼平犯科帳』や『剣客商売』
ばかりおもしろがる。あれは納得がゆかないなあ。
彼の最高傑作は『雲霧仁左衛門』ですが、あれは別格で、
長いものではこの『真田太平記』がよく出来てゐます。
わたしには、読切り形式のものより、
かういふ大長篇のほうが、
「ぴつたりくる……」
のである。
と書き方まで池波ふうになつてきた。」
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
「戦国時代の心理学」
『オール讀物』2007年10月号
『人形のBWH』
文藝春秋
 2009.11 p.54
https://www.amazon.co.jp/dp/4163719601

https://ja.wikipedia.org/wiki/雲霧仁左衛門


『忍びの女』
の主人公は
近江の国甲賀の女忍び小(こ)たま。
時代設定は
関ヶ原の戦いの前後から
大坂夏の陣以降までです。

二段組み400ページ以上の長篇ですが、
『雲霧仁左衛門』同様、
読み始めたら止まりません。
次は『真田太平記』を読もうかなぁ。

「「それは、何でござる?」
「粟雑炊じゃ。銀杏(ぎんなん)が入っています」
「銀杏、それは、いまの小たまどのの毒じゃ」
「まあ、ひどいことを」
小たまは、わずかに顔を赤らめた。
銀杏は公孫樹(いちょう)の実である。
薬用としても食用としても、忍びたちは、これをよく用いる。
いま、小たまが雑炊の中へ入れて食べた銀杏は、
去年の秋に採取し、しばらくは土中に埋めておき、
悪臭の強い肉漿(にくしょう)と外皮を
自然に剥落(はくらく)させ、堅硬無臭の白い実を洗いあげ、
乾燥貯蔵しておいたものだ。
甲賀の屋敷内では、こうした食料や種々の薬も、
忍びたちの女房の手によってつくられている。
銀杏は、栄養素を豊富にそなえており、
若者が、これをたくさんに食べると鼻血がながれる、
などといわれているほどだ。」
p.760「忍び宿・忍び小屋」

ググってみると、銀杏は今でも
漢方薬精力剤等に使われているようです。
効用のほどは私は知りません。
私はあまり好きではありませんけど、
家族二人は銀杏が好きで、
以前は、火鉢で焼いて食べていましたが、
最近は電子レンジのようです。

https://www.nichireifoods.co.jp/media/10699/

http://swdworld.starfree.jp/syotaro/ike-nen1.htm
池波正太郎年譜 その壱 1923-1955

http://swdworld.starfree.jp/syotaro/ike-nen2.htm
池波正太郎年譜 その弐 1956-1975

http://swdworld.starfree.jp/syotaro/ike-nen3.htm
池波正太郎年譜 その参 1976-1998


読書メーター
池波正太郎の本棚(登録冊数28冊) https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091233

https://note.com/fe1955/n/n58b2b7088b0f
北村薫(1949.12.28-)
「中野のお父さん
[池波正太郎]「白浪看板」と語り」
『オール讀物』2023年1月号
六代目三遊亭圓生
「白浪看板」

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