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丸谷才一『日本詩人選 10 後鳥羽院』筑摩書房 1973年6月刊


丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『日本詩人選 10 後鳥羽院』筑摩書房 1973年6月刊
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9707S

1974年読売文学賞受賞。

目次
歌人として後鳥羽院
へにける年
宮廷文化と政治と文学  初出『文藝』1972年4月号

五味文彦『後鳥羽上皇 新古今集はなにを語るか(角川選書)』角川学芸出版 2012年5月刊 2012年7月6日読了
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/540626096012034
「作家の丸谷才一氏は、『日本詩人選』の一冊(筑摩書房 1973年)として評論『後鳥羽院』を著したが、これは淡白さを超え、人物の評伝のあり方や、天皇が詩人であることの意味、さらに文化と政治とのかかわりなどについて、きわめて刺激的な内容であった。
たとえば「その点で承久の乱は、おそらく世界史におけるただ一つの文化史的な反乱ではなかったろうか」といった決めの言葉は鋭く本質をついている。」p.8「はじめに」

吉野朋美『後鳥羽院とその時代』笠間書院 2016年1月刊
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/pfbid021v7eA6mK1JRXRbTem2GPLSU52zMcprmrQaWxD5kUwrdh2rLuGYhujjoqN33igP5yl
「学部時代に奥田勲先生の講義の面白さから『新古今和歌集』の世界に興味を持ち、丸谷才一の『後鳥羽院』を読んだことが、大学院以後に後鳥羽院を中心に据えて、その時代を見わたしてみたいと思うきっかけだった。」
p.485 あとがき
奥付ページの略歴によれば、吉野朋美さんは「1970年東京生まれ。聖心女子大学文学部卒業。」

私が聖心女子大学図書館に勤務していたのは、1978年4月~1987年3月でしたから、吉野朋美さんとは入れ違いだったようです。
私は丸谷才一『後鳥羽院』を聖心の蔵書で読みましたが、吉野朋美さんも図書館の同じ本を手にしていた可能性があるんだなぁ。

丸谷才一『日本詩人選 10 後鳥羽院』筑摩書房 1973.6
を読んだのは聖心女子大学図書館に勤め始めて二年目の1979年でした。

その前年、明治大学文学部を卒業する頃に、
丸谷才一『梨のつぶて』晶文社 1966.10
https://note.com/fe1955/n/n49dc2860af81
を読んでいたので、本書も読んでみようと思ったのでしょう。

それまでは日本の古典には全然興味がなかったのに、突然、新古今和歌集の冒頭、春の巻上の最初を暗誦してみたりしていました。

寒い季節に、入学試験の監督補助に動員されて、入試会場の受験生の座席の間を歩き回りながら、新古今の冒頭を暗誦していたことを、四十年以上たった今でも、思い出すことが出来ます。

この本は聖心女子大学図書館蔵書を借りて読んだので、手元にないのが残念だなぁ。
アマゾンで中古品が199円(と送料257円)で買えますけど。
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9707S


丸谷才一『思考のレッスン』文春文庫 2002.10
https://www.amazon.co.jp/dp/4167138166
単行本 文藝春秋 1999年9月刊 未見

「僕は、前々から後鳥羽院の和歌が好きでした。ただ、それについて本を書こうなんて思ったことはなかった。そうしたら筑摩の「日本詩人選」で、後鳥羽院論を書けという話がきましてね。「山本健吉先生のご推薦です」ということだった。

そのとき僕は、ちょうど『たった一人の反乱』という長篇小説を書きかけていたところで、「こんなことしてたら小説が遅れるなあ」と思いながら、でも書きたくて仕方がなくて、引き受けちゃった。

そこで小説を書く合間に、後鳥羽院の和歌と『新古今』を詳しく読んでみた。ただ読むんじゃなくて、藤原定家の和歌と頭の中で比較しながら読んでいった。そうすると、二人の歌の傾向が微妙に違うことに気がついた。その微妙な違いを考えているうちに、天皇の和歌と職業歌人の和歌の性格の違いということに思い当たった。

つまり宮廷誌と純粋詩の違いです。後鳥羽院の宮廷詩のもととしては、社交としての詩があり、さらにそのもとの所には呪術の詩がある。それが、歌の本来のあり方ではないか。職業歌人ではない天皇の歌のほうが、歌の本筋なんじゃないか、という考え方になっていったんです。」
p.206「考えるコツ」

ほのぼのと春こそ空に来にけらし天(あま)の香具山霞たなびく
 太上天皇[後鳥羽院]
 春のはじめの歌
 新古今和歌集 巻第一 春歌上 2

丸谷才一『後鳥羽院 第二版』筑摩書房 2004.9
「この歌のめでたい感じは春の朝以外のものではあり得ないし、それは読み下しただけでまつすぐに伝はつて来るものである。… これは、例の「春はあけぼの」を典拠にしての歌だつたと見ることもできよう。さう考へるならば、本歌が『万葉集』巻十の「久方の天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも」であるといふ指摘も、単なる本歌さがしではない、もつとこみいつた意味あひを帯びてくる。

『万葉』の夕の歌は『枕草子』の冒頭の作用を受けて、いちおう時刻を消された、しかし明け方の霞となる。文学史のページごとのかういふ移り変りには、さながら暦をめくるやうな趣がある。」
p.26「歌人として後鳥羽院」

読書メーター 後鳥羽院の本棚(登録冊数16冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091275


丸谷才一の本棚(登録冊数173冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091201

エクセルファイル "発表年月日順・丸谷才一作品目録.xls" 現在2990行
目次・初出・書評対象書を、単行本80数冊分他、
発表年月日順に並べ変えて編成中。

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